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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
8 乱暴者の冒険者
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帰宅して

「サクラっ。大丈夫だったのか……?」


 町に入ると、そこには焦った表情のメイトがいた。サクラは天使の腕の中で、彼を見ていた。サクラは降ろしてほしいと思ったが、降ろされたらまだ一人では歩けないだろうと思い、言い出すことは出来なかった。フローはサクラを心配するメイトに訝し気な顔を向けた。彼女はこんな可愛いサクラに声をかける男性は怪しい奴だと思っていたが、サクラの表情を見るに悪い奴ではないのだろうと蹴りつけるのはやめた。そんなことなど全く知らないメイトはサクラの体をじろじろとみた。大きな怪我は見当たらない。擦り傷や、小さな切り傷はあるが、一週間も休めば完治するような怪我ばかりだ。治癒師に世話になるほどではない。


「まさか、ドズと戦うなんて。死ななくてよかった」


 メイトは胸に手を当てて安堵していた。無事とは言い切れないが、大怪我でもないのだ。メイトはドズに挑んだり挑まれたりした奴は必ずと言っていいほど、大怪我して返ってくる。彼と戦った三割ほどの者は死亡している。挑んだ者たちは決して弱くはない。それでも、彼に勝てた者はいなかったのだ。いくらサクラが強くても、ドズに勝てるという確信はなかった。だから、ギルドでドズとサクラが戦っている等情報を聞いたときは、時間が止まり、心臓を掴まれたような気持ちになった。


「できれば、あまり危険なことはしてほしくないな。依頼くらいは一人で解決できるかもしれないが、決闘は出来れば避けてほしい」


 サクラはメイトの真剣な視線を受けた。そこに自分を確実に心配しているというのは理解できる。しかし、この大切な友を奴隷と言った愚か者をぼこぼこにしないと気が済まなかったのは事実だ。最後にはフローの力も借りてしまったが、それでも、ぼこぼこにできたと思う。


「ごめんなさい。それは無理です。私は、友達を貶されてじっと我慢できるほど、大人じゃありませんから」


 まだ子供の見た目で中身も二十歳にもなっていない子供が何を言っているのかと、彼女自身それを自覚していたが、口から出た言葉は本心でもある。メイトはその言葉を完全に理解したわけではないが、彼女に言って聞かせることは無理だろうと思った。だから、それ以上はメイトも何も言わない。フローはそれを話の区切りとし、サクラを抱いたまま歩き出した。メイトはその様子を天使の後ろから見ているだけだった。




「レオの契約者も倒したようだね」


「うん。中々、強いよ。彼女は」


 メイトに話かけていたのは、ウェットブルーのマスターのカイトだった。彼の腕には買い物した食材が入っているであろう紙袋が抱かれていた。


「もうこの鍵を渡してもいいかもしれないね」


 カイトの手に握られているのは二本の鍵だ。その鍵の摘まむ部分にはとあるマークが描かれていた。円の上にブイの字がくっついているマークと左右の円から反対方向に緩やかな孤を描いているマーク。それはサクラの持っている鍵と同じようなものだ。違うのはマークだけだ。カイトとメイトはその鍵を見つめていた。


「カイト、一つは僕が渡すよ」


「ああ、うん。わかった。キャンサーを渡すから、よろしく」


 メイトが受け取った鍵のマークは左右にマークがあるものだ。彼はそれが大切な物だとわかっているので、なくさないように握りこんでいた。それから、二人はウェットブルーへと並んで歩いていく。




 サクラとフローはギルドにはいかず、サクラの部屋に戻ってきていた。サクラが戻ってくるとすぐにラピスも来た。フロー戦の時よりはぼろぼろではないにしろ、傷だらけであるということは間違いない。


「怪我するようなことはしてほしくないのですが、今度は何と戦ったんのですか」


 ラピスは表情こそ変えないものの、明らかに心配している様子だった。彼女はまた例の灰色の液体を持ってきて、それを彼女の体に塗っていく。サクラは少し申し訳なさそうにしながら、今日起こったことを話していた。ラピスは何も話さず、サクラの言葉を一言一句聞き逃さずに聞いていた。話が終わり、応急処置も終わる。ラピスの表情を読めない。彼女は身を乗り出して、サクラに近づく。サクラは怒られると思って目を瞑る。危ないことをするなと言われているのに言うことを聞かなかったのだ。叩かれるかもしれないと思った彼女の予想と反して、ラピスは彼女の優しく抱いた。サクラは驚いて、何も言えない。何もできない。


「貴女が傷つくのはもう仕方ないと諦めます。でも、この部屋に必ず戻ってきてください。私が必ず、治します」


 その声にはこれ以上ないくらいの優しさが含まれていた。サクラの瞳には涙が浮かぶ。その涙を抑えることは出来ず、彼女が静かに涙を流した。ラピスの肩に涙が染み込み、そこに熱を感じる。ラピスはそれがとても心地よかった。サクラが目の前で生きている証拠の一つな気がする。そして、少しでも彼女のために何かをしたいと思わせた。

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