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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
9 鈍痛が知らせる悪
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鈍痛の知らせる悪 4

「なんで倒れないんだ? ほぼ即死の毒薬なんだけど。配分間違えたのかな」


「はっはっはっ。もし、この毒薬とやらが人間用だってんなら、オレには効かねぇぜ? オレは人間族じゃねぇからな」


「なるほど。そう言うことか。でも、痛みか痺れか。何にしろ辛いよね。この間に色んな毒を上げるよ!」


 サクラがオブの腕に中にいるため、相手はそのまま二人同時に殺してやろうと考えていた。三人同時に三角形になるような位置から飛び掛かる。注射器もコピーされているため、同じ効果の注射が二人を狙う。しかし、その針が刺さることはなかった。二人を覆うように水の球体が出現したのだ。それはサクラが出したものだ。そして、その魔法で作られた水の壁は相手の三人に水でできた棘を撃つ。それは当てるものではなく、三人を遠ざけるための物だ。


「治癒師みたいなことが出来ればいいんですよね。少しですけど、ラピスに聞いておいてよかったです」


 彼女は水の球を出現させる。その水の球の中にオブを入れる。彼女の中に、サクラの水の魔気が混ざっていく。彼女は感覚だけで、治癒を行う。毒薬を水の魔気で中和していく。オブの険しい顔が徐々に楽になっていく。


「治癒までできるのか。ミラクルガールも成長してるんだね」


 暢気にそんなことを呟いているが、内心焦っていた。攻撃は出来ないし、このまま帰らせてもらえるなんて希望はないと考えた方が良いだろう。毒薬が効かなかったのは大誤算だった。大きい方を倒せば、ミラクルガールは一人で戦うことになるだろう。どれだけ強くても、一人で三人を相手にするのは難しくなるはずだ。一人で三人分。それが彼女の超能力の強みだ。しかし、今それが有効的に活用できていない。と言うか、活用できない状況にされているのだ。そして、それを相手は理解していた。


「んー、森の中なら絶対に勝てるんだけどな。少し納得いかないね」


 そんなことを言っている間にオブの治療が終わる。相手もそれを待っていたわけではないが、逃げることも攻めることもできないのだから、待つしかなかったのだ。実際、オブの治療中に逃げることは可能だっただろう。しかし、最初の行く手を阻んだ魔法が頭に残っている以上、逃げられると考えられなかったのだ。かなりの速度で魔法が発動する。相手は知らないが、変身しているときは詠唱が必要ないのだ。彼女がオブの治療に専念していなければ逃げられないだろう。つまり、オブの治療が終わった今、相手が逃げることは出来ないということだ。


「てめぇん毒は痛かったぜ」


「てめぇじゃあないよ。そうだった、名前とか言ってなかったっけ」


「聞くまでもねぇよ!」


 彼女の遠距離パンチが再び繰り出される。相手はそれを回避できず、もろに受けた。彼女は先ほど人間ではないと言った。彼女の種族は鬼だ。そして、鬼は大抵の種族よりも遥かに力が強いのだ。彼女の超能力は距離が離れていてもその威力は堕ちない。やろうと思えば、パンチ一発で相手の首を胴から無理やり分離することもできるだろう。しかし、彼女は相手を殺したいわけではない。力が強いからこそ、相手を殺さないようにするのだ。怒りに、感情に負かせた攻撃だけでは何も守れない。彼女はそれを知っていた。


 オブのパンチを受けたのは分離体の一体目。つまりは背丈が中くらいの奴だ。中くらいのは彼女のパンチを受けた後、オリジナルに吸い込まれるように消えていった。それが倒した合図なのか、回収しただけなのかはわからない。しかし、一体減ったことは事実だった。


「サジタリウス! 助けて!」


 相手が誰かの名前を呼んだ。その瞬間、矢が飛んできた。それも数十本の矢が同時にだ。矢はどこから放たれたのかわからないが、正確にオブとサクラを狙っている。相手は小さい分体も体に戻した。相手は既に逃げる体勢だ。サクラが相手の壁を作り出して、逃げるのを防ぎたかったが、矢から自分たちを守るので精一杯だ。土の壁を出現させると、その奥は見えない。見えない場所に魔法を使っても当たらないのは当然のことだ。


「じゃあね! 次にあったときは最上の苦しみの中で死んでもらうよ!」


 相手はその言葉を残して消えていった。


「くそっ。なんだ、この攻撃は。逃げんなよ!」


「ちょ、ちょっと、オブ姉。この矢の雨の中、進むのは無理ですよ。壁の中から出ないでください」


「あ? くそ。そうだな。熱くなりすぎるなってことだ。死ななきゃまた捕まえることもできるよな」


 彼女は自分に言い聞かせるようにそう呟いた。ここまで追いつめておいて、逃げられた。そもそも、仲間がいるかもしれないと思わなかったことが逃がした原因だろう。しかし、あんな攻撃をするような仲間がいるのは想定できなかっただろう。二人は白んできた空を見ながら、ぼうっと呆けていた。

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