星座の力-オフィウクス- 2
オフィウクスは二本の槍を消失した。そして、彼の足元にはパイシスのマークが出現し、そのマークと共に彼は空へと浮き上がる。それと同時に、レオのマークも彼の足に現れた。そして、彼の頭上にいたヘマタイトに接近する。格闘術を使うオブでさえぎりぎりで反応できた速度だ。ヘマタイトがそれに反応できるわけがなかった。彼女は腹に拳を叩き込まれ、遅れて土の壁を生成する。だが、それが意味をなくことはなく、彼女が出した土の壁は彼の足や拳によって、破壊された。そして、その壁を破壊してもなお、勢いの止まらない彼の格闘術がヘマタイトを襲う。声も出せない程の連撃を食らい、彼女は空中に立っていることが出来なくなった。背中側から倒れるように空中から落ちていく。彼女が落ちるのと同時に、オフィウクスも彼女を追うように動く。彼女に追撃をしかけようとしていたのだが、彼はそこまで攻撃することは出来なかった。彼の動きに反応したオブが超能力で彼を抑えたのだ。
「厄介な庁能力ですね。ですが、何度も見せられては驚きもありません。対処も可能になっていきますよ」
彼は自身が超能力に捕まれた瞬間に、リブラのマークが出現して、彼女の超能力が使う握力が彼に近い場所から失くなっていく。彼は彼女の見えない手から抜け出して、彼の前にはカプリコーンの紋章が出てくる。次の瞬間には彼はそこにはいない。彼が狙ったのはサクラ。サクラの正面に来た彼はレオのマークを出現させたまま、手や足、体のあらゆるところを使って、連撃を繰り出したのだが、サクラの作り出す小さな、黒い土の壁で防御する。彼女はオブ以上に彼の動きに対応しているが、それでも彼女が集中してぎりぎりで対応している。オブより反応できるというだけで、オブよりも自身の体の使い方はうまくはない。彼女の格闘術がオブと同等以上の能力があるのなら、きっと反撃も可能だっただろう。だが、彼女がそこまでの能力はない。彼女が扱えるのは魔法だけなのだ。
「お前がサクラに触れるなっ」
そう言って突っ込んできたのは、ようやく戻ってきたフローだった。彼女は片手にハサミを持ち、もう片方の手には、彼女が振り回すには大きすぎる大きなランスを持っていた。そのランスを正面に構えて、サクラに連撃を繰り出していた彼に突っ込んだのだ。その大きなランスが彼にぶつかることはなかったが、あまりの大きさに彼も驚いていた。彼も驚くランスの長さは、サクラ二人分の身長より少し少ない程度の長さだろうか。背は低い彼女ではあるが、それが二人分となれば、その長さも相当なものだろう。そもそも、彼女が超能力で作ったものでなければ、オブでも持てない程の重さになっているはずである。
だが、サクラとオフィウクスの間に割って入ってからすぐに彼女はランスを振り回して、オフィウクスをサクラから遠ざけようとしている。彼もランスの餌食にはなりたくないため、攻撃範囲から脱出しようとしていた。だが、彼は逃げ切ることができなかった。逃げたつもりでいたが、彼女の振るうランスが更に大きさを変えて、彼を襲ったのだ。彼もそこまで予想できずに、横に振るわれたランスがぶつかる。だが、彼はそのランスで吹っ飛ばないように踏ん張ったが、その抵抗も無駄に終わる。結局は、足が地面から離れてしまえば、踏ん張ることもできない。この戦闘で初めて、彼は吹っ飛んだのだ。だが、彼にとってその程度のことは傷には入らない。いや、傷ではあるのだ。防御も間に合わなかったのだから、彼の体内に大きな質量を持ったものが体に衝撃を与えたのだ。骨は何本か折れているだろうし、内臓にもかなりの深刻なダメージを追っていたはずだ。油断していたからこそ、それほどのダメージが与えられたわけだが、彼にとってはその程度、と言えるだろう。
彼の頭上にアクアリウスのマークが出現する。そして、そこから水瓶が出現して、吹っ飛んで膝を付いている彼の頭の上から水瓶から水が掛けられる。水を出し切り水瓶が消失した。そして、髪から水を滴らせながら彼は立ち上がる。その姿には一つもダメージが無く、それどころか衣服についていた多少の誇りや土もなくなっていた。彼は完全に回復していた。
「やはり、予想外のことをされるというのは、試練に相応しいですね。ですが、予想を裏切ってくるのは、貴女だと思っていましたので、予想の範疇と言えるかもしれません。何にしても、この程度の攻撃で、勝利を確信しないことですね」
彼はフローを見て、そう言った。彼のいう通り、彼が吹っ飛んだ時点で、五人は自分たちが優勢になったと思ってしまったのは確かなのだ。しかしながら、彼女たちも彼がその程度で倒せるような人ではないとも考えている。彼女たちの戦意はその程度では削がれたりしないのだ。