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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
24 暴走する悪
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暴走する悪 9

 ラピスの前に魔獣が迫る。しかし、彼女は諦めてはいなかった。確かに電撃は訊かなかった。しかし、それはティバーフィッシュの外側の話だ。彼女は相手の口に向かって電撃を先ほどより強い圧力で放った。バチバチと音を立てて、魔獣の開いた口の中に稲妻が走る。口の中がぴかっと光り、相手の体を雷が貫いた。魔獣は少し進んだところで、推進力を失い地面に腹をこすりつけて前へと滑る。ラピスの前でそれは止まり、少しも動かなくなった。風と風の属性を混ぜ合わせたのだから、単純な風魔法よりも格上の威力があるのは当然だろう。しかし、外側の鱗はそれを防いだのだから、かなりの外側はかなりの耐久性があると考えた方が良いだろう。ラピスは黄緑色の光る球をもう一つ用意して、向かってくる魔獣との戦闘を続ける。




 広場に魔獣が回遊している。ヘマタイトの目にはその地獄のような攻撃が映っていた。広場に残っている人はもういない。彼女は目の前の攻撃が現実でないかのようにぼうっとしてそこにいた。煌びやかな衣装を着たまま戦闘をしているのが、とても印象的で、より現実感をなくしていた。彼女は逃げようと思った。しかし、その次に浮かんだのはどこにと言うことだ。当然、あの部屋が浮かぶわけだが、今はその部屋に戻りたくなかった。今、部屋に戻ったらまた元の引きこもりになるのは目に見えている。今日のことも夢だったと近いうちに忘れるに違いないのだ。しかし、今日の彼女はこの祭りを楽しんだのだ。最後をこんな地獄のような光景のままで絞めてしまっていいのだろうか。囁き声はもう聞こえていないにも関わらず、彼女は囁き声の言葉を思い出していた。やりたいことをやれ。


「そ、そうだ。こんな地獄は、終わらせなくちゃ」


 誰かのためにと言うわけではない。自分の思い出を綺麗なままにしたいというだけだ。彼女の周りに大きな岩が出現する。それは彼女が作り出したものだ。彼女は土の妖精と人間のハーフ。土の精霊の力のお陰で土魔法を使う場合は、周りにある土の魔気に直接、働きかけて魔法を使うことが出来るのだ。さらに、自身の体内の土の魔気を使う場合にも詠唱が必要がない。しかし、彼女はそこまで大きな岩を作ろうとしたわけではない。しばらく使っていない力はすぐには制御できないのだ。巨大な岩が出現したことで、魔獣の一部が彼女に気が付いてしまった。三体のティバーフラックが向かっていく。ヘマタイトは戦闘の一体に向かって岩の塊をぶつけた。相手がそれを突破するのがわかっていたかのように次から次へと岩を顔面にぶつけていく。その衝撃で鱗が地面に落ちる音が聞こえてくる。一体が地面に沈んだ。残り二匹。彼女は一体に向けて、手の平を向けた。冷たい視線がその魔獣に突き刺さる。次の瞬間にはその魚の下から太い柱がぶつかり、それと同時にその魔獣の上にも太く長い棒状の柱が出現して魚を上下に挟んだ。魚は暴れて逃げようとしていたが、それも叶わず、魚がその柱に潰された。柱は左右にずりずりと移動して、中の魚をすり身にした。残り一匹。既に彼女の背後に迫り、今にも彼女を口に入れようと、鋭い牙が並ぶ口を大きく開けていた。その口を閉じるように地面から細い柱が出現した。それは相手の顎にぶつかり、相手の口を閉じるのかと思いきや、相手の顎を貫通してその場で魚を動けないように固定した。柱は顎に突き刺した一本だけでなく、地面から何本も伸びてきて、鱗を割って体を貫通した。いくつもの柱に貫かれた魚は既に息絶えていた。柱が消失すると、地面に落ちて横たわった。その強さに惹かれるように、さらにティバーフラックが彼女の方に集まってくる。フローやサクラと戦っている魔獣はそのままだが、ヘマタイトの近くにいたラピスと戦闘していた魔獣はヘマタイトの方へと移動を開始した。ヘマタイトはそれを認識していた。先ほどよりも数は多い。しかし、彼女へと向かっている魔獣のほとんどは彼女の視界内にいる。


「確か、お父さんの魔法はこうやって」


 彼女は三つほど、掌より少しだけ大きい、石を作り出した。それは平たく円形だ。石の淵に行くほど薄くなっている。彼女はそれを回転させた。そして、それを向かってくる魚に向けて飛ばした。石は戦闘にいた魚の鱗を削り、相手の体に傷をつけた。そのまま体の中に侵入する。その入り口から残りの二つも中に入る。その後、その体を虫食いにするかのように、体の中に穴を開けていく。その動作に時間はかかっておらず、もう魔獣の一体を討伐した。一体目の死骸の中から、回転する石が体を突き破って出てきた。そのまま、次の魔獣を餌にするかのように簡単に殺していく。

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