フローの冒険者認定試験 2
「では、開始の合図もありましたので、始めましょう。私はあなたの実力を計りますから、最初に動いてください」
自信と言うか、それ以前に自分が強いことを理解した上で、それを誇るわけでもなく、当たり前のように振舞っている。フローは言われた通り、先に動く、羽を広げて、空を飛ぶ。四方の壁の一部に超能力を使い、それを金属製の剣にした。
「では、行くぞ」
彼女は空に舞い上がり、急降下してフィムストに近づていく。彼女はそれを見上げてはいるが動こうはしてない。それどころか、大剣も抜いていない。フローはそれを罠かもしれないと考えていた。しかし、攻撃しないことには始まらないとも考えている。相手を動かして情報を得るしかない。力押しでは勝てないということをサクラとの戦闘で学んでいた彼女は戦闘中でも考えるようになったのだ。急降下したまま、彼女はフィムストに剣を叩きつける。彼女はその瞬間まで動かなかった。そして、彼女は片手で剣を受け止めていた。その剣身を握り、その剣を壊してしまった。フローはすぐにバラバラにされた剣を分解して、再び剣に再構築した。
「なるほどなるほど。そう言う超能力ですか。どうしたんですか。次々撃ってきていいんですよ」
もはや、それは煽っているようにしか見えない。しかし、彼女は試験官としての仕事をしようとしているに過ぎなかった。メイトとは違い、彼女の行動の全てを見て判断しようとしているのだ。実力の全てを見てようやく合格か不合格かを決める。それが彼女の試験だ。伸びしろやセンスは彼女の試験では意味を成さない。それをどれだけ発揮できるかが合格のラインを越えられるか、と言うわけだ。
フローは彼女の思惑の全てを理解したわけではないが、出し惜しみしている場合ではないということは理解できた。彼女は再び空へと上がる。上から土の塊を出現させてそれを次々と落とす。フィムストはそれを見て、自分に当たるいくつかを軽く体をずらす程度で避ける。彼女に直撃するコースを取っていたのは五つ。それ以外は彼女が大きく回避しないとただの無駄になっている。しかし、そこに工夫がされていた。土の塊の雨の中、魔気の動きを感知しにくい状態で、見えない風の刃を混ぜているのだ。そして、それは相手が少し動いただけでは回避できない。しかし、その刃が彼女に当たることはなかった。風の刃は彼女の体をすり抜けて彼女を通り過ぎる。魔法の威力が弱い時にはその現象が確実に起きるが、フローはそんな低威力の魔法を使ってはいない。何が起こったのか理解するのはわからないが、そうなるような超能力なのかもしれない。それをすぐに解析することは出来ないが、攻撃が透過する可能性があるとわかっただけでも収穫だろう。彼女はそのまま土の魔法と風の魔法を駆使して、何パターンかの攻撃を加える。しかし、そのどれもがぎりぎりで回避されるか透過されるかだ。未だに傷一つつけられていない。フローは魔法を一度やめて、地上に降りる。持っていた剣を分解、再構築して、チェーンの連なる先に鉄球の付いた武器を作り出す。サクラと戦ったときに使っていたあの武器だ。器用に手を動かして、チェーンの動きを制する。片手だけでは操れないときはもう片方の手でチェーンを動かしているため、不規則な動きをしていた。その鉄球がフィムストに向かって飛んでいく。しかし、その鉄球も紙一重で避けられるように体をずらした。しかし、その紙一重で避けるというのが失敗だとすぐに彼女は気が付いたが、既に遅い。彼女がチェーンの一部を分解して再構築。チェーンが軌道を変えて、相手に何重にも巻き付いた。鉄球が遠心力で振り回されて、中心へと徐々に引き付けられっている。ようやく、相手にその鉄球が当たるというところで彼女はその拘束から抜け出した。そのチェーンが彼女の体を透過したのだ。鉄球は引っ張っていた力が無くなり、勢いを持ったまま地面を抉った。フローはすぐにそれを分解して、再構築する。フローの手にあるのはシンプルな剣だ。翼を開き、低空飛行で相手に近づいていく。相手の手前で急停止して、剣を横に振るう。彼女はその攻撃を先ほどと同じように、剣身を握り壊した。壊された剣は再び再構築され、短剣になる。攻撃範囲が変わり、その短剣で突きを出す。その攻撃も透過される。
「そんなものですか。町で暴れた天使と言うから少し期待していたのですが、期待外れでしたね。一応、防御の面も試験させていただきましょう」
透過するという超能力を使っているくせに、と思わなくもないが、それを含めて彼女の実力なのだろう。そして、その力をうまく使っているから試験官の資格を持つほどの冒険者というわけだ。
そう思ったときに、彼女は当たり前のことに気が付いた。超能力が強いのではなく、自分の超能力を理解して様々な力の使い方を心得ているから強いのだと。それなら、自分の超能力は他にどんな使い方が出来るだろうか。
彼女はこの劣勢としか言えない戦闘の中、何か活路が見出せないかと考えることにした。しかし、フィムストは攻撃を始めようとしていた。




