(蛇足) 先の話は
オフィウクスとの戦いが終わり、ミラクルガールたちは日常に戻ってきていた。あの戦いの後、最後の戦いを見ていたメイトとカイトが五人を労うお疲れ様会のような物をウェットブルーで催した。カイトはウェットブルーで注文できる軽食以外の料理もできるようで、五人のバラバラの味覚を満足させたようだ。
「サクラ、仕事をしに行こう」
翌日、オフィウクスとの戦いを終えたというのに、フローは元気にサクラの家でそう言った。だが、サクラは未だに体の負担が無くならないのか、動く気がないのか、リビングであおむけに寝たまま、視線だけフローに向けていた。もはや、ぐうたらしているといった様子だ。
「フロー。今日は良いじゃないですか。昨日はあれだけ戦ったのですから。今日はお休みしましょう」
ラピスはサクラの隣で正座をして、彼女に膝枕をして、サクラの頭を撫でていた。彼女は喉乾いたと呟くと、彼女の口元にストローのような物が入ったコップを口元に持っていく。彼女はそれを使って水を飲んでいた。もはや、ぐうたらもいいところである。それもしかないことなのかもしれない。そもそも昨日まで頑張りすぎていたのだ。元の世界の彼女はそこまで頑張るタイプではない。そこそこ努力してそこそこの目立たない結果を出して、無難に過ごしていたのだ。それをこの世界に来て、この町を救うために、子供を演じながら、オフィウクスたちと戦ったのだ。燃え尽きていても仕方ないかもしれない。
「邪魔するぜ」
フローの後ろからオブが中に入ってきた。彼女は片手に、酒瓶を持っていた。
「おーおー、だらけ切ってんじゃねぇか。よっと」
彼女はだらけ切っている彼女の隣に座り、酒瓶を床に置いた。そして、キュポンという音を立てて、酒瓶に詰まっていた栓を抜く。そして、酒瓶を傾けて、酒を煽る。
「かっ、あーー。うめぇー」
彼女もサクラほどではないにしても、だらけ切っていた。そして、そんな三人を見て、フローは彼女たちを部屋の外に連れ出すのを諦めたのか、彼女も三人の近くに座りこんだ。
「ふぅ。まぁ、いいか」
一息ついて、彼女は背を壁に預けた。だらけ切っているサクラと言うのは珍しい。こんな子供らしく可愛い彼女を見る機会もないかもしれない。そう思うと、今日はゆっくりしてもいいかもしれないと、自身の欲望に負ける理由を作ったのだ。彼女が座って少し経った頃に、部屋のドアが叩かれた。
「空いてますよー」
サクラが部屋の外にギリギリ聞こえるような声量でそういった。もはや、不用心と言う他ないが、不審者が入ってきても、ミラクルガール四人に勝てるような強者はいないだろう。ドアの開く音がして、部屋の中に入ってきたのはヘマタイト。部屋の固形を見て、彼女はぎょっという表情をした。あれだけの戦いをしてきた人たちが全員が一様にだらけているのだ。輝いている時期しか知らない彼女が驚くのも無理はない。だが、四人のその姿にもすぐに慣れた、と言うよりは、元引きこもりとしては、その様子の方が親近感がわくのだ。彼女はオブの隣に足を延ばして座る。オブが酒の飲み口を彼女に向けたが、ヘマタイトは両手を振って、それを拒否した。さすがに、この時間から酒は飲めない。彼女が元引きこもりだが、酒飲みでは無いからだ。
五人がだらけているのを、窓から差す光が照らしていた。それはもしすると、皆が望んだ日常と言う奴なのかもしれない。
ミラクルガールたちの話はこれで終わりです。
思ったよりも長くなった気がしますが、最後まで書ききれてよかったです。
少しでも楽しんでもらえたのなら幸いです。
既に次回作の投稿予約はしてありますので、
良かった読んでみてください。
次回作 → 「決定的に何かが違う世界でも」
宜しくお願いします。