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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
34 光の裏に潜むもの
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光の裏に潜むもの 5

メイトが、サクラとラピスのところに鍵を取りに行っている間、オブとスコルピオは戦闘を始めようとしていた。二人の見た目だけであれば、お互いに冷めているように見える。しかし、オブの中には闘気が満ちていた。スコルピオは注射器を取り出して、臨戦態勢に入る。彼女はまだ、超能力を使う気はないのか、片足から力を抜いて、片足立ちで注射器を持っている手はプラプラと動かしている。しかし、それはただ力を抜いているわけではなく、すぐに動けるようにしているだけだ。オブもそれを肌で感じていた。言わずもがな、スコルピオはオブが臨戦態勢になっているのは理解している。どちらが先に仕掛けるのか、二人がにらみ合っている間に、スコルピオの足元が細かく、高さ違いに延びてくる。スコルピオはまさか、そんな攻撃が飛んでくるとは思わず、回避が遅れる。柱に足が引っかかり、回避しきれない。動きがもたついている間に、オブが超能力を使って拳を叩き込む。動きにくくなっているスコルピオはその拳を回避することは出来ない。


 腹に一発入り、スコルピオの口から空気が漏れる。その一撃だけでは彼女は土の柱から逃げることは出来なかった。相手に逃げたかどうかも気にせず、二撃目三撃目と攻撃を続ける。鈍い音が路地の中に響いているが、スコルピオはそれでも逃げることは出来ない。


「わりぃな。オレはこうでもしなきゃ勝てねぇからな」


 オブは殴り続けながら、そう叫ぶ。卑怯な手は使いたくないと思っているのは真実だ。それ以上に、目の前の敵を倒したいと思っているだけなのだから。


 スコルピオはようやく、足に引っかかる柱をぶっ壊して逃げ出した。顔には痣が出来ていて、服に隠れている部分にも痣が出来ているだろう。彼女の口の端から少しだけ血が流れているのが見える。


「まさか、こんな手で来るなんて思わなかったよ。卑怯とは言うものの、命のやり取り、殺し合いにはルールはない。そう言う私も即死の毒も、麻痺毒だって使う。君だけに卑怯だなんて、攻めるなんて馬鹿げてるな」


「つまり、てめぇはこう言いたいわけだ。自分がそう言うことをしても、文句言うなってな」


「わかってくれて嬉しいよ。私も毒の調合には自身があるんだ」


 スコルピオは自身に注射を差した。そこには奇妙な緑色の液体が入っていた。それが彼女の体の中に注入されていく。すると、彼女の痣が退いていく。それだけでなく、今までオブが与えたダメージも全くなくなっているように見える。戦闘前の余裕そうな態度に戻っていた。


「さぁ、仕切り直しだよ。これでさっきの罠は使えない。次は私からいこうかな」


 そう言うと、彼女は地面を蹴って素早く走る。オブはその速度に合わせようと体を後ろに肩向けて、後ろに下がる。しかし、相手に方が足は速く、オブの前にスコルピオが来た。その手には注射器が握られている。その手が振りかぶるでもなく、すっと彼女の太ももの辺りに突き刺さる。その注射器の液体は先ほどスコルピオが自分に突き刺したものと同じ色の液体が入っていた。その奇妙な緑の液体が、オブの体の中に入っていく。少し冷たい液体が体内に侵入してくるのがわかるのが、かなり気持ち悪い。その液体が入ったからと言って、すぐに効果が出るようなものではないのか、オブは特に体に異常を感じない。だが、それを放置していくわけにはいかない。彼女は体内の魔気を操り、魔気の流れを変えて、注入された液体が体内で魔気に変換されて体外に排出した。その間も体に異常はない。痛みも痺れも感じない。


「やはり、この程度では効かないか。今の薬は私の体の一部と、植物の回復能力を高める薬草を合わせたものだ。私には回復の効果があるが、私とは種族が違う者には、かなりの毒だ。君のように強い者でもなければ、すぐに悲鳴を上げるものなんだが」


 スコルピオが饒舌に薬の開設をする。オブはそれを聞いて、相手は馬鹿なのかと思った。それを口に出すような隙は無く、オブは彼女と距離を置くために、後ろに飛んだ。それを見ても、相手は特に追撃する様子はなく、それどころか再び注射器を取り出していた。


「随分、余裕じゃねぇか。毒の解説までするなんて、気前が良いな」


「それは違う。気前がいいわけではないよ。自分が作ったものを理解してほしい。そして、その薬の凄さを理解してほしい。何かを作る者なら誰だって思うことだと思うよ。私もその例に漏れないというだけさ」


 そう言いながらも、彼女は二本ほど注射器を追加していた。指と指の間に注射器を挟んで、プラプラと振っていた。


「それにね。解説しても別に大丈夫さ。君には、同じ薬は使わない。頑丈な君の体で、どんな薬が効くのか、興味が出てきたんだ。即死なんてさせないから、安心してほしい」


 スコルピオの目がきらりと光ったような気がする。そこから、怪しい笑みを浮かべている。戦闘は不向きな、その笑顔は不気味だ。それでもオブは戦うのを止める気はなかった。

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