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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
27 分断
148/266

分断 3

 ヘマタイトは、ラピスが強化したことを感じていた。ヘマタイト自身もそれを感じていたが、それ以上にヘマタイトの体を操っている植物が、彼女とこれ以上戦うと、自分の命の危機だと感じていた。そのためか、ヘマタイトの体の動きが目に見えて鈍っていた。逃げる先もなく、戦っても勝てそうにない状態。彼女は辺りをキョロキョロしている。植物の思考能力は大したものではない。あくまで、心を操り、行動自体は催眠状態にしたものが行うのだ。もはや、今のヘマタイトは大した敵ではない。


 自身の魔気が増加したラピスは自身の視界に違和感を感じていた。それは空中に微かに色がついているように見えることだ。それが自然の中の魔気であるというのに気が付くのに時間はかからなかった。魔気の流れが見えると、その流れも一部は生物の中に取り込まれているのがわかった。そして、その魔気の流れが二つ、ヘマタイトの方へと流れているのだ。微かに感じるというだけだから、それを信じ切るというのは間違いかもしれない。しかし、ラピスはそれを信じることにした。ヘマタイトの中に、もう一人いるということになる。彼女の様子がおかしいことに納得した。何かに操られているということなのだろう。彼女の中の二人目が、彼女の体を操っているのだ。


 彼女の体から、水の球が出現した。まるでスライムのように体から分離しているように見える。そして、ラピスからヘマタイトに向けて、風の道が作り出されていた。いくつもの風の道。それが見えているのはラピスだけ。その風の道に乗せて、水の球が運ばれていく。ラピスにはそれがダンスして進んでいるように見えたが、現実には少なくともヘマタイトが近づいてきたというのを認識するのに、少し遅れる程度の速度が出ていた。その速度の魔法を回避することもできず、彼女の肌に水の球が触れる。水の球が彼女の肌に染み込むようにして消える。風の道は彼女の体に吸い込まれているのだ。ラピスは、自身の水の魔気を風に乗せて、相手の体に侵入させたのだ。それは治癒師のような魔気の使い方だ。操られているのなら、内側からどうにかできないだろうかと考えた結果だ。治癒師の魔気の使い方の知識があるラピスは強化された魔気をヘマタイトの体の中を難なく探索して、彼女の中の二人目を見つけた。それが何なのかラピスにはわからなかったが、原因であることは間違いない。体内に潜ませた魔気をそのまま、ヘマタイトを操っている何かに混ぜ込んだ。内側から、何かの中の水の魔気を操作して、他の魔気をヘマタイトに移す。そして、最後に水の魔気もヘマタイトへと移した。体内に、魔気が無くなった何かは活動を停止する。何かの活動が停止すると、ヘマタイトが倒れた。体的にも限界であったのは間違いない。ラピスは最後に、何かの死骸を体外へと出した。幸いにも肌を切り開く必要のない場所に寄生していたため、体外へと出すのは難しいことではなかった。それから、ラピスはヘマタイトに自身の魔気を使って、治癒師のように、体力が回復しやすいようにヘマタイトの体内の魔気の流れを手助けした。


「ラピス、ごめんなさい。私は、何もできなかった」


 ラピスの近くにサクラが移動してくる。彼女は本当に落ち込んでいる様子で、いつものような、元気は欠片も見られなかった。それもそのはずで、彼女はこの戦闘では何の役にも立っていないのだ。攻撃もしておらず、攻撃を躱していただけだ。何かしようと迷っている間に戦闘は終わっていた。ラピスに全てを任せていたのだ。この不甲斐ない結果に、彼女は謝る言葉も間違っているような気がしていた。


 ラピスはそそんなサクラを責めたいとか、何もしてなかったとは思ってすら居なかった。それどころか、この戦闘ではサクラを助けることが出来たという喜びばかりだった。ずっと、守られていて頼っていた彼女を助けることが出来たのだ。それはようやく、サクラの隣に立って一緒に戦える資格の第一歩のように感じていた。サクラに並ぶフローは自分のように戦闘に慣れていないわけではない。むしろ、サクラと一緒に戦って二人で勝利しているのだ。ラピスはその二人に並んでいるとは思えなかったのだ。


「サクラ。私は前の戦闘では全く役に立ちませんでした。何もできず、貴女に守られるばかり。サクラはそれでも私のことを役立たずなんて思いましたか」


「そんなこと思いません!」


 サクラの食い気味な返事が嬉しくて、彼女は顔をほころばせた。


「そうでしょう。それは私も同じです。たとえ、サクラ自身が駄目だと思っても、私はそうは思ってません。貴女は私の憧れでもあります」


 サクラは何もできなかったことについては納得していなかったが、彼女のその言葉に温かさを感じた。心がないと言っていた彼女の心は今、人に温かさを感じさせるほどになっていた。サクラはなんだか、それが誇らしかった。

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