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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
9 鈍痛が知らせる悪
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潜む闇に

「何してんだ、てめぇ」


 オブはその日、いつものように居酒屋リキュアライフで満足するまで酒を飲んだ帰り道。夜も遅くなり、大通りにも人通りはほとんどない。そんな中、全身緑系統の服をきた男性とも女生徒もつかない人が、道行く一人に声をかけたかと思いきや、その通行人に何かしようとしていた。暗いというのもあり、その人が何をしようとしているのかはわからない。よく見れば、髪が少し周りの人より太い気がした。その人物は、オブが声をかけたことで彼女の方に振り向いた。


「何って、幸福の薬を打ってあげただけさ。こんな時間に暗い顔して歩いている人なんて、幸せになりたいと願っている人だろう?」


 オブは自分勝手な奴だと思った。そして、話し合いでは絶対にわかりあえない性格だというのも理解した。しかし、町中と言うのもあり、すぐには手を出さない。彼女はじっと相手を見つめた。その間に、相手の後ろにいた通行人が倒れた。どさりと大きな音がしたが、その人を助ける人はいない。その道にいるのは、緑の人と、オブと倒れた人だけなのだ。オブが助けない限り、倒れたままだろう。


「何も用がないなら、僕はもう行くよ。じゃあね」


 相手はゆったりと歩き、路地の中へと移動していく。オブは相手をおい、路地に入った。誰にも見つからなければ、戦える。彼女はそう思った。曲がり角を曲がったところで見失う。そう思った矢先、見た目は同じなのに、背丈は今までの半分の緑の人がいた。


「なんだ? 仲間か。オレは子供でも、悪い奴にゃ容赦しねぇからな」


「子供ではないよ。僕は本体から分裂しただけさ。まぁ、僕を倒しても本体には傷一つ付かないけど。君はこれ以上進ませない」


 オブが一歩踏みだす。その瞬間、後頭部に衝撃があった。その不意打ちに抵抗できず、前のめりに倒れそうになるのを足で堪えた。しかし、正面にいた分体が近くにいた。その手には注射器を持っていて、その針の先がオブの手に突き刺さっていた。彼女がそれを認識した時には既に、中身が体内に注射されていた。


「くっ」


 オブは腕を振り払い相手の注射器の針を折る。皮膚に突き刺さった針を抜いたが、既に薬品は体内へと入っていた。彼女の視界がかすむ。


「大丈夫だよ。殺さないから。まぁ、追って来られると困るんだ。朝には起きれると思うよ。じゃあね」


 相手のその言葉はあまり上手く聞き取れず、彼女は視界が閉じられる。彼女は荒い息で眠ってしまった。




「見つかってしまったよ。サジタリウス」


「隠密の技術は教えたじゃん。まぁ、幸福薬の接種者は増えてるし、いいんじゃない?」


 町の一つの家の屋根の上。そこに、先ほどまでオブが追っていた者と茶色のマントに身を隠した男がいた。言葉には軽さしかない。適当に喋っているようにしか思えない。しかし、相手の言葉をどうでもいいと感じているのは緑の服の女も一緒だ。二人はどちらも、他人の話を受け入れないし、他人を慮るというようなこともしない。


「じゃあ、ボスのところに戻るか」


 マントの男は後頭部の辺りで手を重ねて、気楽そうに片足を放り出した。


「そうだね。戻ろ」


 屋根を伝い、二人は夜の下を走りぬけた。




 サクラ、フロー、ラピスは三人並んで、町を歩いていた。彼女たちが見る光景は昨日とは変わらない。オブが戦っていたこと跡は少しも残っていないのだ。そして、参院はいつものように町中を楽しそうに歩いている。そして、彼女たちの近くの路地でオブが目を覚ました。


「……ん」


 薄く目を開けたところで、強い光が彼女の目に入る。顔をしかめて、彼女は身を起こす。こんなところで眠ってしまったのを不思議に思う。そう感じてしまうのも無理はない。彼女にはこんな場所で眠ってしまった理由も思い出せないのだ。ライフリキュアで飲んだ後、金を張らって店を出たのは覚えている。しかし、それ以降の記憶がない。脳の奥で静かな痛みがあった。自分の身に何かあったのは間違いない。だが、記憶がない以上、その何かについて知ることは出来ない。彼女はもともとそういったことは忘れるたちだ。しかし、今回のことは覚えているべきことだったのではないかと、心が伝えている。何か、悪い予感がするのだ。


「あー、くそ」


 彼女は片手を顔の半分を覆うように手を置いて、悪態をつく。何かに八つ当たりしたい気分だった。彼女はイライラしながら立ち上がった。そして、路地から出てギルドへと向かった。


 ギルドへ向かった彼女はナチュレに緊急の依頼や、変な依頼はないかと問うた。彼女も冒険者の一人なのだ。だから、ナチュレもそれに答えた。ここらでは見ない魔獣の増加、いきなり暴れ出す市民の取り押さえ、悪事を働いた人の怪我の治癒、突然無気力になる症状の原因の調査など。他にも依頼の件数の増加が異常であること。オブにはそれだけ聞いても何が自分の記憶の欠落と関係あるかはわからない。しかし、直感的には無気力の症状と言うのが気になった。頭の奥の鈍痛が関係あるような気がするのだ。彼女はナチュレに礼を言って、ギルドを出た。ナチュレは少し不思議そうな目で、彼女の背中を見ていた。

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