煌めきも輝きも 6
サクラが先に動き出す。彼の足を狙い、細身の剣を突き出した。オフィウクスはそれを足を避けて回避する。突き出した剣を横に振るうが、彼は空に立つような角度で回避する。上下反転した状態で、彼はサクラに剣を振るう。彼女はそれを弾いたが、彼はそれに負けず、二撃目を放つ。弾かれた力に反発するように、腕を動かして、真上から剣を振り下ろす。サクラからすれば、真下から剣が来ることになるが、彼女にはそれが錦できているので、それを防ぐことが出来ていた。相手の剣を防いだが、彼は剣を引かずに、彼女に剣を押し付ける。彼女は意図的に、その勢いを受けて、後ろに下がった。彼の剣が下がる前に彼女が前に出る。空中でも一歩踏む混むようにして、上下反転している彼に剣を振り下ろす。彼は剣が振り下ろされるのと同じ宝庫に回転して、上下反転して元に戻る。回転している間に、更に剣を振るう。だが、それも当たらず、彼は軽く回避していていた。
彼女は諦めずに、何度も何度も彼に攻撃し続ける。どの攻撃も当たらないが、それは彼も同じだ。いくら剣を振ろうとも、どちらにも剣がぶつかることはない。
「ここまでついてくるとは思いませんでした」
彼は先ほどよりも疲れた様子だった。それに対して、サクラは先ほどとあまり変わらない様子だ。疲れはあるだろうが、彼ほどではない。
「私はあなたに勝つんです。そのためにはこれくらいはしないといけないんです」
彼女の戦意は下がるどころか上がっている。それが彼女の表面に疲れが見えない理由だろう。
特に深く語るでもなく、再び二人は剣を交える。剣劇の音や息遣いが聞こえるものの決着がつく気配はない、既に太陽も傾き始めている。
「くっ」
「はぁっ」
剣を交え続け、二人の息は上がっていた。そろそろ疲れもピークに達しようとしているところで、二人は見つめあう。そして、お互いに頷いた。
お互いに剣を横にして、そこに剣を持っていない方の手を添えた。そして、二人とも同じタイミングで目を閉じた。目を閉じると、二人の体が光り始める。その光はそれぞれの体の輪郭に沿って、循環するように流れる。その光の流れには剣も巻き込まれていく。そして、その力が剣にも宿る。最初は淡く光っていた剣が次第にその光を強くする。二人は目を開けて、剣を構える。剣が発する光に二人の体が照らされている。二人以外からはほとんど光りしか見えないだろう。
「天に光る星の煌めきをっ!」
「天に光る星の輝きをっ!」
声を揃えて、そう叫ぶ。その声に呼応するように、剣に宿る光が強くなる。もはや、二人以外はその姿を見ることは出来ないだろう。世界から音が消えたと思えるほどの緊張感。次の一撃に、全てを込めて。同時に前に出る。リーチで言えば、オフィウクスに有利だったかもしれない。だが、もはや光の剣の前にはその優位は些細なことだっただろう。一瞬剣同士がこすれるような音が聞こえて、辺りに強風が吹く。いつの間にか、二人の位置が入れ替わっている。オフィウクスから光が抜けて、輝きを失った。そして、彼は地面へと落ちていく。サクラの体からも光は抜けているものの、その体には未だに煌めきは残っていた。サクラは振り返り、オフィウクスが落ちていくのを見ていた。だが、それも長くは続かずに、彼女も煌めきを失って、地面へと降りた。地面に足が着くと、彼女は片膝を地面に付けてしまった。これまでの疲れが一気に体に現れて、負担がかかっているのだ。それだけの力を使ってしまったのだ。
膝を付いた彼女に他の四人が駆け寄ってくる。彼女の周りに駆け寄り、彼女を心配していた。さすがの彼女も皆に笑いかけるような元気もない。それでも彼女が顔を上げた。すると、皆が彼女に手を出して、彼女を助けようとしていた。彼女にはその手を取るだけの手はない。それが、何か面白くなり、笑ってしまった。笑う体力もないと思っていたのだが、皆の顔を見ると、多少なりとも元気が出てきた。いきなり笑いだした彼女に四人は驚いたような顔をしていたが、次に瞬間には彼女が少しでも元気が出たと思い、安心していた。
「……さ、さすがでした……。わた、しのま、けですか。はぁ」
五人が集まっている外でオフィウクスが一人で立っていた。立ってはいるが、もはや何もできないでいと思えるほどに疲れているようで猫背で片足立ち、それもギリギリ立っているかのように体が震えていた。彼はそんなボロボロな状態でも、虚空を見上げていた。
「……なんと、いうか、ここまでしてかてなかった、と、いうことは、なんと、いうか……すがすがしい、ですね。ははは」
微かな笑い声は彼女たちには聞こえなかった。彼に敵意は感じなかったが、それでも油断できない相手であることは確かだった。サクラ以外はまだ警戒を解かない。
「もう、たたかえるわけが、ありません。わたしは、かえります。それでは、さようなら」
彼はそう言うと、片足を引きずっているというのに、近くの森のどこかに優雅に去っていった。そして、草原を鳴らす風が吹き、全員が彼から目を背けると彼は既に底にはいなかった。これで最後なのか、それともまた次があるのか。
「もう、彼はもう何もしないと思います。私たちの信念を彼に認めさせたんですから」
彼女たちが握っていた鍵にはいつの間にか、星座の力が戻ってきていたが、彼女たちは誰も気が付かなかった。激しい戦いは終わり、ミラクルガールたちは日常に戻っていく。