分断 7
「貴方は強い人なのですね。貴女に少し興味が出ましたが、主の邪魔をするとわかっている人を放っては置けません。この空間ではある程度の破壊はしても大丈夫そうだと確認できましたし、私も少しだけ、主の力を使って戦いましょうか」
彼女はそう言って、落ちていた瓦礫を握りこんだ。それは種になり、種はその場で成長した。それはただの木の棒だ。小さな棘がついているが、それでもリーチとしては明らかに短い。その程度の射程でどうにかできるのかと思ったが、相手のスピードがどれほどなのかまだ見ていない。油断しそうになる思考と心を引き締めて、彼女は落ちていた木の破片を鉄球にした。そして、もう一つ気の破片を拾い、盾へと変化させた。盾はアーマーと同じ材質の物だ。
リブラはもう空いている方の手で瓦礫を種に変化させた。それはその場所で成長して、その細い枝の先端がフローの方へと延びる。フローは盾で攻撃を防ぎ、鉄球を飛ばした。鎖と鉄球を操り、不規則な軌道で相手にぶつけようとしていたが、その鉄球はリブラが持っていた木の棒によって叩き落された。リブラはその鉄球を地面にめり込むほど叩きつけると、鎖を手繰り寄せた。引かれる力がかかった時点で、武器から手を離した。彼女が武器を操れると言っても、対応しきれない場合は、思うようには使えないのだろう。だが、そこら中に武器へと再構築できる物は沢山落ちている。しかし、その状況は相手にとっても同じだ。握って植物の種にする物が沢山あるということでもある。同系統の超能力では、それぞれの力量が試されるだろう。しかし、この戦闘に置いては、リブラが負けることはないだろう。リブラは勝つことが無くとも、その力の源を封印できない現状ではフローには勝利することは出来ない。だが、フローが戦い続けることが出来るなら、負けることもない。それはフローにも理解できていることだが、ずっと戦い続けることは出来ないことも理解している。相手はゾンビ。疲れ知らずの無尽蔵の体力を持っていると言ってもいいだろう。ミラクルガールになり、戦い続けられると言っても限界はあるのだ。どうにか、リブラを動けないようにしなければいつか勝てるかもしれないが、彼女をその状態にするイメージが沸かない。イメージが出来ない以上、魔法でどうにかするはまず無理だろう。そもそも、想像できない未来を手繰り寄せるのは不可能だ。
フローはそれでも、攻撃と防御を続けていた。リブラの多彩な植物の攻撃を盾とアーマーで防いている。攻撃する隙などあまりないが、攻撃するのは諦めない。リブラとの戦闘を始めた頃からは、真反対の戦い方。しかし、攻撃を挟むことでリブラの攻撃が途切れていた。
相手の攻撃を斧で防ぎ、鎖で繋いだ斧を投げ飛ばす。リブラは斧を木の棒で弾いた。宙へと弾け飛んだ斧を操り、上に移動させてそれを落下の力と下に振るう力を合わせて打ち下ろす。リブラはその攻撃を回避して、鎖を足で踏み、鎖がリブラの方へと引っ張られる。先ほどと同じように彼女は武器から手を離して、引っ張った鎖は消えていく。フローはそのまま、次の武器を作り出した。三本のナイフの頭に鎖を繋げたものだ。それをくるくると軽く回転させて投げる。連撃するのは自分に隙が生まれるのは理解していながら、攻撃を続けた。ナイフは鉄球や斧よりも速い速度で相手に到達した。一直線に跳んだナイフにつられるように左右のナイフが、相手を囲むような軌道を取り、飛んでいく。しかし、結局は全て防がれる。鎖は引っ張られなかったが、彼女は武器から手を離した。手元で、剣を作り、盾を前に構える。彼女は予想をしていた。ここまで自分が後手に回っていたのは、相手の攻撃を警戒していたからだ。今、隙を見せれば距離を詰めて攻撃してくると予想した。
彼女の盾に衝撃が加わる。盾から手を離して、後ろへとステップを踏んだ。盾は相手の持っていた木の棒の棘がいつの間にか長くなっていて、盾を突き刺していた。盾は彼女の手から離れたため、分解され消えた。しかし、その様子はまるで、棘に貫かれたから、消えたように見える。盾を貫いたということは、彼女が着用しているアーマーも貫くということだ。そして、盾を貫いた後、棘の先端の一部から雫が垂れたのを見た。棘の先端から何かの液体を出しているということだろう。周りに水などの液体はなかったため、そうとしか考えられない。そして、その液体は十中八九、毒性のあるものだと予想がついた。その毒性がどのようなものなのかは、予想はつかないが、少量でも効果のあるものなのだろう。そうでなければ、もっと棘から液体が出るはずだ。
この戦闘がいつまで続くのか、彼女がそう思っている後ろで、空間に微かに開いた扉があった。




