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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
34 光の裏に潜むもの
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光の裏に潜むもの 6

「オレは実験台か。まぁ、即死がさせねぇってのはありがてぇ報告だな。だが、油断しすぎるなよな」


 距離を離したオブが再び超能力で攻撃を仕掛ける。スコルピオには見えない攻撃が連続で飛んでくるとなると、回避するのは難しい。スコルピオは何度か攻撃に当たり、再び痣を作っていたが、自身に緑の液体を注射するとその傷も癒える。その度に余裕そうな態度を見せているのが気に食わないが、それを真に受けて、感情に任せて攻撃するなんて愚を犯すわけにはいかない。だから、彼女は口を開いた。


「治せるのはすげぇとは思う。だが、痛みを感じないわけじゃないんだろ? オレ、お前で実験するぜ、スコルピオ。薬だけで痛みに抗えるのかってことをよ」


「……いいね。お互いに実験しあう。最高だよ」


 スコルピの顔には抑えきれない嬉しさが出ていた。




 オブとスコルピオの戦闘を影からずっと見ながら、オブの援護をしているヘマタイトは、二人にやり取りに背中に冷たい風が入るような、感触を覚えていた。どちらも今にも理性が無くなりそうで、どちらかが暴れた時点で、自分には止めることもできないだろうと考えていた。もし、自分がどうにもできなくなった時点で逃げようとは考えているのだが、オブを置いて逃げるのは嫌だとも考えていた。そうなる前にどうにか、スコルピオとの戦闘の決着をつけたいところだ。


 しかし、彼女は疑問に思っていることがある。スコルピオが自分に対して、何の対策もしてこないことだ。戦闘の邪魔をしたのは間違いない。それに、土の柱がオブの物ではないのは相手にもわかるはずなのだが、それでも相手に意識は一度も自分に向いていないことが不思議だった。そんなことを考えても、隙を見てはオブの援護を行う。相手の動きの邪魔をするように、土の魔法を使う。足を土に絡ませて、移動できないようにさせたり、相手の攻撃に合わせて、土の壁を作り攻撃を防いだりしているのだが、その妨害に頓着していないようで、戦いを続けていく。どれだけ邪魔をしても、こちらに意識を向けることがないのが不思議だ。こちらに気が向いていないからと言って、自身の防御をおろそかにすることはない。意識していない状態でも、攻撃が出来ないとは限らないのだ。


 それでも、防ぐことが出来ない攻撃が彼女に届いていた。右足に熱を感じたのが、最初だ。火の魔法でも使われたのかと思ったが、すぐにずきずきと痛みだした。足の方に目線を映すとそこには矢が刺さっていた。それでも大声を出すほどの痛みではなかった。彼女は今の足のことより、その攻撃がどこから来たのかわからなかったことの方が考えなくてはいけないことだ。それがわからないということは、次に同じ攻撃が来ても対処することは出来ないということになる。オブとスコルピオの戦闘に関わることが出来ない。次の攻撃が胸や頭を貫いたとしたら、援護などと言っている場合ではなくなってしまう。彼女だって、死にたくて戦っているわけではないのだ。




「隠れてる仲間が大変なことになりそうだけど、いいのかな」


「心配、ありがとよ。だが、そいつぁ、余計なお世話だな」


「そうか。それは悪かったね。でも、君の方が大変そうだ」


 ヘマタイトの援護が無くなり、オブの攻撃が目に見えて当たらなくなっていた。それをわかるからこそ、スコルピオは挑発するようにオブのことを煽っている。だが、オブは感情に任せて攻撃するのを我慢して、相手の動きを見て、先を読んでどうにか相手に近づかれすぎないように移動し続けている。近づかれても、注射器には刺さらないように立ち回る。相手が近づいたタイミングで自分も近づいて、宙さされる前に相手を殴りつける。そのお陰で彼女は最初に注射された以外にはまだ、注射されていない。だが、彼女は知っている。相手はまだ本気を出していないということを。前に戦ったときは、分裂して戦っていたのだ。一対一でも押され気味の今、その超能力を使われれると明らかにこちらが不利になるのは目に見えているのだ。もしスコルピオにその超能力を使われても、彼女の中に逃げるという選択肢はなかった。




 ヘマタイトはまだ、辺りを警戒していた。二撃目はまだ来ない。辺りを警戒するだけで、オブとスコルピオの戦闘している音が聞こえるだけだ。それが気になり、索敵に集中していない。彼女の意識がオブたちの戦闘に割かれそうになった時、二撃目の矢が飛んでくるのを彼女は視界内に捕らえていた。彼女はそれを土の壁を作り出して、矢から身を守っていた。それからは、ヘマタイトの様子を伺うようなことはなく、矢が飛んでくる。それを土の壁で防御し続けているが、このまま魔気を使い続けていると、やがて防御できないときが来るのは明白だ。しかし、相手の位置は未だに特定できていない。


「どうする、どうする。こんなこと、無かったのに。どうする、どうすればいいの」


 彼女は自身の言葉に徐々に焦りを募らせる。相手の位置がわからないなんてことはなかったことと、スコルピオを含めた相手の力の底の見えなさに感じていた不安が表に出てくる。援護だけしていればよかった先ほどとは違い、彼女自身も戦わなくてはいけないのだ。

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