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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
33 暴れる光で照らして
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暴れる光で照らして 1

 サクラとラピスは、フローの別れの手紙を見た後、すぐに町の中を探した。ギルドに行き、彼女がいないかと聞きまわった。冒険者たちは皆、見ていないという趣旨の返事ばかりだった。受付にいたナチュレに聞いても、今日は見ていないと言われた。ギルドから出て町中を探していたのだが、一向に見つけることができなかった。最後には町の外に出て、戦っているような音を頼りに、森の中を探してみたが、彼女の姿はなかった。完全に町から離れているのか、彼女たちには見つからないようにしているのか、何にしろ、二人はフローを見つけることは出来なかった。


「サクラ。今日はもう、戻りましょう」


 ラピスがそう言うのも無理はない。既に日が落ちていくらか立っている。森の中を探索するには、危険すぎる時間だ。それでもこの時間まで、帰ろうと言わなかったのは、サクラの心が理解できるからだ。自分も同じことを感じているのだと思ったから、声を掛けられなかった。しかし、彼女を探している内に、死んでしまっては元も子もない。フローが戻ってくると言っているのに、その間に死んでしまうなんて、馬鹿げている。サクラはラピスの言葉に返事はしたが、視線は未だに彼女を探している。このままだと本当にずっと探していそうだと思って、無理やりサクラの腕を引っ張って、森の中から出して、町の中に戻った。


 部屋に戻るころには今日も、明け方になる少し前のような空だった。サクラはフロー探しで疲れてしまい、部屋に踊り寝転がるとすぐに眠ってしまった。


「フロー。まさか、いなくなってしまうとは思いませんでした。私は、三人でミラクルガールだと思っています。すぐに、戻ってきてください」


 そう呟かずにはいられない。サクラの様子もそうだが、ここまで寂しさを感じたのは自分を作った博士が死んだとき以来だ。大切な人がいきなり目の前から消える。彼女は胸に手を当てて、悲しみと寂しさに抵抗する。こんな心が無かったなんて、思いたくはないのだ。




 翌日。サクラは部屋から出る気力が沸かなかった。目を覚ましても、その瞳に生気はなく、どこを見ているのかを把握するのも難しい。ラピスと目を合わせているというのにその視線は自分の後ろを見ているかのように見える。彼女は少しだけ動いたかと思ったが、彼女は床に置きっぱなしだったであろう鍵を手に取った。それはフローが変身で使っていたおうし座の鍵だ。今の彼女は変身することもできないだろう。彼女がそれを見つめたまま、動かなくなった。その手の上からラピスが手を重ねた。サクラがラピスの顔を見ていた。


「大丈夫ですよ。きっと、大丈夫です」


 自身の言葉に中身がないことはわかっている。それでも、何か言いたいくなる。その言葉はラピス自身にも言っているのだ。この寂しさを埋めることは出来ない。だから、そう言うしかないのだ。




 ミラクルガールがギルドに来なくなった。そんな話が出てくるころ、ギルドにはミラクルガールに代わる話題に上がるほどの強さの冒険者が出てきていた。一人は既に冒険者、もう一人は新人だ。


「中々、強いみたいだな。ヘマタイト」


「え、あ、そ、そんなこと、無いですよ。ラピスさんに、比べれば。へへ」


 二人は治療を終えていた。オフィウクスとミラクルガールの広場での戦闘をきっかけにするように、その翌日に目が覚めた。その前にはオブは退院していて、怪我をする前と同じように体を動かしても大丈夫そうだということで、冒険者の活動もしていた。前よりも仕事に精を出して活動している。治癒のお陰か、死の淵から戻ってきたせいか、彼女は以前に比べて超能力や体の動作の調子がよかった。退院の時に言われたが、治癒師に長時間の回復を受けると自身の魔気の流れをよりコントロールできるようになったり、反対に魔気の流れを把握できなくなったりするらしい。彼女場合は前者と言うわけだ。魔気の流れを理解して、その魔気を身体の機能を上昇させるように体に巡らせる。


 そして、ヘマタイトはオブに誘われて、オブが作った流れに抵抗することが出来ずに、いつの間にか冒険者の試験を受けることになり、オブに言われた通り得意な魔法を使い、試験官と戦った結果、何故か合格してしまった。彼女ほどの魔法使いはミラクルガールくらいのものだった。彼女の性根は真面目であるため、冒険者になってしまったとはいえ、仕事をしないという選択肢は彼女の頭の中にはなかった。最初は町中の小さな仕事をした。そのお陰か、町の中では彼女と顔見知りの人は多かった。次の仕事は森の中での依頼物の収集。これもそつなくこなし、魔獣と戦闘にならないように持ち前の逃げ足で逃げてきた。そして、今となっては魔獣討伐もこなしている。彼女が魔法を使えば、森の奥まで行っても大丈夫ではないかと言われるくらいだ。だが、彼女は森の奥まで行く気はなかった。真面目ではあるが、彼女は怖がりなのだ。

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