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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
40 自在の翼
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自在の翼 7

 レオが彼女に向かって走ってくる。彼女はある程度の距離まではベルトの剣を振り回していたが、その剣の攻撃できる範囲より相手が近づいてきたところで、手元で再び年度に戻した。その時点で、翼や足を使って、彼から距離を取ろうとしても、逃げ切れるような距離ではなくなっていた。先ほどのように足を引っ張ら羅れて、動きを封じられるのがわかる。ならば、その距離で相手に捕まれないように戦うべきだろうと、結論づけた。


 レオはフローを自身のリーチに入ると同時に、地面を蹴って彼女に飛び掛かろうと、飛んだ。フローはそれを見ると同時に、ベルトの剣を粘土に戻さずに、別の武器へと変化させる。その武器は斧だ。木を切るようなものではなく、戦闘で使われる持ち手の部分も含めて、金属でできているものだ。緩い孤を描いている刃先とは反対には短い棘のような物が三つ、飛び出ている。彼女はその刃の付いている方を上にして、肩にかける。棒の部分を両手で握る。レオが彼女の寸前に迫るその瞬間に、彼女はその斧を上から思い切り振り下ろす。レオが到達する前に、彼の背中側かにその斧が振り下ろされた。金属と金属がぶつかるような重い音が辺りに響き渡る。フローは斧を振り下ろした衝撃で、体が上に持ち上がっていた。そして、斧の下にはレオが転がっている。かなりの重量の攻撃を受けた。空中にいた彼には回避する手段はなかった。彼女の斧の速度がもう少し遅ければ、その斧が振り下ろされる前に彼女の体を地面に叩きつけることが出来ただろう。


 レオは背中に受けた衝撃に脳みそが揺すぶられて、視界がぶれる。認識している景色が歪み、視界の色も多少薄くなる。しかし、それもすぐに直った。しかし、彼が顔を上げたときには既に二撃目の斧が振り下ろされたところだった。彼は再び、背中に衝撃を受けて、視界の一部が白い煙によって消されているようになった。視界だけではなく、頭の後ろの辺りで火花が散るような光景が見えていた。その感覚は久しぶりだった。その感覚を思い出したからと言って、身体能力が上がるわけでもない。彼が立ち上がれない間に、三撃目の斧が振り下ろされる。


 レオはその時、確かに超能力で体を硬化していたのだ。しかし、フローが与えた衝撃はその硬化では威力を減少させきることが出来ないどころか、衝撃は自身の視界を歪ませ、脳も揺らしていた。脳が揺れているせいで、体も思うように動かない。立ち上がろうとしても、手に力が入らない。


(油断した、と言うことか。いや、自身の超能力と借りている力を過信した結果だな)


 フローは四回目の斧を振り下ろす準備をしたのだが、彼が動かないことに気が付いた。いや、手は動いている。土を削りながら、立ち上がろうと、体を支えようと、もがているのだ。しかし、そうすることもできない程にダメージを当たえることが出来たのだ。しかし、それを嬉しがるということはない。この戦いはそれを目的としての戦闘だ。これがわかればそれでいいのだ。自分が強くなったかどうか。それがわかればいいのだ。そして、かつて負けた相手に勝利することが出来た。それも、自分に与えられた特別な力も使わないで勝ったのだ。


「これで、お互いに一勝一敗だな。次は私もミラクルガールの力を使って、全力で叩き潰す。お前も本気を出してかかってこい。それが最後の勝負だ」


 フローはそれだけ言って、倒れている彼から離れていく。レオは首だけ動かして、去っていく彼女を視界に移す。彼女に手を伸ばして待て、と言いたかった。しかし、そう言うことはなかった。言おうと思えば言えた。喉や肺が潰れているわけではない。全身に力が入りにくいというだけで、喋ることは出来たのだ。しかし、今彼女を引き留めても、自身が勝てるビジョンもなかった。彼女が最後の勝負を本気でやろうというのなら、その方が良い。両者がこれ以上ないくらいの全力で戦い、それで決着をつける。彼女の言ったことが彼の胸に熱いものを滾らせる。自身が本気の本気で勝てなさそうなのは、この世界でもたった一人なのだ。彼女がその実力があるのならば、負けても悔いはないだろう。


「レオ。久しぶりですね」


 彼の目の前に村人のような恰好をした男性が現れた。ベストに白い服、肌に張り付いているようなパンツに緑のブーツを履いている男だ。


「お、オフィウクス様。すみません、油断しました。この失態は……」


「無理して話す必要はないよ。私は、何も強制したことはないだろう? キミ自身のより良くする何かをしてくれればそれでいいんだ。だが、後悔はしてほしくはない。再び、彼女と戦うときは私のことを忘れてもいいよ。全力で、彼女とぶつかると言い。まぁ、負けてしまえば、キミのその力は彼女たちに渡ることになるだろう。それでも構わないんだ。キミが思うように戦ってほしい。これはレオの戦いなのだから」


 オフィウクスの言葉を、彼は一言一句聞き逃さないように集中して聞いていた。彼はオフィウクスの圧倒的な実力とその言葉に心酔している。そして、彼のその言葉は彼の心にある熱を数十倍に増幅させていた。


「はい。俺はフローライトに勝って見せます!」

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