五つ 2
「オフィウクス。五人、そろいました。ここからは私たちも本気戦えますっ!」
サクラは鍵の束を出す。そして、そこに残っていた数少ない鍵を全て、そこから取り出した。サクラはかに座の鍵を取ろうとしたが、どうせなら先ほど手に入れた鍵を使うことにした。その鍵はメイトが持っていた力を封じた物だ。彼の持っていた力はふたご座の力だった。それ以外の鍵をフローに渡して、彼女はふたご座の鍵を自身の胸に差した。鍵は光り出して、彼女の前で何かの形に変わろうとしていた。
そうしている間に、フローはサクラの使っていたかに座の鍵を手にとってすぐに自身の胸に差して、ハサミを出現させた。残りの鍵はラピスの手へと渡る。彼女はその中からいて座の鍵を取った。いや、彼女は度の鍵でも良かったのだ。適当に手に取ったものがそれだっただけだ。残りの鍵をヘマタイトの手の上へ。しかし、彼女はその中の鍵ではなく、カイトの持っていたうお座の力を封じた鍵を自身に差した。そして、残るオブは珍しく少し迷った様子だったが、彼女が手に取ったのは散々戦い、因縁の相手と言ってもいいであろうスコルピオが持っていた力、さそり座の力を封じた鍵だ。
それぞれが鍵を胸に差して、それぞれの前に光の塊が出現していた。それぞれが、何らかの形に変化していく。そして、サクラの前に出現したのはメイス。黄色を基調として持ち手の先にある太くなっている部分にはその部分を一周するように三つの円が描かれていて、その色が金色だ。サクラの頭の中にメイスの効果が感覚で浮き上がる。それを言語化するならば、魔法の威力を単純に倍以上にするという物だろうか。フローの前にはハサミが出現していた。最初はサクラが使っていたものだ。彼女がその武器を選んだのは、彼女が使っていたからと言うだけだ。今の彼女はその程度の武器であれば、自身で作ることが出来る。もちろん、かに座の力のこもったハサミその物を作り出すことは出来ないため、本物を使えるという高揚感が彼女の中に湧きあがっていた。
ラピスの前にいて座の力が宿った弓が出現していた。この世界でよく見る木製のものではない。とはいっても、それが何でできているのかは不明だ。ただ、鮮やかな緑のラインがいくつも引かれている弓だ。矢もない。だが、その使い方は彼女の頭の中に湧きあがる。弓を引けば、自動的に黄緑色に光る矢が番われて、弓を緩めれば、それが真っ直ぐ狙ったところに飛んでいく。そう言う物らしい。そして、弓を上下に引けば、その中に刃が仕込まれているようだった。ヘマタイトの前に出現したのは、銀色の首から下げるアクセサリーだった。ネックレスの先には楕円形で、鱗柄のペンダントのような物がついている。その効果は、空中を自由に動けるようになるという物。それ以外の効果はないものの空を移動出来ない彼女にとっては、かなり使い勝手のいい効果かもしれない。最後のオブの前に出現したのは、手にはめるプロテクターのようなものだった。見た目には彼女の手が入りそうもないものだったが、彼女がそれをはめようとすると、彼女の手の大きさに合わせて伸縮する。彼女が手を前に出すまでもなく、そのプロテクターが彼女の手を自らの中に収める。その効果は、認識している攻撃を回避するというものだ。彼女の戦闘スタイルからすると、これほど自分にピッタリなものはないと思った。因縁の相手の力が最後には自らを助けるというのは、彼女の心を熱くした。
「準備は良さそうですね。本気を出していなかったから、勝てなかったんだ、なんて言われると面倒ですからね。全力で来てください。そして、この戦いに敗北したなら、もう私の邪魔はしないでくださいね。まぁ、そうできない程にするつもりではありますが」
彼の視線に冷ややかな、見るものを威圧し、委縮させるような恐怖が込められていた。だが、視線程度で怯むミラクルガールではない。
「ここからは、私も本気になろう。貴女たちと言う試練を乗り越えてこそ、私の計画はより完璧な形で成就するのですっ!」
オフィウクスは今までに感じたことのような興奮を感じていた。計画を目の前にしての強敵。これを乗り越えてこその計画。サクラが活躍していた時点で、ミラクルガールを倒すことを計画に入れていた。完璧な状態で計画を実行する。そして、完璧で平和な、よりよい世界を作る。彼の長年の夢の成就が近づいていた。
「みんな、これを最後にするつもりはありません。この戦いが終わっても、冒険者として、この町で過ごしていくんです。こんなところでやられるなんてことはありません。これを終わらせて、一緒に晩御飯でも食べましょう!」
大人のような子供のような、言葉をそこにいる四人は聞いていた。その言葉の最後の言葉は、いつもの彼女らしい。だが、それは皆が思っていることでもある。そして、彼女のその言葉で皆の士気は上がるのだ。