二つの魔獣討伐 6
全てのアプサプリングを倒した。魔獣の死骸と、木の枝が散乱していた。木の枝が、アプサプリングの死骸だ。しかし、アプサプリングとトレント以外の魔獣は判断がつかない。そもそも、死骸がある状態で戦っていたので、アプサプリングと戦ったせいで、死骸は既にどれがどの魔獣の者なのかもわからない。全ての戦闘を終え、サクラは変身を解いた。その瞬間に疲労が襲ってくる。彼女は片膝を付いて、息を荒くしている。フローは彼女の近くに降りて、ハサミの武器を出したかに座のマークの書かれた鍵を手に取った。彼女はその鍵をじっと見ていたが、やがてサクラにその鍵を返した。
「あ、ありがとうございます」
「立てるか?」
フローは彼女に手を差し出していた。サクラはその手にそっと手を乗せると、フローはその手を握りぐっと引いた。その勢いで、彼女は立ち上がった。それでも息は整っていない。息が上がったままだが、この目の前に広がる魔獣の死骸の片づけが残っている。二人ではどれだけかかるかわからない量だ。二人は視線を合わせて、アプサプリングだと思われる折れた樹の棒を、サクラの持っていた袋に入れて、一度ギルドに戻ることにした。
ギルドへ戻り、受付にいたナチュレに今までの戦闘のことを話すと、すぐに死骸の回収のための人員を集めた。集めたとは言っても、ギルド内で暇そうに談笑している人たちに声を掛けただけだ。それでも、死骸の回収だけで報酬が出るのだから、そこにいたほとんどの人が協力的だった。そして、集まった人たちを連れて、サクラとフローを先頭に戦闘した場所に移動した。
再び戦闘した場所に戻ってくるのに大した時間はかからなかった。そこは未だに死骸だらけだった。連れてきた冒険者たちには、依頼分のアプサプリングとスラッシュピグの死骸だけはサクラの持っていた袋に入れるようにお願いして、それぞれ作業をしてもらうことになった。冒険者たちは、せっせと作業をしている。魔獣の死骸の片づけの仕事はそこまで珍しくない。強い人が倒して、弱い人が回収する。そして、報酬を分けるというのは、よくある稼ぎ方だ。サクラとフローはそんなことは知らず、彼女たちもそこそこ回復したため、冒険者たちの作業に混じっていた。
「二人で、これやったのか? これだけの魔獣を?」
「はい。そうです。かなり大変でしたが、勝てましたよ!」
サクラの体力は回復しているため、彼女は冒険者たちにも元気に笑顔で答える。フローは彼女の後ろで黙って、作業を続けていた。サクラの代わりと言わんばかりに働いているが、彼女はあまり気にしていないようだ。
「あっという間にエースって感じだなぁ。さすが、桃色の煌めきだ」
「ももいろのきらめきって、私のことですか」
さすがのサクラも二つ名みたいなもので呼ばれると恥ずかしさがあった。元の世界でも、物語の中で二つ名を持っている人はいたが、自らそれを名乗るようなキャラクターは恥ずかしくないのかと何度思ったことか。しかし、その二つ名が自分にも付いていた。そして、その二つ名は中々なネーミングセンスだ。もちろん、恥ずかしい方向で、だ。それでも、彼女はそれを否定する気はない。試験官を任せるかもと言われるほどなのだから、それを否定するのは他の冒険者に失礼かもしれない。その二つ名を受け取ろうとは思わないが、そう言うのを禁止しようとは思わない。それぞれ考えることがあり、もしその二つ名でこの町の平和に貢献できるなら十分な効果だろう。サクラはそこまで深くは考えていないが、他人の頼りになるならいいだろうと、その程度にしか考えていない。
「桃色の煌めき。桃色の服に身を包み、輝きながら戦う元気でかわいい英雄。サクラちゃんのこと、そう思ってる人は少なくないですよ。特に町の人は感謝してる人もいますから」
サクラはその話を聞いて少し気恥ずかしかった。しかし、自分の活躍を見てくれているような気がして、嬉しくもあった。誰かが自分の活躍で助かっているのを再確認できたようでもっと頑張ろうと思えた。
それからは冒険者たちと魔獣の死骸集めをした。集まっていた冒険者は、どうやらサクラのファンだったらしく、彼女は冒険者たちと談笑しながら作業を進めていた。その間、フローは剣呑な雰囲気で作業を進めていた。その雰囲気のせいで、彼女に話しかけるような人はいなかった。
「サクラちゃん、仕事は終わったよ。ギルドに帰ろう」
いつの間にか冒険者の中のリーダー的な立ち位置になっていた冒険者がサクラに声をかけた。既に彼女は談笑メインで作業はしていなかった。フローはサクラの後ろで、自分の戦闘について考えていた。冒険者たちは、サクラが持つはずだった袋も持ってギルドに戻った。フローの袋も持とうとしたのだが、彼女は威嚇するように睨んで自分の分の袋を持っていた。




