二つの魔獣討伐 5
大軍との連戦はサクラが考えているよりもきつかった。フローにはまだ余裕があるように見えるが、長時間の戦闘で疲れがないわけがない。彼女だって逃げたいのだ。しかし、今の状況では逃げることは出来ない。いっそ、エクスプロージョンを発動して、ここら一帯消滅させたいところだが、そのせいで、何にどんな影響があるかわからない。町に魔獣が押し寄せるなんてことになれば一大事では済まないのだ。しかし、それでもショットガンの魔法で、何とか凌いでいる。アプサプリングの数は確実に減らしている。フローもその剣で向かってくる魔獣を叩き折っているようだ。確実に数は減っている。それでも相手の攻撃の回数は全く減っている様子はない。どれだけいるのか、それがわからない以上、いつ終わるのか予想もできない。それが二人の疲労を大きくしていた。
このままでは押し切られるだけだ。最終手段ではあるが、エクスプロージョンの使用も頭の中に入れておかないといけない。彼女は敵を片手で捌きながら、鍵を取り出した。その頭には上下に緩やかな孤の先に丸が付いているマークの付いている。彼女はその鍵を自分の胸に差して、右に捻る。すると、その鍵は光に包まれて、何かの形に変化する。変化する速度はそこまで速くないため、その間も向かってくる魔獣の相手をしなくてはいけない。光が弾け、ようやくそれは形作る。それはハサミだ。彼女はその鋏をの右側の円に手を入れて握る。大きさは彼女の背丈の半分よりも大きい。刃の部分は内側が刃になっており、その先端は鋭く、突き刺すこともできるだろう。彼女はそのハサミを持ち上げる。重さはほとんどない。見た目の割りに軽すぎると感じるほどだ。しかし、中々使いにくい武器だ。相手が多数いる状態には向かない武器だった。何か打開できる武器が出てくると思い使ったのだが、そう都合よくはいかないと思ったのだが、少し手首を捻ると、何か違和感を感じ取った。そのまま手首を捻ると、カキンと音がして鋏の左右が離れたのだ。ハサミの左右がそれぞれ片刃の剣になる。軽いせいで、いまいち力の伝え方が上手くいかないが、それでも十分に武器としては機能していた。魔法も使い、さらにアプサプリングの数を減らしていった。
一方、フローも持っている剣だけで戦い続けるのはきつかった。最初は魔法も使っていたが、体内の魔気が少なくなっていた。これ以上、無理をして魔法を使うと死に近づく。それを管理できない人はまずいない。死ぬまで体を動かし続ける馬鹿がいないのと同じだ。そして、彼女の体力も無限ではない。空を飛ぶのも体力が必要だ。走るよりは楽だが、早歩きよりは確実に疲れる。それくらいの消耗力だ。そして、この連戦で空を飛び続けていた彼女は飛び続けられる体力はそこまで残っていない。彼女は広範囲を攻撃できるような武器を頭の中で探したのだが、その答えは出なかった。とりあえずは剣を鉄球へと変えて、横に凪ぐように振るう。その軌道上にいた魔獣たちの内、何匹かは回避していたが回避した魔獣以上に倒した魔獣の方が多かった。フローはまさか鉄球でこれだけの敵を倒せると思っていなかったため、驚いていたが、それで動きを止めることはない。地面を滑らせ、鉄球を自分の方へと戻す軌道を取らせ、その途中で、さらに振り回す。鉄球が森の中を乱舞する。アプサプリングはその軌道に対応しきることは出来ず、どんどんと数と数を減らしていく。地面が抉れ、作った空間の地面が大変なことになっているが、それくらいは気にしていられない。
「はぁ、ふー。フローは大丈夫ですか」
「ああ、まだいけるぞ……」
二人は互いに庇いあいながら、戦闘していた。サクラは少し息が上がっている。フローは口では強がっているが、空を飛んでいる速度は明らかに落ちている。彼女はそろそろ飛べなくなることを自覚していた。走り続けると足が痛くなるのと同じように、空を飛ぶと背中の翼の付け根辺りが痛くなるのだ。そして、既に彼女は背中に痛みを感じている。しかし、それでも勝てる見込みが出てくるほどに魔獣を倒していた。依頼されている討伐数はとっくの昔に超えていた。見えているだけでも十匹はいない。隠れているのも合わせても、大した量はいないだろう。しかし、ここからが一番大変だろう。サクラはそれを理解している。無理をしてここまで来たのだ。あと少し無理をしろと言うのは中々大変だ。しかし、ここで油断して死ぬなんてくだらない結果にはしたくない。彼女はばらけたハサミを構えて、最後の戦闘に臨む。彼女が構ている横でフローは既に鉄球を振り回して、相手に向けて飛ばした。数が少ないせいで、二匹ほど仕留めただけだ。残りは同時に動き出す。狙いはフローではなく、サクラだ。彼女が地上にいるため、狙われただけなのだ。しかし、彼女を狙うよりはフローを狙った方が倒しやすかったかもしれない。
サクラは左手のハサミの刃を正面に向け、右手のハサミの先を相手に向けて、構えた。彼女はここで終わらせようとしている。その心意気が伝わり、ハサミが発光していた。彼女の頭に何かの記憶が流れる。それはハサミを使った連撃だ。その連撃に似合う言葉と言えば、必殺技。彼女はその映像に胸を高鳴らせる。残りの魔獣を視界に捕らえる。彼女のリーチに入った時点で、輝く二振りのハサミを振るう。敵のいる場所に剣を当て、流れるように次々と真っ二つにしていく。剣の軌道に合わせて煌めきの尾が長く伸びる。敵を斬る度に、ハサミの輝きが増していく。連撃のスピードも上昇していく。最後の一匹を目の前にして、ハサミを一つにした。
「ミラクルシャインメテオールッ!」
一つになったハサミで、最後の一匹を真っ二つにし、彼女が斬った全ての魔獣が煌めきながら四散して消滅した。そして、彼女の勝利を讃えるかのような煌めく何かが彼女の周りに漂っていた。




