二つの魔獣討伐 3
サクラは辺りを見回したが、状況は変わらない。魔獣たちが自分たちを取り囲んでいるのだ。フローは飛びながら、木の触手を払っている。彼女が戦っているそれがどの木の物なのかもわからない。今、二人の回りにいる魔獣はフローを狙うことのできる能力のあるものはいなかった。つまり、ほぼすべての魔獣のターゲットはサクラである。しかし、彼女は怖じ気づいてはいなかった。魔獣の数は多いが、ウルフェンリーダーと戦ったときよりは怖くないのだ。あのときの威圧感も恐怖ない。不安がないわけではないが、あのときと比べれば大したことではなかった。
様々な方向から幾多の鳴き声のような叫び声のような音を聞きながら、サクラは様々な方向をみながら魔獣を一体ずつ倒していく。力のセーブはせずに一体一体を全力の一撃でぶっ倒していく。それでも数は中々減っていないような気がする。一体ずつと言うのが、効率が悪いのだ。彼女は戦いながら、今の自分の状況に既視感を感じていた。それは元の世界で起こったことだ。だが、それは現実に起こったことではない。彼女の見たことあるこの既視感は映画のものだ。見ずに嫌うのはもったいないと思い、見たゾンビパニックの映画だ。数えきれないくらいのゾンビに囲まれながらも、何とか協力して生き延びた青年たちの話だった。彼らがゾンビを抜けられたのは、この世界にはない銃を使っていたのだ。ただ、銃がないだけで魔法で似たようなものは作れるだろうと彼女は思った。相手の攻撃を捌きながら、彼女は手の中に土の魔法で銃弾を作り出す。本物の銃弾のしっかりとした形はわからないが、先端を楕円にして、後ろを円柱にする。火薬の部分は考えてない。火薬の代わりに、強力な風の魔法をぶつけられれば、銃と似たようなものになるだろう。彼女は試しに銃弾を三つほど正面に生成して、その後ろに風の小爆発を起こす。その風に衝撃に乗って、銃弾が彼女でも捕らえられない程の速度で発射させる。三つの弾丸は一体の魔獣の胴にドドドと突き刺さる。魔獣はそれで動かなくなった。どうやらその銃弾でも有効らしい。もっと生成して弾幕を張るように放てば、弾幕シューティングに出てくる道中の敵のように倒せるかもしれない。顔女は思った通りに土の魔法を駆使して、銃弾をいくつも生成する。作ったところから、銃弾を風の魔法で発射した。彼女の周りに銃弾が作られては、発射される。銃弾を見切ることのできる魔獣はおらず、全ての銃弾がどれかの魔獣にヒットしている。まさしく弾幕だ。サクラは自身の勝利が見えてきたと思った。逃げる道を作るのもこの魔法でできそうだと思った。
サクラが魔法を編み出しているその横で、フローは飛び続けていた。いつも使っていた片手剣よりも長い剣身を持つ剣を使い、その重さを器用に操りながら、剣を振るのと同時に、自身の体を動かして木の触手を回避、攻撃を同時に行っていた。しかし、木の触手を持つ本体を未だに見つけられていない。森であるため、普通の木も沢山あるのだ。その普通の木が並ぶ中に、この触手を動かしている木の魔獣がいるのだが、それを見分ける方法は、その本体が動かないとわからないのだ。木の触手を動かしているということは、少しくらいは動いていると考えているのだが、辺りをちらちらと見るだけでは、動いている木を見つけられないのだ。手当たり次第に木を切ればいいのかもしれないが、森を不必要に傷つけたくはないのだ。彼女は思い切って、木の触手を壊さずに回避して、その触手を掴んだ。その触手は彼女の手に巻き付いた。それは彼女の予想通りだった。フローはその木の触手を思い切り引っ張る。地面から、ぼこぼこと見えてくる。その先に触手が繋がった木を見つけた。案外、近くにあり、彼女は手に持っていた武器を大剣に変えた。その剣は、冒険者認定試験の試験官の武器と同じものだった。かなり重い剣だが、彼女は体全体を使って、剣を振るう。大剣は木の魔獣、トレントの幹に鈍い音と共にぶつかった。しかし、幹には大した傷はつけられていない。三分の二とか、五分の一とかそんな少ない数字で表現できるほどの傷すらついていない。彼女は剣を斧に変えた。最初からこちらにしておけばよかったと思ったが、過ぎたことを気にしている場合ではないと切り替えて、斧を幹に叩きつける。木の内側に打撃音が響いた。しかし、その戦いの隣では何十体もの魔獣とサクラが戦っているため、その音が周りに聞こえることはなかった。彼女は斧を叩きつけると、腕に巻き付いていた触手が彼女を幹から引き離そうとする力が強くなっていく。それでも彼女の力の方が強かったようだ。ようやく彼女はトレントを斬り倒したのだった。




