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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
33 暴れる光で照らして
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暴れる光で照らして 5

 巨大なトンボの魔獣を討伐して、二人は森を抜けて、町に戻ってきていた。ギルドに戻り、討伐の報告をする。討伐の証は、潰した顔の破片だ。冒険者でも気持ち悪いと感じる人の多い見た目だが、ナチュレはそれを見ても驚いたり、嫌がったりせずに淡々と業務こなすだけで、いつもと変わりはないようだった。しかし、周りにいた冒険者の一部が目を逸らす程度のことは起こっていた。そもそも、虫型の魔獣は冒険者も戦いたくはないという人は多い。仕事だからと割り切らなければ、戦えない相手ともいえる。その虫型の危険な魔獣を倒したのだというのだから、彼女たちはそこにいた冒険者たちにもてはやされるのも当たり前と言えるかもしれない。そもそも、弱い冒険者は森の中でも採取の依頼をこなすだけで、魔獣の討伐を行っていない人もいる。その人たちからすれば、虫型でなくとも危険な魔獣が出る森の中に入りたいとは思えない。チームを組んでいる冒険者たちは、その魔獣が片付くまで、森の依頼を受けないという選択をしている者たちもいる。稼ぎは落ちるが、死なないことが一番だと考えているのだ。それもチームとなれば、死ぬのは一人ではない。




「さて、オレはライフリキュアに行くんだが、一緒に行かねぇか?」


「あ、その、でも、私、お酒は飲めません、ので」


「あぁ? そんなこと気にすんな。ジュースでも茶でも好きな物飲んで、食べりゃいい」


「じゃ、じゃあ、一緒に、行きます」


 オブとヘマタイトは、依頼の報告をして、そこにいた冒険者たちと話している間に、時間は過ぎていった。オブが腹減ったからと言う理由で、ギルドを後にするのにヘマタイトもついてきて、二人はライフリキュアで夕食を取ることにしたらしい。




「おお、いらっしゃい!」


 ライフリキュアに到着して、彼女は店主が作業しているカウンターの席に着いた。その日もカウンター席だけは空いていて、オブの隣にヘマタイトが座った。オブが酒を注文して、そのあとにヘマタイトが水を注文した。酒も水もすぐに出てきた。酒も水もジョッキに入っていて、ヘマタイトはその見た目に驚いていたが、さすがに冒険者というだけあって、ジョッキも持ち上げられないなんてことはなかった。


「ほら、乾杯しようぜ」


「は、はい」


 ジョッキ同士がぶつかり合い、鈍い音が響く。オブはジョッキの三分の一ほど一気に飲み、ジョッキを置いた。それに習うわけではないが、戦闘してから水分を取っていなかっため、ジョッキに入った水の半分ほどを一気に飲んでしまった。


「はは、いい飲みっぷりじゃねぇか」


 オブは笑って、ヘマタイトの頭を撫でた。ヘマタイトは照れたように俯いているが、頭を撫でられるのは嫌いではなかった。


「久しぶりに来たからな。サービスだ」


 二人の前に、鉄板に乗ったステーキが出てきた。サービスと言うには明らかにやりすぎな気がしたヘマタイトだが、オブは迷うこともなくかぶりついているのを見て、そんなもんなのかなと思った。オブがステーキをフォークに差して、そのまま持ち上げてかぶりついているのを見て、それが食べ方なのかなと思ったヘマタイトは、それを真似しようとしたのだが、彼女のようにうまく口の中に入らなかった。


「ふはは。ちゃんと切れ」


 オブがナイフを指さして、そう言った。ヘマタイトは少し恥ずかしくなり、また顔を俯けた。だが、その手はナイフとフォークを持って、ステーキを切り分けている。空腹を感じるのも無理はない。危険な魔獣でなくとも、魔獣討伐に出ればそれだけエネルギーを消費するのだ。今日の戦果から言えば、空腹を感じなかったなら、きっと病気だと疑うだろう。彼女は切り分けたステーキを口に運んだ。中々、塩と胡椒が聞いていて、味が濃い。疲れている体にはいい刺激で、元気になれる味だ。


「お、美味しいですね。ふへへ」


 彼女が緩い笑顔を外でするのは珍しいことだろう。オブも目を丸くして驚いていたが、すぐに勝気に笑い、彼女の頭に手を置いて、ポンポンと二回軽く叩く。そのまま料理を食べ進め、ステーキだけでは少し足りなかったヘマタイトは、サラダを注文して、ステーキでは全然足りなかったオブは更にいくつかの料理を注文していた。その料理が実際に目の前に置かれると、ヘマタイトはその量に驚いていたが、彼女はそれでも大して時間を掛けずに平らげたのだった。


「腹、いっぱいだな。食ったぜ~」


 オブが全ての料金を払い、ライフリキュアを出た。


「あの、やっぱり、お金払います」


「いや、いらねぇ。それよか、また付き合ってくれよ」


 ヘマタイトもオブの性格を知らないわけではない。それ以上食い下がっても無駄だということくらいはわかっていた。だから、それ以上は何も言わなかった。そして、彼女は一緒に食事する機会が次もあるということが嬉しかった。

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