盗賊討伐依頼 1
盗賊討伐依頼を受けて、ナチュレに今掴んでいる情報を教えてもらった二人は、討伐する盗賊がいるであろう場所に移動していた。その場所は森の中なのだが、少し街から離れた場所になる。その間に何匹かの魔獣を倒してその場所に来ていた。サクラは盗賊討伐の依頼と聞いたときにはアジトがあり、その中に五十人以上の盗賊がいて、その奥に宝があるものだと思っていたのだが、そうではないらしい。一応アジトのようだが、そこにあるのは大きなテントが二つに大きな焚火が三つほど。それ以外には人間の腰より少し背の低い木箱がいくつも置いてある。さらに見えている盗賊は十人未満で、今それ以外に活動している者がいるとしても、三十人もいないだろう。この盗賊団に何を苦戦させられるのかわからないが、見た目だけではどれだけ強いのかわからない。超能力があるというだけで相手の戦力が全く分からなくなるのだ。これで戦争なんてことになったら、一人対一国と言うシチュエーションもありそうだと勝手にこの世界にロマンを感じていた。
フローは相方がそんなことを考えているとは知らずに、盗賊たちの様子を草陰から監視していた。そもそもその盗賊が本当に悪いことをしているのかわからないため、彼女はまずは観察から始めることにしたのだ。それも彼女の成長かもしれない。悪人と決めつけずに相手の様子を見るところから始める。しかし、依頼が出ている以上、少なくとも何等かに迷惑行為はしているはずであった。その証拠に、彼女たちの後ろから、何者かが迫っていた。
「何してる」
サクラの首元にナイフがあてがわれた。その男が少しでも手を引いたり出したりしようものなら彼女の首は斬れるだろう。フローはその声に気が付いたが、既にサクラが人質に取られてしまっていた。彼女は何もすることが出来ずに、その場でじっとするしかない。
「そうそう。動かないのが正解。付いてこいよ」
サクラを無理やり連れていきながら、その後ろにフローをついてこさせる。相手はサクラのことは知らないらしい。
「お頭。俺たちを討伐しようとしてた冒険者二人。可愛いガキだ」
お頭と呼ばれた男はお頭と呼ばれるには若そうに見えた。周りの盗賊たちは筋肉質に見えるのに、彼には筋肉は付いていないように見える。この団の脳みその部分なのかもしれない。この盗賊団が手ごわいというのは案外、このお頭一人の力の可能性がある。サクラはナイフを首に突き付けられながらも冷静に周りを見ていた。フローを見れば、彼女はどうやら我慢の限界のようだった。今まで我慢できていたこと自体が凄いことなのかもしれない。フローはそこにあった木箱をちらと見た。そして、今この場にいる盗賊たちも見た。一番近い木箱に目をつける。それより近い盗賊はいない。盗賊が近ければ相手の武器を超能力で作り直そうと思ったが、そうする間にサクラの首を斬られては溜まったものではない。彼女は身を低くして木箱に近づく。そのまま木箱を分解して、剣にした。それをみたサクラを捕らえている男が彼女の首に当てたナイフを引こうとしたのだが、それより速く彼女は男の腕を取り、背負い投げを食らわせた。目を白黒させながら男はすぐには動けない。サクラもそれ以上は何もしない。この依頼は、サクラの受けたものではないのだ。だから、彼女はフローがピンチにならないと手を貸すつもりはなかった。メイトが付き添いで来た時もそうだったため、そうすることにしたようだ。彼女は試験官に匹敵する実力はあるものの、その規則は知らないのだ。だから、彼女はメイトの真似をするしかなかった。
フローはサクラが男の拘束から抜け出したのを見て、安心していた。彼女が傷つけられる心配はないだろう。彼女は自分より強いのだから、この程度の相手に傷つけられることはないと思ったのだ。フローは剣を振るい、周りにいた盗賊たちを切り伏せる。致命傷ではないものの、斬られた部分からは血が流れている。長時間放置しておけば、確実に出血多量で死ぬだろう。討伐と言うのだから殺してもいいのだが、彼女は殺しはしなかった。お頭と呼ばれた男以外はあっという間に彼女の剣にやられ、地面に呻き声を上げている。フローは剣を振るい、剣に付いた血を地面に散らした。それでも血は残っていたため、彼女は剣から血を抜いて再構築する。血の付いていない新品のような剣が彼女の手にあった。そして、フローはお頭と呼ばれていた男を探して辺りを見たが、既にいなくなっていた。どこに行ったのかと思えば、その男はテントの方へと走っていた。相手は逃げようとしているのかもしれない。フローは翼を広げて、相手を追っていく。




