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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
6 生活するには
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初めての報酬

 二人はボロボロになりながらもギルドに帰ってきた。扉を開いて、中に入った。メイトはサクラを連れて、受付まで連れていった。受付にいたナチュレが二人に気が付いたが、特に感情に変化は見えない。


「お疲れ様でした。最終討伐数はどれくらいでしたか」


「わからない。この袋の中に入ってるよ。後で数えるから。それとウルフェンリーダーも討伐したんだ。僕じゃなく、サクラがね」


 結局、魔獣の回収はメイトの持つ運搬用の布袋に入れた。見た目は一匹も収まらなさそうな袋だが、そこに倒したウルフェン全ての死骸が入っている。冒険者や商人の必需品の拡張袋という物らしい。もちろん、彼女はそんなものは知らない。この報酬で買おうと思っていた。


「メイトさん。嘘は良くないっすよ。リーダーの討伐が二人でできるはずがないって」


 冒険者の一人が、メイトの肩に手を置いて、そんなことを言っていた。彼は一度だけ、本当だよと言った。それでも食いついてくる冒険者に答える必要はないと言ったような態度で、サクラに報酬のほとんどを渡した。さすがに町長を助けたときにもらった報酬よりは少ないが、それでも生活に困らない程度の稼ぎだ。彼女はその袋を貰って何を買おうと考えていたが、メイトの短剣が砕けていたのを思い出した。


「メイトさん。短剣、買わせてください。今日のお礼をしたいんです」


「いや、それには及ばないよ。家に予備があるからね。それに僕にもちゃんと報酬があるから、大丈夫だよ」


 彼は優しく笑い、彼女の申し出を断った。サクラも大してそれを気にしていない。彼が大丈夫だと言っているのだから、大丈夫なのだろう。


「はっはっは! オレの勝ちだな。掛け金全部貰うぜ」


 冒険者ギルドの一画がかなり騒がしくなっていた。サクラはどこか聞き覚えのある声だと思ったが、その声の主を思い出すことが出来ない。彼女は騒がしい方へ移動すると、そこには一度だけこの町で会った金髪の女性がいた。彼女もサクラに気が付いたようで、手を上げて彼女に挨拶した。サクラはオブシディアンに近づいていく。


「オブシディアンさん! 久しぶりですね!」


 サクラは嬉しくなって、満面の笑みで少しだけ彼女に顔を近づけて話していた。オブシディアンもそれが嫌ではないのか、歯を見せて豪快に笑っている。


「オレに強そうとか言っといて、あんたの方が強いんじゃねぇか? そうだ、この後、予定内なら、居酒屋行こうぜ。サクラのお陰で結構な金が入ったからな!」


「あ、いいですね。お酒は飲めませんが、ご飯は食べたいです! お金も今は沢山ありますし」


「あ? オレのおごりに決まってるだろ? パーッと行こうぜ!」


 オブシディアンはサクラの肩に手を置いて、その方を優しく押すようにして、ギルドを出ていった。残された冒険者な納得いかないような表情をしていた。ウルフェン数十匹とリーダーの討伐。それを彼女が成し遂げたというのは信じられないのだ。ウルフェン数十匹であれば、メイトの功績で納得できるのだが、リーダーの討伐ともなれば、メイトであろうと信じられない。現にリーダーの死骸があり、それが証拠になっている。討伐したのは間違いないのだ。冒険者たちには不満はあるし、納得は出来ないが、証拠があるのだから、反論は出来ない。彼らは結局そのもやもやを抱えたまま、ギルドから出ることになったのだった。




 サクラとオブシディアンは、二人で前にきた居酒屋まで来ていた。今日も快活な笑みを浮かべて店主が二人を歓迎していた。この前と同じ席について、オブシディアンが酒と適当な肉料理を頼み、サクラもそのまねをした。オブシディアンには酒が出たが、サクラにはさすがに酒は出てこなかった。その代わりと言うことなのか、ジョッキにオレンジジュースのような液体が注がれていた。器だけはオブシディアンと小呂沿いにしてくれたらしい。店主は何も言わないが、サクラにウインクしながら、サムズアップしている。彼女もそれに応えるように同じポーズをして、お礼を言った。彼はそれに満足そうにまた料理作りに戻った。


「それにしてもよ。あんた、ウルフェンリーダーまで倒したのか。すげぇな。まぁ、オレもできないことはないけどな」


 白い歯を見せるように口角を大きく持ち上げて、男らしく笑う彼女はイケメンだっただろう。サクラはその笑みを素敵だと思った。もし彼女も冒険者なら一緒に仕事をしてみたいと思った。


「オブシディアンさんは冒険者じゃないんですか」


「あー、一応登録はしてる。割りのいい仕事以外はしてねぇけど。なんだ、オレの仕事してるとこ、みてぇのか」


「すぐにってわけじゃないですけどね。今日はハードでしたから、少し休みたい気分です」


「子供が何言ってんだ。ま、休むのも大事だな。はは」


 彼女は肉をほおばり、それをおいしそうに食べている。サクラも料理を味わって食べている。オレンジジュースのような液体は甘く何かの果物のような味がしたが、それがオレンジではないということ以外はわからなかった。


 その後、二人は満足するまで、談笑しながら食事を楽しんだ。今日も美味しい料理で満足だった。最後に店主にお礼を言ってお代を払って、店を出た。前に来た時より清々しい気持ちだった。そして、オブシディアンはまたサクラを家まで送った。


「またな。サクラ」


 別れる前に、オブシディアンは彼女の頭を乱暴に撫でる。しかし、痛くはなく、髪が乱れる程度だ。


「はい! またです。オブシディアンさん」


「あ、そうだ。それ長いだろ。オブとか、ディアンとかって呼んでくれ」


 彼女はなんだかそれが嬉しかった。


「じゃ、じゃあ、オブねぇって呼んでもいいですか」


「ああ、構わねぇぜ。じゃあ、またな。サクラ」


「はい! オブ姉!」


 頼れる姉が出来たような気がして、彼女はうきうきで部屋に入った。その日は彼女は疲れもあって、気持ちよく眠った。

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