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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
7 乱暴者の冒険者
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驕る天使 3

 先に動いたのはサクラだ。天使は動く気はなさそうで、走って近づいてくるサクラを見つめている。天使は剣を振り、その剣先を彼女に向けた。サクラはそれくらいで、自らの行動を変えることはない。真っ直ぐに天使に突っ込んでいき、その拳を叩き込もうと考えているだけだ。天使の攻撃は考えの中に入っていない。


「真っ直ぐ突っ込んでくるだけか。強いと感じたのは、その魔気の量か。技量は大したことないな」


 サクラが剣の射程範囲に入ると同時に、剣を素早く振るう。サクラには認識できていない。剣が体に触れる寸前で、剣の面に触れるように手を出して、剣を滑らせた。横に凪いだ剣を後ろへと流しても相手との距離は大して変わらない。しかし、サクラはそこから一歩踏み出す。拳を下から斜め上に付きだした。相手の胴を捕らえる軌道だったが、その拳が当たることはなかった。天使はその翼を広げて、空へと移動していたのだ。サクラには空を飛ぶ技術はない。


 そこで彼女は体の違和感に気が付いた。違和感と言っても、いつもよりもかなり調子がいいという物で、悪い感じはしない。彼女にそれを自覚するのは難しいことだったが、それが彼女の超能力だった。自身の身体機能を上昇させるという超能力。この世界では多くの人が持っている超能力だ。しかし、それと違う点としては、上昇させた身体機能は元には戻せない。元に戻らないのは体がその上昇させた能力に耐えうるように変化するからだ。その特性があるため、強化に上限はない。


 彼女は無自覚の内に、跳躍力を上昇させてしまう。体が跳躍の衝撃と着地の衝撃に耐えられるように変化する。変化と言っても見た目に変化はない。あくまで内部の構造が作り変わるというだけだ。跳躍した先にいるのは空を飛んでいる天使。天使は相手が空を飛ぶはずがないと高を括っている様子で、ただ彼女を空から見下ろしている。しかし、彼女の跳躍を見て、すぐに剣を構えた。跳んだ瞬間には自分のところへ到達するとわかったのだ。翼が無くとも、その高さまで来れることに驚いた。しかし、その驚きは彼女の動きには出ない。


 サクラはただ、跳びあがって拳を叩きこもうとしたわけではない。彼女は不可視の風の刃を作り出して、それを天使へと飛ばす。着弾するかどうかも気にせず、次は水の球を数十発放つ。狙いを着けていないため、当たってもせいぜい数個程度。しかし、彼女の魔法は終わらない。続けて、火の柱を天使に真っ直ぐ伸びるように出現させる。その火の柱は天使を囲うように円状に繋がる。平面で見れば、逃げ場はないが、空中で一面だけ囲っても意味はない。天使はその場所からすぐに逃げようとした。しかし、それは出来なかった。発射され、ほとんど外れたはずの水の球がそこかしこにある。広げた大きな翼がある限り、球の隙間を抜けることは出来ないだろう。天使が逃げる経路を考えている間に二つ目の火の輪が完成している。元あったものと十字になるように設置された。逃げ場がまた失われていく。


 天使は武器だけで勝てる相手ではないと悟る。腕試しと言うのだから、本気で行動しても耐えてくれるかもしれない。彼女は真ん中に空間を開けて、両掌を向かい合わせにした。


「風よ。輪を広げ、魔を祓え。ウィンドフロウ」


 天使の掌を合わせた空間に緑色の球が出現し、その風の球が天使を巻き込んでおきくなっていく。円の火もかき消され、水の球も消失する。不可視の風の刃も消し飛んだ。天使の魔法が無くなると、そこにあった全ての魔法が無くなっていた。その魔法の風に押されて、サクラは地面に落とされていた。しっかりと足で着地して、空を見上げた。天使は翼をゆっくりと閉じて、地面に降りてきていた。空を飛んだり、地面に降りたりと面倒くさいなと思いながらも、それによって消耗しているのだから、結果的に削られているのだ。


 サクラはこの天使がメイトよりも強家も知れないと思った。あの冒険者が勝てないのも無理はない。しかし、サクラも負ける気はないのだ。彼女は強化された跳躍力で地に降りた天使の元へと跳ぶ。一瞬で天使の前へとたどり着く。天使もその速度についてこられない。サクラは着地と同時に、体を捻る。勢いをつけた拳が回転により、さらに勢いがつく。その拳を相手の顔面目掛けて、放つ。天使は回避しようにも間に合わないことを悟る。彼女は動かず、その拳を顔面で正面から受けてしまった。綺麗な鼻から血が垂れる。そんな状態でも、天使は倒れることはなかった。かなりの威力があったはずだが、それでも彼女は気丈に立っている。そして、それを止めとしたかったサクラはすぐには動かなかった。彼女の中では既に勝利が確定していたのだ。一瞬だけの硬直だが、天使は剣を叩きつける。サクラは寸前でそれを回避できたが、体のバランスが悪い。次の行動の準備ができない。天使が一歩踏み出した。剣先を彼女の腹目掛けて突きだした。

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