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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
38 叩き起こしてやる
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叩き起こしてやる 7

 ラピスの風の球は、オブの超能力の腕にぶつかった。その感触は彼女にはない。霞む目で何か違和感を感じて、それが攻撃かもしれないと思ったが、確信はない。攻撃かもしれないと思ったのも、彼女が攻撃が来る可能性がかなり高いと警戒しているからそう思ったのかもしれないと思ってしまうほどに、風の球は威力が弱かった。しかし、威力が弱いが、その魔法は直接的な攻撃をするような魔法ではないのだ。風の魔気が彼女の周りに広がっている。オブは攻撃が来ないと思うと、彼女は防御を解除して、次のラピスの攻撃が来ないうちに、移動しようとした。歩くような速ではなく、走り出そうとしたのだ。正確に言うと、少しだけ走り出ていた。その瞬間に、彼女の体は動かなくなった。進もうとする方向から何かに押さえつけられているかのように体が動かないのだ。無理やり動かそうとすれば、動くがそのためには筋力が必要だった。


 オブは何が起きているのか理解できていないが、それはラピスのせいだった。彼女が使った風の魔法は厳密には魔法ではない。彼女は自身の風の魔気の塊を相手の周りに散布したのだ。オートゴーレムである彼女は自身の魔気を外に出してもかなりの時間残すことが出来る。そこから強力な魔法にはできないが、魔気そのものをある程度思い通りに操ることが出来る。そして、その力を使い彼女はオブの体を抑え付けているのだ。魔法ではないため、魔気の消費はなく、疲れることがない。オブはその場に留められたまま、先ほどと同じように動けないため、的と化していた。行動範囲が限られている相手に攻撃を当てるのは難しいことではないのだ。ラピスは巨大な土の塊を作り出し、その先端を鋭く尖らせる。そして、その土の塊に風の魔気を使って、その巨大な土の棘を回転させた。それだけのものを回転させるのだから、激しい風が、ラピスの衣装と髪がバタバタと揺れた。そして、激しい風の音が辺りに響き渡っている。


 その様子をヘマタイトはハラハラしながら見ていた。どちらの攻撃も手加減しているようには見えないし、彼女の目には本気で殺しあっているようにすら見える。しかし、その間に入る勇気はなかった。それに、ラピスの攻撃は強力そうに見えるが、その程度でオブが死ぬとも思えない。腹部に大穴を開けてもこうして、元気に戦っているのだ。白い炎の魔法を直に受けても、彼女は大したダメージも追わなさそうだと思った。


 そして、二人の戦いを見ていたサクラは、ヘマタイトとは反対にその戦いを楽しんでいた。お互いに死なない程度の魔法しか使っていない。ミラクルガールでなければ、即死のような魔法でもミラクルガールであれば、かなり強化されるため、大したダメージにはならない。最初にミラクルガールの力を手にしただけあって、その力の加減は理解しているつもりだった。


 ラピスの出した回転する巨大な土の棘がオブに向かっていく。その棘が近づいていくにつれて、彼女の体を押さえつける力が強くなる。さすがのオブもその土の棘に防御もなしでぶつかれば、ただでは済まないだろうと考えた。だから、彼女はその力から抜け出るために、ある程度の力を解放する。逃げなければいけない、ラピスに舞えるわけにはいかない。その思考が強くなる。思考は想いになり、想いはミラクルガールに力へと変わる。彼女の手が光り始める。彼女が腕を振るうと、彼女を押さえつけていた風の魔気を振り払った。彼女を押さえつける力は無くなり、土の棘は彼女のいた場所にぶつかり消失した。オブはその魔法を避けて、すぐにラピスの方に視線を移す。彼女は既に次の攻撃を用意している。再び土の塊を削り、巨大な棘にしようとしてる。それを見ると、同時にオブの体が上へと飛ぶ。高くは無くとも、彼女との距離を縮めることは出来る。だが、空中では身動きが取れない。ラピスは土の塊の先端のみを鋭くして、歪な棘をオブに向けて放った。回転していない分、速度は劣るが、空中にいる相手に当てるため、速度はいらない。


 オブはそれを狙っていた。単純な力のある魔法ではあるが、オブは工夫のない威力だけの魔法なら、力でねじ伏せることが出来るのだ。彼女の超能力を使えば、魔法に拳を叩きつけても彼女本体にはダメージはない。彼女は空中にいながらも、自身の拳を後ろに引いた。彼女は無意識の内に、その手に力を込めていた。彼女の拳がスコルピオと戦った時ほどではないものの少しだけ輝き始める。そして、オブは超能力を使って見えない拳を出現させた。しかし、彼女の手の輝きが、見えない拳にも移る。見えないはずの拳が微かに煌めいていた。

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