美しさのための闘争心 7
「水よ」
アクアリウスが何かを唱えようとしたのだが、それをフローが剣の頭を使って相手の腹に突き出した。それは見事、相手の腹にぶつかり、詠唱は中断することに成功した。そのまま、フローは相手の顔面に拳を叩き込む。彼女は剣を使っているが、相手を殺すつもりはない。悪いことをした奴は殺されても仕方ないと思っていたのだが、サクラとの戦闘と、一緒に過ごした時間を経て、彼女は意思疎通が出来そうな相手であれば、すぐに殺す必要はないかもしれないと考えていた。アクアリウスが彼女の言葉を理解するかは怪しいものだが、とにかく殺すことは控えるようにしているのだ。サクラの友達、仲間である条件だとフローは勝手に考えているのだ。サクラは可愛くて純粋な人だから、人殺しなんて物を見せたくないというのが一番の理由なのだが。
「くそ。いきなり出てきて、邪魔すんな!」
相手は瓢箪から出ている紐を掴んで、振り回し始めた。瓢箪の口から、見るから毒だとわかるような紫色の液体がまき散らされていた。その液体はアクアリウスには効果はないのか、彼女はその液体がかかっても気にしていないようだった。フローは警戒して、相手と距離を離してしまった。その間に、相手は再び詠唱を開始した。
「水よ。バブルボムっ」
相手の唱えた瞬間、水の膜で作られた風船がいくつも出現した。サクラが見ていれば、シャボン玉だと思っただろう。しかし、その魔法をフローは知らない。わかるのは当たってはいけないということだけだ。彼女は空に上がり、その風船を余裕で回避する。
「水よ。アクアバレット」
シャボンを回避している間に、いくつもの拳サイズの水の球が彼女にむかって飛んでいく。シャボンの間をすり抜けるように球が飛んでくるため回避しにくいのだが、彼女はそれでも回避することができた。それから、相手が次の魔法を使うだろうと予想して、彼女も魔法を使用した。
「風よ。輪を広げ、魔を祓え。ウィンドフロウッ」
彼女は両の掌を合わせて、そこから風の輪が広がっていく。彼女の風がアクアリウスの魔法をかき消していく。シャボン玉も水の球も宙へと説けて、自然の魔気へと還っていく。その光景に、アクアリウスは驚くことしかできない。まさか、広範囲にわたり魔法をかき消すことが出来るとは思わなかったのだ。それぞれのシャボンに魔法をを当てて、魔法を相殺することはそこまで珍しことではないのだが、広範囲にわたりそれが出来る魔法を相手は見たことが無かったのだ。しかし、彼女の魔法で、相手の瓢箪から出ている紫の液体は彼女の魔法では消すことは出来ないようで、紫の液体はまき散らされたままだった。彼女は武器を分解、再構築した。チェーンの先に棘の付いた鉄球を作り出した。それを相手に向けて飛ばす。相手も、その鉄球に合わせて、瓢箪で鉄球を弾いて見せた。彼女はそれでも連続で鉄球を振り回していた。紫の液体は瓢箪からでなくなったが、攻撃は届かない。彼女は単純に一対一で防いでいるから駄目なんだと考えた。そして、彼女は鉄球を引いて、開いている方の手で、チェーンを持った。そして、その武器を分解して二つに分けた。その状態で、二つ分の鉄球を作り出した。両手に一つずつ、武器を持ち、攻撃を始めた。さすがに、二つ分を完全に捌くことは出来ないようだが、それでも確実に相手の胴を捕らえることは出来なかった。フローは攻撃ばかりでは埒が明かないと思い、少しだけ鉄球の軌道を変えようとしたのだが、手を動かす前に想像通りに鉄球に繋がっていた鎖が動き、それに合わせるように鉄球が動きだした。そして、鉄球の一つが瓢箪に絡みついた。瓢箪を封じた状態で、鉄球が相手の胴に思い切りぶつかる。相手の口から空気と少量の血を吐きだした。その衝撃で、瓢箪が相手の手から離れた。気絶したのか、相手はもう動かなかった。少し様子を見ても、相手は動き出すことはなかった。瓢箪は拘束したまま相手の体を拘束する。
「これで、私たちの勝ちだ」
「まだ、終わってねーよ」
その声はどこから聞こえるのか。拘束している相手は確実に拘束しているし、そもそも動いている素振りは全くないのだ。フローがまだ敵がいると警戒していたのだが、相手の攻撃を躱すことは出来なかった。瓢箪から先ほどの紫の液体が放出されたのだ。フローはその液体を見てから体を離そうとしたのだが、話しきることが出来ず、右手にその液体がかかった。火傷しているような痛みを感じて、少し顔を歪めた。しかし、その程度で相手の拘束を解くことはなかった。しかし、相手の体は動いていない。つまりは、瓢箪自身が動いているということになる。
「離せ、離せ。この鎖を解け!」
瓢箪が動いているということに気が付くと、その少し高い男のような声も瓢箪から出ているのだと理解できた。瓢箪がひとりでに震え、鎖と瓢箪がガチガチと当たっていた。




