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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
1 ミラクルガール サクラ
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町の裏に潜む者

「少し待っていてください。服を買ってきます」


 サクラは誰もいない路地に彼女を残して、服を買いに路地を走って出た。彼女はすぐに戻るつもりだから少しくらい放置していても大丈夫だと考えていた。しかし、顔女はゾディアックシグナルの支配を受けていた人物でもある。支配から抜け出したのは彼女を支配していた人物にも伝わるとは考えていたなかった。サクラはそこまで気が付くほど精神的にも大人ではない。


「タイミング悪かったなぁ。まぁ、いいか。マジカルガールが馬鹿でよかったぜ」


 しゃがみこむ彼女の耳に何者かの声が届いていた。その声には聞き覚えがあった。


「よぉ。まだあんたの欲は満たされてないだろ? さぁ」


 何かに心が引き寄せられる感覚。彼女じゃそれに身を任せたくはないはずなのに、そこには強制力があり、心はその引力に従っている。心がそれに従っているのだから、それが自分のしたいことなのかもしれないと、意志が歪められる。そして、その声の欲と言うものを思い出す。老いたくないという欲が彼女の心に溢れた。彼女はその欲に従う。すると、自分の格好に恥ずかしさが無くなった。自分は何を恥ずかしがっていたのかという疑問さえ浮かぶほどだ。そして、サクラが戻ってきたときには既に彼女の姿はなかった。




「全くどこに行ったんでしょう。まぁ、頼れる人のところに行ったのかもしれませんし、探しても見つからないということはそう言うことかもしれません。納得しましょう」


 彼女は独り言を自分の心に言い聞かせて、多少心配はあるが、人助けは出来たとな得することにした。それから、彼女は町で食材を買って、アパートの一室に戻ることにした。幼い彼女でも借りることが出来るアパートだ。他の住人も何らかの事情がある人ばかりで、住人同士仲良くすることには何の問題もないが、自ら他人の事情を訊くのはタブーとなっている。それが一番守らないといけないルールだ。その日は特に他の住民とすれ違うこともなく、自分の部屋に辿り着いた。少し疲れた様子で、誰もいない部屋にただいまと声をかけた。もちろん、返事は返って来ない。それが少しだけ寂しいと感じながらも、彼女は今買った食材を使って夕食を適当に作り、食べた。それから寝る前に風呂や歯磨きなどをして、彼女の一人分のサイズのベッドの中で眠った。




「すみません。まさか、あのちびっこがマジカルガールだったなんて思わなかったものですから」


「次、やってくれればいいっての。それより、ほらこっち来いよ」


 サクラの住んでいる街のどこか。地下かもしれないし、どこかのマンション一室かもしれない。しかし、きっとその場所は誰にも見つけることは出来ないだろう。その部屋で、サクラが倒し、逃がした女性がそこにいた。彼女の前にいるのはひょうたんを逆さまにして、そこから白い液体を飲んでいる白い肌の綺麗な女性だ。なぜか、その女性は下着のみを着用していて、胸は垂れ下がる茶色の長い髪で隠れていた。近くに呼ばれた女性は、裸の女性の隣に移動する。彼女に断ってから、彼女の隣に座った。すると裸の女性は水着のような恰好の女性の鎖骨に人差し指の腹を当てて、その指を胸の谷間を通って、腹をすっと撫でた。女性はくすぐったさを耐えるかのような声を漏らしている。それを女性は愉しんでいるように見つめている。その指で彼女の横腹を撫でたり、首筋を撫でたりして、その反応を愉しんでいるようだった。それを何度か続けると、女性は満足そうに指を離した。ようやく解放された彼女は、息を荒くしてその場に力を抜いて倒れてしまった。倒れた先には女性の太ももがある。しかし、女性は彼女が倒れるのを気にする様子もなく、彼女を太ももで受け止めていた。


「人ってのは、どこでも相手を感じられていいな」


 女性は彼女の髪を撫でながら、ひょうたんを傾けて、今度は透明な液体を口の中に流し込み、また満足そうに息を吐いた。




 誰にでも親切にするサクラだが、彼女は誰にも言っていない秘密があった。そもそも、幼い彼女が一人で生活していること自体が異常ではある。この世界に彼女の良心も友もいない。つまりは他の世界にはいるのだ。彼女はこの世界に召喚された現代日本人だった。誰にも見せてないが、彼女の家にはスマートフォンもある。サクラは元高校生二年生だ。だから、各教科の教科書や板書やメモをまとめたノートもある。それを誰かに見せたことも見せる気もないが、それらが彼女が召喚者である証拠だ。学校に行こうと、玄関を出たら、この世界の草原に独りぼっちでいたのだ。それが一か月前の話だ。

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