後の祭り 3
「それで、そいつを使ってどうするんだ」
「彼女の腹滝を主に見てもらうのです。そして、私の信じるモノが間違っていないと、皆に知ってもらうのですっ。まずは私と同じように正義を示してもらいましょう」
リブラはそれを疑いもなく、言い切った。カプリコーンは洗脳状態のヘマタイトを使ったところで、彼女が間違っているかと言うことと、どう繋がるのかわからなかった。しかし、それを言うとリブラが不機嫌になり面倒くさいことになるだろうと思ったので、それを口に出すことはしなかった。
討伐した魔獣はサクラたちではない冒険者たちによって解体された。魚型の魔獣と言うのは海の近くでもなければあまり遭遇することもない。近くに海がないこの町では魚を食べることが出来る機会と言うのは滅多にない。海の近くから運んでくると、ここで商売する前に腐ってしまい、売り物にならなくなるのだ。だから、大量の魚型の魔獣は町の皆に、祭りの後の打ち上げような形で振舞われた。町の人々は祭りが終わった後だというのに、まだ祭りの中のようなテンションの上がりようだった。そうなるほど、魚が珍しいというわけだ。しかし、そこにその魔獣を討伐した人たちの姿はなかった。
サクラ、フロー、ラピスはサクラの家にいた。ヘマタイトがどこに居るかわからない以上、どうすることもできない。しかし、待っているだけで何もできないという状況でじっとしていられる性格ではないのだ。彼女たちは結局は家でじっとしていることは出来ず、部屋を出た。外に出ても特に手がかりはなく、最後にはただ町を練り歩いただけと言う結果だけが残っているのだった。
彼女たちが落胆しつつも、翌日も町に出ていた。祭りの後は、町に活気が戻ってきていた。前ほどではないものの、冒険者たちも祭りでの活躍を認められたのか、再び町に受け入れられていた。そのお陰で、冒険者ギルドにも再び仕事が依頼されているようだ。冒険者たちにも明るさが戻ってきていた。そして、態度の悪かった冒険者たちも自身の態度を改めた人も多く、冒険者ギルド自体の仕事の質も上がったという。ナチュレはこれからは仕事の依頼をしてくれる人も増えていくだろうとか予想していた。何より、サクラたちが町を襲った魔獣を圧倒的な力で倒したという話が広がっているのだ。そして、煌びやかな服を着ていないうまく魔獣を使っていた女性の噂も広がっていた。それ以降、その姿を見ることはないため、噂の中ではミラクルガールの秘密の仲間と言う飛躍した話も出回っているようだ。四人目のミラクルガール見習いと言う話も出ている。何はともあれ、ミラクルガールが増えるということは町が安全になるということだ。そのお陰もあって、町は明るさを取り戻していた。
しかし、不安定な平和と言うのは、簡単に崩れるものだ。一時の勢いは小石程度の問題でも岩のように大きな問題だと持ち上げられることもある。
広場に繋がる大きな通りから枝分かれしてる路地の一つから大きな音がした。そこには巨大な岩が出現した。その路地から一人の男がふっとばされてきた。彼は前進が黒い服で露出している肌の部分が土埃で汚れていた。そして、その身に似つかわしくない煌びやかな宝石をいくつか握っている。その見た目から明らかにそれが盗んだものだと思われるだろう。実際に、彼はそれを盗んできたのだが、彼自身は岩で吹っ飛ばされるほどの悪事だとは思っていない。なぜなら、彼は既に瀕死状態だった。もしこんなことになるなら、窃盗なんてしようとは思わなかっただろう。未来を読めないのだから仕方のないことだが。
「なんで。なんでッ!」
男がそう叫んでも、状況は変わらない。むしろ、彼が死んでいないことを確認すると岩の魔法を使った人物から魔法での攻撃が向かってくる。しかし、その魔法が彼に届くことはなかった。彼を庇ったのは、二人の男だ。片方は黒いベストに白いシャツを来た、清潔感のある男性。もう一人は、マントを来た冒険者らしき男性だ。
「こんな町中でこんな被害の大きい魔法を使うなんて、常識の無い方なんですかね」
「まぁ、そう言う奴もいるだろうよ」
その男性たちはメイトとカイトだ。カイトは手に紙袋を持っている。その紙袋にはウェットブルーで提供する料理の材料が入っている。彼はその紙袋も守ったまま、彼を守ったというわけだ。メイトはマントを翻し、かばった男に振り返る。
「悪いことはやめた方が良いぜ。ほら、さっさと逃げてまっとうに生きるチャンスにしろよ」
男は強張った表情のまま、宝石をその場に投げ捨てて逃げていく。
「優しいなぁ、逃がしてあげるなんて」
「うるさい。死んで償うなんてバカバカしい。償うチャンスくらいは言いだろ?」
「それは当然、そうだね。さて、彼女たちのようにはできませんが、真似くらいは出来ますかね」
メイトとカイトは土の魔法を使った相手と対峙するつもりで、戦闘態勢を取った。




