アクアリウス 2
サクラはかに座の鍵を胸に差して、ハサミを武器にした。いつものように二刀流んなるように、ハサミの左右をばらした。そのハサミで触手を切り刻む。サクラに向かってくるものもフローの方に向かっていくものも、彼女が切り刻んだ。切り刻まれた触手はそのまま地面に落ちて、地面に紫色の液体が広がった。オブはその液体を躱しつつ、サクラの動きに合わせるように手を動かす。さらに、彼女は超能力を使うためには対象を視界の中に収める必要があった。つまり、彼女は紫の液体が広がっているところを、見ずに回避しなくてはいけない。彼女の足元には多少ではあるが、紫の液体がかかってしまっている。彼女の足元辺りの衣服は既にボロボロだった。彼女にも痛みはあるはずだが、彼女はそれを顔には出していない。ただただ、サクラの動きに合わせて腕を動かしていた。
サクラが触手をバラバラにしたおかげで、フローはかなり動きやすくなっていた。持っていた武器を再構築して、鉄球にする。しかし、その大きさは今までの二倍ほど。片手で操るのが精いっぱいであるため、二つあった武器は今は一つだ。サクラの後ろで鉄球をイメージ通りに動かしていく。彼女が腕や体を動かさなくても、鉄球が相手の頭上で蛇のようにうねって移動していた。そして、その頭の鉄球が紫の球体に落ちていく。アクアリウスはそれをわかっているのか、紫の球体から、青白い液体が放出されていた。それは鉄球に当たると硬化して、鉄球を抑えようと、徐々に鉄球を包みこもうとしていた。その液体の移動を超えるように、鉄球が徐々に大きくなる。質量が増え、鉄球の重みが増す。硬化したはずの液体が、バキバキと音を立てて破片を地面に落としていく。地面に広がっている紫色の液体の中に落ちて、いくつもの波紋を立てた。それでも、その鉄球に負けるのを嫌うかのように、硬化した青白い液体の厚みが増していく。質量対質量。どちらも制限が見えない以上、決着はつかない。しかし、大きくなりすぎた鉄球はフローには操れなくなっていた。正確には大きくなりすぎてイメージ通りに動くまでにかなりの時間がかかるのだ。さらに、その大きさの鉄球がアクアリウスに当たれば、確実に液体を飛び散らせて、瓢箪を見ることが出来るだろうが、鉄球が地面におちれば、地上はただでは済まないだろう。実際に落ちたとしても、メイトの超能力が保護しているため、超能力を解除すれば元に戻るのだが、そんなことは知らないため、フローは鉄球を分解して、手元に剣として再構築しようとした。しかし、剣を作ろうとしていたはずだが、その剣は歪な形をしていた。持ち手は剣だが、剣身が鞭のようにしなっているのだ。
フロー自身もそんな武器を作ろうとしたわけではない。あの大きさの鉄球を再構築したのは初めてだった。ミラクルガールに変身しているときでも、超能力には限界があり、その限界を超えると、思い通りに武器の再構築が出来なくなるということだと彼女は予想した。しなった剣を振るうと、鞭のようにヒュンと風を切る音が聞こえた。一応武器としては使用できるようだ。ひょろひょろの剣身も一応鉄球の時のように思い通りに動かすことが出来る。彼女の手の動きと連動させる必要はないということだ。しかし、リーチが鉄球より短い。彼女は再び再構築を行い、鉄球を作り出そうとしたのだが、剣は形を変えることを拒否するかのように超能力が弾かれるような感触が手に伝わる。一応、二つに分裂させようとすると、それは拒否されることはなく、左右に同じ武器を持つことができた。彼女はその二振りの同じ剣を持ちながら、アクアリウスに向かって飛んでいった。サクラの隣を抜けて、未だに向かってきていた触手にその剣身を当てると、破裂音と共に、紫の液体が散らばった。細かく破裂させたせいか、液体が地面に落ちているという様子はなかった。フローはそのまま突き進み、次々と触手を破裂させていく。フローが前に出たせいで、サクラを狙っていた全ての触手がフローを狙う。サクラを狙っていた触手は既にフローの後ろにあり、その触手もフローを狙っているのだから、彼女は触手に囲まれいるという状況になる。それでもフローには焦りは見えず、彼女は二振りのひょろひょろの剣身を思い通りに動かす。その剣身は彼女を守るように彼女に迫る触手を次々と割っていった。フローには少しのダメージもない。フローが触手を引き付けている間に、サクラはアクアリウスの真下に移動していた。彼女は土の魔気を使って、アクアリウスの周りに大きな岩の塊を五つほど出現させて、相手を中心に集まるように岩を動かした。空気を揺るがすような低い音と共に岩が移動する。アクアリウスは動くことはなく、岩にぶつかり、紫の液体が地面へと滝のように落ちていった。




