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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
32 心を遣う
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心を遣う 1

 カプリコーンの力を鍵に封印すると、カプリコーンはそのまま前のめりに倒れそうになる。そんな彼の体をリブラが受け止めていた。そのまま、彼を膝の上に寝かせている。そんな二人の様子を邪魔する気にはなれなくて、ラピスは突っ立っているままのサクラたちの方へと移動した。二人の両肩を掴んで、グワングワンとなりそうなほど揺らすと、サクラとフローの瞳に光が戻ってくる。そのあとすぐに、息を吸い込んで辺りをキョロキョロしていた。そして、ラピスの後ろに、カプリコーンがリブラの膝の上で寝ているのを見て、ラピスがどうにかしてくれたのだと状況を理解した。


「ラピス、ありがとうございます。まさか、一人で戦わせてしまうことになるとは思いませんでした。私の心は一人で戦えるほど強くないのに、ラピスは凄いです」


「い、いえ。そんなことありません。サクラもフローも戦えなかったから、私しか守れる人がいないと思ったら、何とかなっただけです。それに、サクラのお陰でもあるのです。サクラがいなければ、戦おうとすら思えませんでしたから」


 照れたようにもじもじしている彼女を見ると、サクラは無性に抱き着きたくなって、彼女をハグした。ラピスは戸惑ったようにしているが、その心には温かさを感じていた。


 二人とは正反対に、フローは絶望から戻ってきても、自身の心の弱さにショックを受けていた。カプリコーンの超能力が解除されているのだが、彼女はいつもの調子には戻れない。弱さを自覚させられてしまったのだ。たとえ、心に悪意が無くなっても、心が受けた衝撃は消えない。


「私では、足手まとい、なのか」


 彼女の囁きを聞き取る者は彼女の耳だけだ。ラピスもサクラもカプリコーンを倒せたことに喜んでいる。




「素晴らしい欲です。人のために、命を掛ける。それこそが、正しく、純粋な欲と言えます。さすが、ゾディアックシグナルのメンバーなだけはありますね」


 月明かりを背にして、誰かが地面に降り立った。その人物にサクラたちとリブラの視線が向く。リブラは目を丸くして、一つの声も出なかった。サクラもラピスもフローもその人物の噂くらいは聞いたことがあるだろう。サクラに至っては彼と話したことすらある。その彼が今、何と言ったのか。


 ゾディアックシグナルのメンバー、と言ったのだ。ミラクルガールが敵対してきた相手だ。そして、その名前を一般人は知らないだろう。メイトやカイトは知っているようだったが、彼らは一般人というわけではないのだろう。メイトに関しては彼らを調べていると言っていたし、その友人のカイトが知っていても不思議ではない。やはり、その名前を知っているのは普通の人ではないのだ。人を助けていると彼がそのメンバーだとするなら、サクラにはショックだと思った。


「ミラクルガール。君たちは綺麗で純粋な欲で動いているみたいですね。そんな君たちもこの町に住む人のために戦っているはずです。私もこの町をよりよくしたのです。そのために、人を集めて、私の力の一端を託したのです。貴方達もゾディアックシグナルのメンバーになりませんか」


 男は彼の言葉に誰も反応していないというのに、一人で大げさに話していた。そんな中、サクラが彼の前に立った。ショックを受けると思ったせいか、心は彼の素性を聞いてもそこまでショックを感じてはいなかった。


「嫌です。確かに、貴方は冒険者や町の人を守っていたのかもしれません。でも、貴方が力を与えた人たちは騒ぎを起こしています。町の人を危険な目に遭わせているんです」


「それは、彼らがそれがこの町をより良くしようとした結果です。そのために犠牲が出るのは仕方ありません。純粋な欲だけを守るために、それを持たないものを排除するのは当然のことでしょう」


 サクラもオフィウクスもどちらも自分の信念に基づいて話していた。だからこそ、二人の目には迷いはなく、真っ直ぐな瞳で言葉をぶつけあっている。


「犠牲を出すのが正しいはずがないです。それは考えていないのと同じなんです。どんな人でも幸せに過ごせるようにする考えることこそ、町を、人の生活をより良くすることだと思います」


「全員が納得する物事なんてありません。人のために行動できる人だけを残すことで皆が幸せになれます。自らの欲を満たすだけのものなど、害になるだけです。それだけを排除するのです。悪いことではないでしょう」


 ぶつかる言葉は同じ威力で、サクラもオフィウクスも言葉を収めることなどできるはずもない。己の信念をぶつけているのだから、当然のことだろう。どれだけ話してもこの議論が平行線だと思い、先に話すのをやめたのはオフィウクスだった。


「……この議論に意味など無いということがわかりました。もう貴女たちに用はありませんね。それでは、邪魔になるとはいけないので、ここで排除しましょうか」


 オフィウクスはそう言うと、サクラたちをじっと見ていた。

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