サクラの宴会
森での魔獣軍団との戦闘の後片付けを終えた後、全員でしっかりと無事に帰還した。その後、ギルドで全員に報酬が支払われた。サクラとフローには特別報酬が与えられた。その額で、贅沢をしまくっても半年は生活できるほどの額だ。それを彼女は手伝ってくれた人たちを集めて、宴会を開くのに当てた。宴会とは言っても、二十人いかない程度の人数で集まって食事をするだけだ。そして、彼女の中で宴会を開く場所は既に決めていた。それはオブと一緒に行った居酒屋、ライフリキュアだ。いきなり、宴会を開くというわけにもいかないだろうと、店主に確認して、日取りを決めようと相談しようとしたのだが、店主は今日やればいいと言って退かなかったので、サクラが折れて、当日にやることになってしまった。それでも、参加できないというような冒険者はおらず、彼女が誘った人は全員参加していた。料理は店主だけでなく、他の従業員が作ったものも出てきて、かなり豪勢に行われていた。
「サクラ。こんなことにお金使っていいのか?」
「いいじゃないですか。手伝ってくれたんですよ。これは私の感謝の気持ちと、仲良くしてくださいって言う願いみたいなものですし」
フローはその心を理解できないでもないが、ここまでの人数にもらった報酬を使ってしまうのはもったいないと感じてしまう。フローはここまでの人数に金を使うより、サクラやラピスにプレゼントを買う方が良い使い方だと思っていた。
「すみません。サクラさん……?」
店のドアを中の覗ける程度開いていた人物がいた。彼女の小さな声ではサクラには気づかれなかったため、彼女は遠慮がちに中へと入っていき、サクラの視界に入る場所に移動した。サクラはそれでようやくその人物を認識した。
「あ、ラピス。来てくれたんですね。せっかくの宴会です。友達は全員いてほしいですから、迷惑じゃなければ一緒に楽しみませんか」
ラピスは辺りを見回していた。相変わらず、無表情に見えるが、彼女は少し戸惑っているように見えた。自分がこの集まりに参加してもいいのかどうか。それが彼女は気になるようだ。フローがそれを認めて、彼女の肩を叩いた。
「主催者のサクラが良いって言っているんだ。気楽に楽しめばいい」
それでもラピスの目には戸惑いがあった。しかし、サクラに誘われた以上、ここにいたい、いなければいけないと思っている彼女はこの店から出ることもない。サクラの隣で大人しくしている。それから、サクラに貰ったオレンジを絞ったジュースを手に、サクラの隣でそれをちびちび飲んでいた。サクラやフローとの会話は何か訊かれたら答えるというような風で、積極的に参加しているわけではないようだ。
「……おっ、今日はかなり繁盛してんなぁ」
扉を大きく開けて、中に入ってきたのはオブだ。彼女は客を見て、ほとんど見たことのある顔だと思った。それもそのはずで、この店の今日の客はほとんど冒険者なのだから見たことあるのは当たり前かもしれない。そして、その中に、サクラを見つけるのに時間はかからなかった。
「おう、サクラ。今日は混んでるな」
「あ、オブ姉、待ってたんですよ。今日は来ないのかと思ってました」
オブは不思議そうな表情で、彼女を見返していた。
「これは私の開いた宴会なんです。魔獣の片づけを手伝ってもらった冒険者たちを集めて、お疲れ様かい的なものですね。オブ姉も入ってくれますよね」
「なるほどなぁ。んじゃ、オレも参加させてもらうぜ。今日は金がなかったんでな」
彼女はそう言いながら、金の入った袋を揺らした。チャリと音がして、中に金が入っているのは丸わかりなのだ。しかし、彼女はそんなこと気にしておらず、テーブルにある水を豪快に飲んでいた。
「あ? なんだ、ただの水かよ。ちょっくら酒でも取ってくるわ」
彼女は適当なテーブルに行って、そこから酒の入った瓶を三本ほど奪ってきて、サクラの近くのテーブルに乗せて、指ではじいて瓶の蓋を開け、酒を呷った。
「っかぁ。うめぇわ! サクラ、ありがとよ」
「おいおい、嬢ちゃんに払わせる気か? なんてな!」
店主がオブの後ろで豪快に笑っていた。オブは店主を人睨みしたが、彼と一緒に大笑いし始める。既に酔っているのかと思ったが、オブは酒には強いはずだ。そもそも、豪快に笑う印象があるため、酔っていなくてもこんな風だなと思いなおす。
「まぁ、サクラの嬢ちゃん。ほんと、助かる。夜は物騒だつって、夜に来る客が減ってたんだ。どうしたもんかなと思ってたんだが、これだけ騒いでくれりゃ景気も良くなるってもんだ! ほんと、ありがとよ!」
店主はがっはっはとでも言えるように笑い、カウンターに戻っていく。この宴会は本当に彼女は自分のために開催したようなもので、この店を選んだのも宴会と言えば居酒屋、居酒屋と言えばライフリキュアと言う単純な繋がりだったのだが、結果的に店主の助けになっていたならよかった。そう思う反面、この町の異常事態がこういった場所にも影響が出てきているという実感が沸いてきた。早く、この異常事態を止めないといけないと、彼女は改めて強く思った。




