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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
10 メイトの秘密
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メイトの秘密 2

 メイトは路地の入口に移動してきて、そこにあった木箱の上に座った。もう一つ木箱があったが彼女は座る気はなく、彼の横で立っていた。メイトは彼女を見上げて、言葉で彼女に座らないかと問うたが彼女は座ることはなかった。そして、いよいよ彼は本題に入る。


「さっき戦った銀髪の女性はアクアリウス。ゾディアックシグナルのメンバー。ゾディアックシグナルはこの町を根本から変えようとしている組織なんだ。この町で異常な依頼が増えたのはその組織のメンバーがこの町で色々しているからなんだ」


 メイトは淡々と話していた。サクラにとってもあまり興味のある話ではない。彼女は心の中では、自分が魔法少女的な変身をしているのだから、そう言った敵のような存在がいても不思議ではないと思っていた。むしろ、いない方が不自然だとすら思っていたのだが、ようやくその組織との対立の一歩目が踏み出されようとしているのだ。メイトはきっと、手助けしてくれる存在なのだろう。博士とかオペレーター的な役割なのかもしれない。彼女が扱える鍵を持っていたことがその証拠だろう。


「そして、僕はこの町を無理やり変えられるというのは気に食わなかった。だから、ミラクルガールが現れるまで抵抗してたんだ。そして、君がミラクルガールとして現れたんだ。だけど、君には戦う義務はない。これだけ知っても君が戦う必要はないんだ」


 それもお決まりの言葉だ。ここまで言われれば、協力せざるを得ないという奴だ。そして、サクラはそもそもこの話を聞かなくても、協力する気があったため、断ろうとも思っていない。彼女は話を全て聞く前に協力を申し出た。メイトは話がスムーズに進みすぎていることに少し疑問を持ったようだが、彼女が協力してくれるならその疑問も必要ないと頭から追い出す。そして、彼はサクラの持っている鍵と同じ形の鍵を九個渡す。その鍵の摘まむ部分には何も書かれていない。


「これはゾディアックシグナルのメンバーの持つ力を吸い取ることが出来る空白の鍵だ。これをメンバーに刺して左に捻ると相手の力をこの鍵に保管できるみたいだ。すまないが、それ以外はわからない。僕は鍵の適合者じゃなかったから」


おそらくこれが追加装備や変身強化につながるアイテムなのだろうと彼女は物語の穣夕からメタ的にアイテムの概要を読んでいた。


「僕も冒険者として、町を守りながら調べているから、何かわかったり、聞きたいことがあれば、すぐに来てほしい。いつでもいいから」


 それはそれだけ言うと、木箱から立ち上がる。あれだけ真剣な瞳をしている割には彼の話は短かった。それもそのはずで、メイトからすればゾディアックシグナルのことやこの鍵の力に付いてもっと詳しく話すつもりだったのだ。それに協力を快諾されるとも思っていなかった。説得の言葉は考えていたものの、この町を守りたいというのは自分のわがままだ。それを人に押し付けるわけにはいかない。だからこそ、誠心誠意自分の願いを伝えようと思ったのだ。この町には思い入れや愛着があるのだと。しかし、それを話す前に彼女は既に協力すると言ってくれたのだ。もしかすると彼女はこのことの重大性を理解していないだけかもしれない。それを説明しないで、協力させるのは卑怯だが、彼女は困っている人を放っておけないようだから、それを説明しても彼女は協力してくれるだろう。だが、本当に危ないことに付き合わせることは出来ない。彼女が戦えない相手が出てきたときは自分が戦わないといけない。今回のようにアクアリウスのような奴が出てきたときに、戦うのは自分なのだ。サクラが彼らに負ける心配がないくらいに成長してから任せようと思っていた。


 サクラはアクアリウスの名前を聞いたことで、簡単に他のものの名前を予想した。アクアリウスはみずがめ座。他のメンバーも星座の名前なのだろう。手元にある鍵はおとめ座、おうし座、かに座だ。鍵の本数から言っても残りの星座が全員、敵だと考えるべきだろう。この時、彼女はようやく魔法少女的な物語が始まると思い、少しわくわくしていた。物語の登場人物に憧れていた彼女は主人公の役を与えられたのだ。その叶わないはずの夢が叶った。それが嬉しくないはずがない。


 その様子をメイトは気が付いていない。そして、彼女がどれだけ危うい人物なのかも理解していない。彼女がこの世界を物語の代わりであり、この世界の住人が全て物語のキャラクターの代わりとしてしか認識していないのだ。それはラピスやフロー、オブもあまり変わらない。彼女にとって、これは幻想の一部でしかないのだ。現実感のない世界を、現実として受け止めることは出来ない。


 ここからようやく、彼女の現実が動き出す。これは物語のような夢のような痛みのない喜劇ではないのだ。

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