少女たちの休日 1-3
「試しに着けてもいいんだよ~」
突然、後ろから声がしてサクラは振り返った。そこにいたのは、金髪で短い髪の女性だった。青いエプロンをしている。彼女の言葉から察するに、この店の店員なのだろう。
「まぁ、指輪が取れなくなったら、指斬っちゃうかもしれないけどね~」
彼女はほわっとした笑顔のまま、怖いことを言う。確かに取れなくなって無理やりとって、指輪が壊れたら大変だ。と一瞬考えたが、指を斬るまでしなくてもいいだろう。
「もう、マイ姉。そんなこと言ったら売れなくなっちゃう!」
彼女の後ろにもう一人の女性が現れた。彼女は手には黒く汚れた軍手のようなものを着けていて、そのエプロンもマイと呼ばれた女性とは比べられない程汚れていた。
「大丈夫だよ。冗談だし~。それにこんなこと言っても、エイちゃんのアクセは売れるもの~」
「そう言うことじゃなくて! もっと普通に接客してよ!」
どうやら、エイと呼ばれた女性がこの店にあるアクセサリーを作っているようだ。羽の指輪を見る限り、かなりの技術力を持っているように見えるが、彼女の起こる姿を見ると、そこまで器用そうには見えない。
「ああ、私たちのことは気にしないで、好きなように見ていって~。試しに着けてもいいよ~。大丈夫、指輪が抜けなくても魔法で取れるからね~」
そう言うと、エイの背中をマイが押して、カウンターへと戻っていく。エイはどうにも納得できていない表情だが、彼女はカウンターの奥へと引っ込んでいった。マイはカウンターで三人を見守っている。
「フロー、せっかくですし、つけてみてはどうですか」
「あ、ああ。そうだな」
彼女の喉がごくりとなる。そこまで緊張することはないだろうと思ったが、指を切り落とすと言われたので、そうなるのも仕方ないのかもしれない。フローは慎重にその指輪を手に取ると、自身の薬指にゆっくりとはめていく。自身の指が引っかかりそうな場所まで入れていくが、結局は指の付け根の辺りまで入れることが出来た。彼女は羽の絵が自分の方へ向くように調整して、その手をじっと見ていた。はめてしまったことで、その指輪がどうしても欲しくなってしまった彼女は、それを買う決意をした。そこまで重大なことではないはずだが、彼女にとって、カワイイものを身に着けるのはそれだけのことなのだ。サクラは彼女が遠慮がちながらも満足そうにしているのを見て、ラピスのところに戻った。そして、彼女にもネックレスと着けるように勧めてみたのだが、ラピスは首を横に振る。
「大丈夫です。こうしてみているだけで」
「そんなこと言わないでください。少しつけさせてもらいましょう!」
彼女は慎重にそのネックレスを両手で手に取る。そして、慎重にラピスの首にそれをかけた。彼女の胸元で赤い宝石がキラキラしていた。自分の胸に下がるその宝石を見て、彼女の瞳のもキラキラが映っていた。サクラはその顔には感動がある気がした。
「……サクラさん。私、このネックレス、欲しいです。買ってもいいんでしょうか」
「当たり前です! こんなにも似合ってるんです。買いましょう!」
「サクラさんは、何か買わないんですか?」
サクラは二人にカワイイものを着けさせたくて、自分の物を選ぶことを忘れていた。店内を見回して、とりあえず、彼女は目の前にあった髪留めを見てみた。様々な花の形をした装飾がされている髪留めたちはどれも目移りするほど、綺麗でカワイイ作りだ。
「サクラさんには」
「サクラには」
ラピスとフローが同時に手に取ったのは、桃色で五つの花弁のある花。この世界でそれが果たして同名の者なのかはわからないが、それは桜の花だった。
「やっぱりこれですよね。サクラさんに一番似合います」
「そうだな。私もこれが一番だと思った」
二人に勧められ、小さな桜の花の付いた髪留めを、ぱちりと髪につけた。
「どうですか。似合ってますか?」
照れた様子で彼女は、髪留めをつけた自分を二人に見てもらった。しかし、二人から返事がない。不安になって、二人を見るとじっとサクラを見ていた。
「あの、ど、どうですか」
二回目でようやく我に返ったようで、二人は彼女から視線を外しながら答えた。
「似合ってます」
「似合ってるよ」
息ぴったりで、二人は桜を褒める。彼女は気が付いていないが、二人の頬はサクラ以上に赤くなっている。余りに可愛いサクラを直視できないのだ。本当に似合いすぎて、似合っているという以上の感想が出てこなかった。しかし、それでも、その一言だけで、サクラはとても嬉しくて、満足していた。褒められたことで、彼女もその髪留めを買うことにした。
三人はそれぞれ気に入ったアクセサリーを買って、店を出た。買ったアクセサリーはそのまま付けているのだが、ラピスとフローはサクラを自分たちの影に入るようにして歩いている。サクラは少し歩きにくかったのだが、彼女たちが近くで歩いてくれていることがとても嬉しかった。二人の腕に捕まり、ゆったりと歩いていく。ラピスとフローは可愛い状態の彼女を他の人に見せないようにするので精一杯だった。
そうして、ようやく部屋に付いて、女子会が終わる。ラピスもフローもサクラの部屋まではいかなかった。サクラは少しの寂しさを感じていたが、また遊べばいいと思った。




