再開花 5
オブの周りにはサクラの出した風の魔法が充満していた。しかし、その効果はまだ現れていない。オブも自身の周りにそれがあるのは理解しているが、動かないことには何も起こらないと思った。だから、彼女は動きだした。相手の魔法がどうあれ、それが発動しないことには対処もできない。なら、動いてその効果を見ればいい。そう思ったのだ。
オブが動き出すと、風の魔法が動き出す。風の魔気が刃になり、オブの体に襲い掛かる。オブはその全てを認識することは出来ない。棒業する前に刃にぶつかったが、その場に留まることが出来た。しかし、耐え続けるというのはむりだった。彼女の足が刃の衝撃に地面から離れて、そのまま衝撃を受け流せなくなり、吹っ飛んだ。彼女は吹っ飛びながらも足から着地した。その時には既に風の魔法はなくなっていた。それで終わるはずもなく、オブは感覚で何らかの風の魔法が近づいてきているのがわかった。彼女は今度こそ土の壁を建てた。彼女はその壁に足を乗せて、壁を乗り越えようとした。そして、次の瞬間には土の壁に四つほど穴が空いていた。こうして壁を乗り越えようとしていなければ、その攻撃に当たっていたわけだ。それぞれの属性の球を発射する魔法は、弱い魔法とされている。子供が初歩で習得する魔法であり、いくら魔法が苦手な人でもその程度のことは出来るとうような魔法だ。つまりは、そんな初歩の魔法では土の壁の魔法を貫通させることなどできるはずもないのだ。変身後のオブでもただの球を出現させる魔法では土の壁を貫通させることは出来ないだろう。それを軽々とやってくる。オブは改めて、サクラの持つ能力は化け物じみていると思った。彼女はゾディアックシグナルのメンバーでなくてよかったと、心の底から思っていた。
だが、今は彼女と戦っているのだ。なんとかして、一撃でも彼女に攻撃を当てたいところだ。彼女は意識を切り替えて、超能力を使う。彼女の周りに彼女の腕より巨大で見えない腕が出現する。彼女にもそれを見ることは出来ないが、そこにあるという感覚だけはある。
「サクラ、今度はオレから行くぜっ!」
彼女はサクラに真っ直ぐに近づくように走り出す。そのとちゅうでジャンプして、サクラに不可視に拳をぶつけようとした。しかし、彼女の前にあるのは土の壁ではあるのだが、その色は土の色をしていない。真っ黒で金属のような硬質感を持っているものだ。彼女の不可視の拳もその壁を貫くことはできなかった。それどころか、顔女の拳が弾かれているというのを彼女は感覚で理解した。そして、自分のどんな攻撃もその壁を貫くことは出来ないだろうと思った。しかし、その壁は一面にしか張ることが出来ないのか、サクラ一人分程度の大きさしかなかった。オブは土の柱を足元に出現させ、着地する前に、その柱に彼女の足が着く。足が着いた瞬間に跳躍して、一気にサクラに近づいていく。サクラはその様子をただみていた。それもそのはずで、彼女は自身の防御能力がどれだけ通用するかを確かめたいのだ。土の壁を作ったのは、自身の防御の基礎の魔法がどれだけの力があるかを確かめた方からだ。オブの攻撃を簡単に防ぐことが出来たのだから、多少のことではびくともしないということだ。
サクラはオブが再び拳を引いたのをみた。また、見えない拳が飛んでくるのだろう。彼女はそれを理解しながらも土の壁を作ろうとはしなかった。それどころか、ノーガードでオブの攻撃に構えることもしない。オブはそれを見て、何かの攻撃来るのかと警戒する。しかし、退いた拳を前に出しているため、途中で何か行動を変えるなんてことは出来なかった。彼女はそのまま拳を前に出した。相手のカウンターを防ぐために、左右交互に腕を前に出す。サクラに向けて不可視にパンチが襲い掛かる。
サクラは自身の体の頑丈さを上げた上限まで引き上げある。しかし、それではオブの攻撃を防ぎきることは出来ていない。吹っ飛びこそしていないものの、後ろへと押されている。彼女は下半身の踏ん張り力を現状の最大値まで発揮する。そうすると、後ろに押されることはなくなった。しかし、彼女の体は痛みを感じている。つまりは全ての威力を殺しきれていないということだろう。そして、それが防御の限界だと思い、彼女は次に攻撃を受け流す作戦に切り替えようとした。見えない拳とはいえ、そこに確実に拳は存在している。それを証明しているのが、輝く拳の存在だ。そして、不可視の拳が視えるようになれば、ただ大きいだけの拳だ。それに対処するのは難しいことではない。