冒険者認定試験 2
サクラの魔法をぎりぎりで回避しつつ、前進するメイト。サクラは焦らず、相手を魔法に当てられるように、逃げ場を塞ぎながら、土の弾丸を打ち続ける。しかし、戦闘に慣れていない者と鳴れている者の実力差は頭脳だけでは埋まらないのは確かだ。メイトが徐々に距離を縮めてくる。彼は未だに攻撃はしていない。近づかれれば確実に攻撃してくるだろう。サクラは警戒していても、彼が近づいてくるのを止めることは出来ない。ミラクルガール状態でも、魔法だけでは彼には届かないのだ。魔法をいくら撃っても、彼に当たることはない。それに近づかれるだけだ。彼女は土の魔法をいったん止めた。メイトは一瞬で距離を詰めてきた。サクラはそれを予想して以下のように、拳を正面に叩き込んだ。だが、わざわざ相手の攻撃範囲である正面に移動してくるはずもなく、彼女の拳は地面を叩いた。多少、地面にひびが入ったがそれだけだ。メイトは彼女の横を通り抜けていた。そのまま後ろに移動して、彼女の頭の辺りに手刀を落とす。そこまで強い威力ではないものの、素早い一撃。サクラは後ろに来るのは理解していた。後ろに回っていたメイトは足元の火の魔気の流れの変化に気が付いてその場から跳んだ。その後に再び火柱がごうごうと燃えていた。先ほどよりも威力は強いだろう。冒険者になろうと言っている人が関単に勝てるような相手ではないか、とメイトは思った。未だ、油断は抜けていなかったのかもしれない。しかし、そんなことを考えている暇はなかった。火柱に目を引かれすぎていた。メイトの正面、サクラは身を屈めた状態で、既に拳を天に向かって伸ばし始めていた。
「ふっ」
目の前をサクラの拳が通り抜けた。体を逸らして、彼女の拳を回避したのだ。確実に顎を狙ってきていた。だから、体を逸らすだけで回避できたのだ。サクラは自身が彼に劣ると理解していた。そのため、攻撃が一度躱されただけで、攻撃を止めるような甘さはない。戦闘経験のほとんどない彼女はとにかく、力で押すしかないのだ。彼女は正面に火の球を三つ作り出す。二つは正面で体制を立て直しているメイトに向かって放つ。攻撃範囲は小さくとも、素早く飛んでいく火球。メイトは再びギリギリで回避した。メイトは三撃目を警戒して、横に飛びのいた。そして、彼はついに攻撃を開始した。試験官をするときは出来る限り攻撃をしないことという言われているが、この状況を続けていても、彼女の底を見ることが出来ないと踏んだのだ。
「土よ。ロックシュート」
彼の周りに、石ころサイズの土の塊が出現する。それらが、彼女の火球と同じくらいの速度で、彼女に向かっていく。彼女は追撃のために残していた火球をメイトの魔法にぶつける。火球が飛んでいく途中で分裂して、跳んでくる礫を撃ち落とした。メイトはその魔法に紛れて、全身する。サクラも考えることは同じだ。メイトは短剣を手に取り構えた。サクラが頼れるのは己の拳だけだ。変身したことによって、筋力や頑丈さが向上しているというのは助かった。彼女の拳と彼の短剣が激突する。拳にかかる衝撃に痛みがあったが、彼女は歯を食いしばって耐える。メイトも短剣が手から抜けそうになるのをぐっと握って耐える。もはや、彼女は新人冒険者とは言ってはいけない程の力を持っていることを理解できた。ここでやめてもいいが、彼はサクラの今の力を把握したいと考えていた。それがわかれば、受けられる依頼の難易度のギリギリも図ることもできるだろう。
「ここからは手加減なし。本気で来ないと怪我するかもしれない」
メイトは打ち合わせていた短剣を相手の拳から離した。拳が空を切る。距離を置いた彼は今までとは全く違った。闘気と言うかさっきと言うか、そういったものを感じる。肌が少しピリピリするような感覚がある。ミラクルガールになってもそれを感じるほどの実力差がある。力押しだけでどうにかなる相手ではないのかもしれない。しかし、まだ彼女には戦略や器用な技術などはない。とにかく、魔法と拳だけなのだ。相手が本気なら、魔法も際限なく使っても大丈夫なのかもしれない。この壁を壊してしまうかもしれないが、そうでもしないとダメかもしれない。何にせよ、彼女は強力な魔法を使う気ではいた。メイトが近づいてくる。彼女のところまで一瞬だ。短剣が既に彼女の頭を打とうとしていた。しかし、彼女はしゃがみこんでそれを回避した。そして、地面に触れる。その瞬間、彼女の周りの地面から、壁が出現した。いきなり壁が足元から出現したメイトは思わずよろめく。玄人の冒険者と言えど、いきなりでは回避もできない。土の魔気と言うのは一番動きが鈍く、流れが変わったのが認識しにくいのだ。だから、彼も認識できずに、攻撃を受けた。彼は体勢を立て直すために右足を無理やり自分の後ろに持っていき、重心を前に移動する。彼は倒れることなく体制を整えた。サクラの魔法はまだ終わていなかった。彼の居る場所がいきなり彼の体を持ち上げたのだ。




