美しさのための闘争心 2
サクラが変身した瞬間、そこにいた露出度の高い服で見た目が綺麗な女性たちが、一斉に彼女に視線を送った。そして、全員が喧嘩を止めて、彼女に向かって歩きだした。サクラには何が起こっているのかは理解できていない。彼女に一番近かった女性がいきなり彼女に飛びかかる。サクラは完全に油断しており、飛び掛かってくる女性には反応できなかった。しかし、横にいたオブが女性の体に腕を回して、軽く腕を振るって相手を投げ飛ばした。そこまでの距離ではないが、一般人であれば多少は痛みを感じて、怯むだろう。少なくともすぐに立ち上がれるはずはない。しかし、相手はすぐに立ち上がり、先ほどと同じようにサクラに向かって近づいてきたのだ。その様子は普通ではない。先ほどまで喧嘩していたはずの彼女たちの目にはサクラしか映っていないかのようだった。サクラも周りの女性たちの反応がおかしいことに気が付いた。この女性たちにこの影響を与えたのはアクアリウスだ。つまりはゾディアックシグナルの力が根本にあるはずなのだ。そして、その力を封じる力を彼女は持っていた。サクラは鍵を三本取り出した。オブとラピスに一本ずつ配り、簡単に使い方を説明する。鍵の頭には何も書かれていない。ドズの力を封印した時のようにうまくいけばいいと思った。
狙われているサクラが戦闘斬って、進んでいく。彼女に襲い掛かる女性たちの片腕を掴んでその腕に鍵を刺し、錠を閉じるように捻った。すると、女性の手の甲に波線が二本並んだマークが出てきて、そのマークが鍵に吸い込まれていくように消えた。力を封じた女性たちは気絶して、その場に倒れていた。さすがに今は全員を看病することは出来ない。倒れた女性たちのことは無視して、目的の場所に走る。その後ろにラピスが走っていた。彼女は鍵を両手で握りしめ、サクラに同時に攻撃を仕掛けようとした女性の片方の隙を突いて、体に鍵を差して捻る。すると、サクラと同じように、力の封印が出来ていた。彼女の表情は変わらないが、その心ではかなり驚いていた。彼女の知識の中にそんな現象を起こすものの知識や記憶が無いからだ。しかし、彼女はそれでも、自分に与えられた役割はしっかりとこなしていた。そして、最後尾を走っているオブは背後から追いかけてくる女性たちを残らず、鍵で封印していく。オブの持つ力強さを利用して、サクラと同じように相手の腕を掴んで、力を封印していた。三人は隙の無いコンビネーションで町の中にいたアクアリウスの力を持っていた女性たちの力を次々を封印していった。
しばらく走ると、襲い掛かってくる女性もいなくなっていた。そこそこ走ったはずだが、三人とも息は乱れていなかった。路地の中に入り、徐々にアクアリウスの拠点に近づいていく。
「はぁ、ここまで派手にやればばれるよな」
三人の前に誰かが下りてきた。その見た目を忘れるはずはない。下着の透けたキャミソールをきた半裸の女性。余りの美貌にそこに破廉恥と感じる余地はない。その女性の視線はサクラに向いていた。
「ミラクルガール。本当なら自分の部屋で待っていたかったんだけどなぁ。まさか、町中の力を与えた女性のほとんどが退治されるとは思わなかったんだよ。こうなる前に倒したかったんだけど、無理みたいだね。まぁ、でも、ここで殺してあげるから心配しないで。それか、私の部下になってもいいよ。そうすれば、愉しませてあげるからさ」
ふざけた様子で、アクアリウスはサクラに問いかける。欲望に塗れた妖艶な笑みを浮かべている。彼女にかかれば、サクラなど相手にならないのかもしれない。しかし、彼女も負ける気はない。これまで、いくつかの修羅場をくぐってきたのは間違いないのだ。
「お断りです。あなたみたいな人の下に着くなんてありえませんよ。ごめんなさい」
サクラは律儀の頭を下げて、その後に戦闘態勢を取った。武器の無い彼女はキャンサーの鍵を使って、ハサミを出現させる。左右の刃の持ち手を捻り、ハサミを二つに分離して剣とした。
「新しい武器? その程度で勝てるって自身でもあるの? 無理だよ、速さが違うんだからね」
相手はいきなりサクラの前に移動し、その拳を彼女の腹に叩きつけた。しかし、サクラは吹き飛ばなかった。ハサミをクロスさせて、その交差したところで彼女の拳を受けていた。サクラの手には衝撃が伝わってきていたが、それでも吹き飛ぶほどではない。つまり、彼女はアクアリウスの攻撃を受けきったのだ。キャンサーのハサミにはその力は無い。彼女が上手く相手の攻撃を防ぐ場所に当てなければ、完璧に防ぐことは出来ないのだ。そして、それはまぐれではない。サクラは相手の移動も攻撃も認識できていた。それは彼女が強くなったというよりは、彼女がミラクルガールの力に慣れて、その力の使い方を少しは理解してきたのだ。
「へぇ。少し舐めてたよ。ちょっと、本気で相手するから」
先ほどまでの軽薄な雰囲気が無くなり、その視線はサクラを貫いていた。




