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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
26 エリート & マスター
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エリート & マスター 5

 メイトは三人を連れて、彼の作り出したコピー空間に入った。中には誰もいない。


「急いでいく」


 メイトはそう言うと、足元に土の柱を出現させて、自分を空へと飛ばす。それと同じようにサクラも土の柱で自分を空に飛ばした。さらに彼女について行くように、フローが翼を広げて空を飛び、ラピスは自身を水の中に包み、その状態で空を浮いて移動する。水の球が空に浮いている。その魔法はアクアリウスと戦ったときに、相手の状態を魔法で再現したものだ。やろうと思えば、水の球を分離させたり、触手のような物を伸ばしたりすることもできる。メイトに先導されなければいけないのだが、この中で一番速度が遅いのはメイトで、三人はそれに合わせるように空を行く。


「ここだ。この扉の中に入ったら、すぐに戦闘のはずだ。俺は足手まといになるだろう。変身していかないといけない」


 建物を無視すれば、すぐの場所だった。彼の前には正方形の人一人なら余裕で通ることが出来る程度の大きさの戸があった。メイトは申し訳なさそうな表情をしていた。その顔をするということは、メイトでも対処できない物がその中にいるということである。そして、彼が手助けすることもできない程の強さの物がいるとも言った。サクラはそれほどの強さの物が中にいるとして、ミラクルガールに変身したところで倒せるのか不明と言うことだ。つまりは、そこら辺にいる魔獣ではない。自分が簡単に勝てないような相手。彼女の直感が閃く。


「メイトさん。まさか、この中にいるのはゾディアックシグナルのメンバー、ですか」


「いや、わからない。だが、それくらいの強さはあると思う。少なくとも、俺は負けた。だから、サクラたちに頼むことしかできないんだ。本当に、すまない」


 彼は深く頭を下げていた。そんな彼に、サクラは優しく声を掛けた。


「大丈夫ですよ」


 彼女は鍵を取り出して、それを胸に突き刺した。それを右に捻ると、彼女の体を光が包む。フローとラピスもそれと同じようにすると、彼女たちの体も光に包まれた。そして、光が無くなると同時に、彼女たちは煌びやかな衣装に身を包んでいた。サクラは更にキャンサーのかぎを使ってハサミを出現させた。それを二つに分けて、臨戦態勢になる。フローも両手に剣身が肘から手くらいの長さの剣を持った。ラピスは、体の表面に魔気を流せるように心の準備をした。


「メイトさん。行きます」


「すまない。無事に帰ってきてくれ」


 彼が扉を開き、彼女たちはその扉の中に入った。




 サクラたちが来る少し前、カイトはリブラと互角の戦いをしていた。とはいえ、どちらも一撃も受けていないというだけだ。彼の攻撃も彼女の攻撃も当たらない。防がれるか回避されるか。ヘマタイトは倒れた場所で起きる気配はなかった。


「力を解放してその程度なのですね。背信者の力は、やはり強くはならないということですねっ!」


 これまでの状況を見て、カイトの戦闘力を分析していた。カイトとは違い、リブラは力を解放していない。つまりはそれだけの実力差があるというわけだ。さらに、カイトに関してはリブラとは違い、戦闘することもほとんどなかっただろう。しかし、それでも食らいついているのだから、相当な戦闘力だ。いや、執念かもしれない。


「私は負けるわけにはいかないので。彼が助けを読んでくれるみたいですし、ここで持ちこたえて見せますよ」


 言葉は余裕そうだが、それとは裏腹に服には埃や汚れがついて、ボロボロになっているように見える。しかし、傷は一つもついていない。カイトは高速で移動してリブラとの距離を詰める。そのままの勢いで蹴りを放つ。それが回避さているかどうかは関係なく、リブラを目で追い、次の攻撃を繰り出す。拳を叩きつけるように斜め上から相手に向けて振り下ろす。続けて、足払いをするように地面を這うように足を滑らせる。そのまま相手の後ろに移動して、リブラの腕を掴もうとしたが、それは避けられたが、そのまま前に出てさらに拳を伸ばす。しかし、その拳は土の魔法で受け止められた。


「こちらからです」


 そう言うと、彼女は蔦を絡み合わせたようなネット上の何かを彼に向けて落とした。そんな落下するだけの攻撃に当たるはずもなく、それを回避した後、一瞬で距離を取り、その距離を詰めてドロップキックのような体勢で彼女に迫る。しかし、その蹴りが当たることはなかった。彼の足に鋭い痛みが走る。足に何かが絡まっている。


「ようやく、捕まえましたよ。逃げ回って逃げ回って、疲れたでしょう。休みましょう。貴方に罰を、主に変わって与えましょうっ」


 彼の足には無数の棘の付いた植物が巻き付いていた。その植物の先端には鮮血を啜ったような色の花が付いていた。それはまるで棘が血を吸ってそんな色の花にしたのかと思えるような禍々しい印象を受ける。そして、彼に絡まる植物は足元だけではなく、足全体を飲み込もうとしている。足のいたるところに激痛が走る。

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