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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
40 自在の翼
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自在の翼 6

 三つの風の球が三角形を作り、その中にレオが入っていた。レオはその場所から逃げる術を持っていない。空中でほんの少しであれば、体勢を変えることは出来るが、その場所から大きく移動することは出来ない。彼のジャンプが頂点に達して、落下しようとしていた。そして、落下が始まるタイミングと同時に、風の球からレオに向けて無数の小さな風の刃が放たれた。


 ここまで、余裕の態度を取っていたレオだったが、まさかそんな魔法が飛んでくるとは思わず、驚いていた。しかし、顔の前で腕をクロスさせて、顔にその魔法がぶつからないように防御する。そして、彼は全身に超能力を使った。魔法から身を守りながらでは、足で着地するなんて余裕はなく、彼は肩から地面に落ちた。大きな音と共に、地面に激突して、土が舞い上がる。彼が落ちた部分は彼の体をかたどった穴が空いていた。魔法は既に消失していた。


「ははは、驚いたな。こんなこともできるのか。さっき不意打ちを受けたばかりだってのに、俺も油断してたってことか」


 あれだけの強く地面と衝突していたのに、彼はふらふらすることもなく、その場に立っていた。しかし、彼の体の色が少しおかしな部分があった。体の一部が、光沢のない鉄のような色に変化しているのだ。それを見てようやく、彼に自身の武器が全く効かなかったことに納得がいった。


 彼の超能力は全身の硬化。それもかなりの衝撃すらも軽減できるほどの防御力があるようだ。きっと、ゾディアックシグナルのメンバーである以上は、通常の攻撃で貫通できるほどの硬度ではないというのは予想できる。しかし、今の魔法に対して、これだけのことをするのだ。意識の外からの攻撃は防ぐことは出ないのだろう。フローはどんな攻撃が来るか分からなかったために、全身にその超能力を使ったのだと予想した。その予想は間違いではない。レオの超能力以外でも、超能力のほとんどは使用者が意識しないと発動しない。レオの硬化の超能力も彼が使おうと思わなければ使えないのだ。


 フローが攻撃を当てるためには、獣人の持つ野性の勘や敏感な五感を搔い潜り、攻撃を当てなければいけない。そして、ゾディアックシグナルのメンバーである以上、生半可な攻撃は通じない。彼が超能力を使っていなくても、ある程度の硬さはあると予想していた。ミラクルガールに変身しているときも、ある程度の攻撃は自身の服を貫通してダメージを与えてくるなんてことはなかったのだ。星座の力を使っているということは、その程度は考えておいた方が良いだろう。


 フローは手にある粘土を変化させ、ベルトのような物を作った。手元にはグリップ部分があり、そこを握っている。それはベルト状の剣だった。彼女はその剣身をしならせる。鞭のようにはいかないが、それでも剣とは思いないほど薄い。レオはそれを見ても、何をしたいのか理解できなかった。まだ鞭の方が効果があるのではないかと思える。しかし、それが狙いの可能性もあると勝手に、レオは思考を巡らせていた。


 フローはその剣をしならせながら、自身の体に当たらないように振り回す。しなる剣が、辺りの草と枝を斬り、彼女が自由に動ける範囲が広がった。それを振り回したまま、レオに近づいていく。そして、それをレオにぶつけたのだが、簡単に弾かれた。レオはそれを掴もうとはしなかった。いや、つかめなかったというべきだろうか。ベルトのような剣身と言うのは、鞭よりも掴みにくいのだ。平らな面が多く、それを握ろうとすると、刃が手に食い込む可能性があるのだ。掌に超能力を使った場合、彼はそれを握ることが出来ない。硬化した部分はほとんど動かせなくなるのだ。腕や足などわかりやすい関節がある部分であれば、そこだけを硬化させずに、超能力のデメリットを気にしないように、コントロールすることは出来るが、指の関節など細かい関節が連なっているところは関節だけを残して、超能力を使うというのが難しかった。相手が硬化するまで待ってくれるというのなら、関節だけ残して硬化することが出来るが、相手の準備が終わるまで待つやるなんているはずもない。だから、彼はベルトのような剣身を持つ剣を弾くことしかできないのだ。手の甲や腕だけなら、関節を固定せずに超能力を使えるからだ。


 フローは相手に捕まれないということをわかり、その武器を振り回す。しかし、器用に振り回してはいるのだが、その剣に殺傷能力はほとんどないと言っていいだろう。彼女の攻撃は全く効果がないのだ。相手が掴めないというだけなのだ。それは彼女に有利と言うわけではない。その証拠に、彼は既に鞭の動きに慣れ始めて、彼女の方へと走ってきたのだ。

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