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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
26 エリート & マスター
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エリート & マスター 2

 ヘマタイトの笑みは不気味だった。無理やり笑っているような表情だ。メイトは攻撃された場所で膝と片手を付いていた。残った手を口元に持っていき、何度もせき込んでいいる。カイトは彼を介抱することなく、ヘマタイトの方を見ていた。彼に応急処置をする隙があれば、カイトだってメイトを助けたいと思う。しかし、その隙が無いのだ。


「メイト、すまないがすぐには助けられそうにない。これを持って、逃げてくれないか」


 メイトは痛みを堪えるように立ち上がる。腹の辺りを抑えて、自身の超能力で扉を出現させた。カイトから紙袋を受け取り、その扉を開いて中に入る。全身が入ると、彼はカイトの方を振り返った。


「悪い。足、引っ張った。助けを呼んでくるから、それまで持ちこたえてくれ」


 メイトはそれだけ言うと、扉を閉めた。これで、ヘマタイトの攻撃はメイトには届かなくなった。目の前の彼女はどこかへと去ったメイトには興味も示さず、その視界の中心にはカイトを収めている。彼もそれを理解しているため、すぐには動けない。自分の速度以上で動いているように見えたのだ。一瞬ではあっても、自身の認識できない速度で移動し、メイトを攻撃した。それは事実だ。油断なんてできない。


 彼が攻撃方法を志向している間にも、ヘマタイトは動き出す。カイトにはわかるはずもないが、リブラの作り出した植物によって催眠状態にある彼女は思考することもない。反射やヘマタイトが持っている知識と経験から攻撃を作り出すのだ。単調な魔法の使い方ではあるが、その威力と速度はかなりのものだ。この町の冒険者であれば、ミラクルガールを覗けば、ここまでの使い手はいないだろう。そして、その魔法がカイトに向けて使用されている。


 小さな石を作り出して、それをばらまくように発射した。それはカイトの動きを封じるように散らばり、彼が動けば攻撃が当たるような軌道だ。彼もその魔法を見たときにはそれを理解して動かなかったが、攻撃がそれで終わるはずがないと読み、彼は前へと動き出す。動きを封じる軌道と言っても、正面には魔法は飛んできていない。だからこそ、彼女との距離を一気に詰めて、腹に拳を食らわせようとした。拳は確実に彼女の腹にぶつかっているのだが、手応えが感じられない。相手の体にその衝撃が伝わっていないような感覚。それもそのはずで、彼女は殴られる前に、土の魔気をかき集めて、魔法使いが使う土の壁よりも硬度のある土の壁を作り出していた。それも彼の拳がぶつかるであろう場所にだけそれを展開しているのだ。彼は驚いていた。それは拳を防ぐほどの硬度にではなく、本気の速度を出した一撃を防がれたことに、だ。確かに彼は最近は戦闘をしていなかった。それでも、本気の一撃を止められることがあるとは思わなかったのだ。そして、その驚嘆は彼の隙をなる。彼の腹に衝撃が伝わり、後方に吹っ飛んだ。彼の腹を殴ったのはヘマタイトの魔法だ。土の塊が彼の腹に思い切りぶつかったのだ。相手の攻撃がぶつかる瞬間に後ろに吹っ飛ぶように超能力を使ったため、そこまでのダメージにはなっていない。勢いあまって地面にぶつかった時の衝撃の方が衝撃が強いと感じるほどだ。


 メイトは持ちこたえろと言っていたが、この状態ではいつかは自分が負ける未来が見えた。先に体力、魔気が尽きるのはカイトの方だろう。相手は魔法を無尽蔵に使えるような魔法の使い方をしているのだ。取り込める魔気の量が少ないなら、それなりの工夫をして戦わないと、死ぬかもしれないのだ。ここまで無茶な魔法の使い方をするとは思えない。


 彼は立ち上がると、三度相手との距離を詰めた。ヘマタイトは既にそれを迎撃するかのように魔法を展開する。カイトはそれを認識して、稲妻が走るような軌道で移動して、相手の目の前に辿り着く。しかし、そこで重い一撃は撃たずに、軽く拳を前に出す。どこかに当たればいい、と言うような適当な攻撃。ヘマタイトは彼がいる位置に先ほどと同じように岩の魔法を放つが、既に彼はそこにはいない。彼は相手の足元に移動しており、既に相手の膝裏を蹴った。体制が崩れそうになるのを堪え、それと同時に再び岩の魔法を使うが、その魔法が彼に当たることはなかった。彼はヘマタイトの真横にいて、横っ腹に拳を叩き込んだ。バランスも崩れていて、反撃することが出来ない。彼の動きに対応できていないのだ。一撃の対応力で言えば、ヘマタイトの方が上だっただろう。しかし、彼が動き続けるとなると話は変わってくる。催眠状態にあるヘマタイトには先を読むという行動は出来ない。相手の動きを封じるような魔法を使っているように見えるのは、ヘマタイトの知識を利用してそれを再現しているだけに過ぎない。彼女を操っている植物が思考しているわけではないのだ。攻撃を受けることでそれに対応しようとしているだけで、攻撃に対しては後手に回る。ならば、その対応速度を超えるように動けば、どんな攻撃だって彼女に届く世になるだろう。

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