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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
36 モノクロの希望
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モノクロの希望 6

 赤い球体を前にしても、パイシスの余裕は変わらない。彼は自身を拘束している分体をちらと見た。その後に、彼の体の周りに激しい風が吹き荒れる。拘束している分体はその風に飛ばされないように、彼の体にがっちり掴んでいる。そのせいで、拘束は更に強くなっているのだが、彼はそれも気にしていないようだった。そして、赤い球体が彼に迫る。しかし、その球体はそれ以上は進まなかった。いや、勧めなかったのだ。彼の作り出した風が、壁になっているのだ。赤い球の持つ推進力を相殺しているのだ。そして、赤の球はスコルピオが想定した魔法の継続時間を超えて、消失した。それでも分体の拘束は解けていない。スコルピオは未だに自分にチャンスがあると考えていた。彼女はもはや冷静ではないのだろう。


「そうか。君はかなり強くなったようだ。しかし、自分だけが成長したと思っているわけじゃないよね。君が過ごした時間と同じだけの時間が私にも流れているんだ。それぞれの時間の使い方で、君にとって有意義ではないのかもしれないけれど、私には有意義だったよ」


 彼女は黒い液体の入った注射器を取り出した。それと同時に白い液体の入った注射器も取り出す。それをパイシスに見せつけるようにして、その後注射器を自身の首元に突き刺した。左右にそれぞれ針を刺し、ほぼ同時に黒と白の薬が彼女の体に入っていく。


「悪いね。これは私の奥の手なんだ。ほんとなら、斬りたくはない手札。本当の本当の切り札。最悪の状況にしか使わないような物なんだ。手加減も出来なくなる。だから、先に謝っておくよ。殺してしまってごめんね」


 彼女の体に特に変質した様子はない。ただ、彼女が取り込んでいる魔気の量が純情ではなかった。辺りの魔気を吸い尽くすのではないのかと思うほど取り込んでいる。それでも、周囲にある魔気の量の方が圧倒的に多く、彼女の魔気の吸収が終わっても、呼吸しにくいなんてことは起きなかった。


 彼女は自身の強化をしたタイミングで、パイシスは後ろから金属の音が聞こえた。スコルピオから目を離すことが出来ない彼は、その方向に目を向けられないが、何かあったと擦れば、ヘマタイトの方だろうと簡単に考えられる。負けたというわけではないようで、まだ戦闘の音は聞こえてくる。それと同時に衝撃が伝わるような音が聞こえてくる。


「よそ見、なんて」


 パイシスの目でも、スコルピオの速度を目で追うのがやっとだった。いきなり目の前に出現したようにも見えるほどの速度。


「馬鹿だね!」


 その速度のままに、硬い拳を彼の顔面に叩きつける。彼は顔を逸らして、パンチの威力をいなしたが、いなしきることは出来ずに、後ろに飛んだ。足が地面につく前に、スコルピオが目の前に来る。それでも、一度見た速度であるため、相手の行動を予測しながら動きをみれば、相手の攻撃の軌道も見える。彼は空中で超能力を使い、真上に移動してすぐに真下に移動するように超能力を使い、足の裏を相手の脳天に落とした。確かに、スコルピオの頭に当たったと思ったのだが、彼の足の下にあるのは岩の壁だった。大量の土の魔気で作られた壁は彼の超能力を駆使した踏みつけでも壊すことは出来なかった。




 ヘマタイトともマントの男、スコルピオとパイシスが戦っている間。メイトは隠れてその戦闘を見ていた。そして、ヘマタイトが鍵を落とすのを見た瞬間に、彼はその鍵に近づいていた。そして、それを超能力を使い、コピー空間に回収する。彼はそれをオブの正面に落とした。彼の予想ではおそらく最初のミラクルガールであるサクラと関係の深いものほどミラクルガールになる確率が高いと考えている。オブはサクラの姉のような友人だ。それは、彼女がミラクルガールになる可能性が高いと予想した。


 オブは目の前に何かが落ちてきたのをみた。手は自由とまではいかないが、痛みを我慢すれば、その手はかろうじて動かすことが出来る。そして、彼女は目の前に落ちてきた鍵の束に手をかぶせて握ろうとした。その瞬間に、不思議な衣装を纏って戦っている女性の姿が思い浮かぶ。その鍵の使い方もそれで理解が出来た。


「なる、ほどな。オレも、サクラと一緒、ってわけか」


 彼女は鍵の束からその鍵を取り出すほどの力は無く、鍵の束を持ち上げて、一本だけを胸に突き刺した。その鍵の頭にはやぎ座のマークが刻まれている。その鍵を微かに力を込めて、右に回した。その瞬間、彼女の体を光が包んだ。


 その光によって四人は戦闘を止めた。スコルピオとマントの男はその状況に絶簿を感じ、ヘマタイトは彼女もミラクルガールに変身することに驚いていた。そして、パイシスはそれが当然であるかのようにちらとそちらをみるだけだった。


「これで、まだ戦えるといいんだがな」

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