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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
24 暴走する悪
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暴走する悪 4

祭りの計画は滞りなく進んだ。町中を巻き込んだ祭りの開催に町の人たちも明るくなっていた。サクラもそれを見て、自分のしたことが間違っていないと思った。祭りの開催日も決まり、子供も大人もそわそわしているように見えた。そして、フローたちのパトロールの効果もあってか、悪いことをする人も前と同じくらいに戻った。少なくとも表通りで、脅迫や窃盗は起きていない。人目に触れない場所では悪いこともしているかもしれないが、全てをカバーすることは出来ないので仕方ないのかもしれない。何はともあれ、祭りの準備は着々と進んでいた。


 祭り前日。広場にキャンプファイアーで使う丸太を組んだ焚火を作った。冒険者たちでその丸太を組んで、最後に中心に火をつけた。その組んだ丸太が崩れても周りに燃え広がらないように、目立たないように土が広げられていた。丸太が組みあがっていう様子を町の人たちは楽しそうに見ていた。そして、最後に火を灯すとおぉっという歓声が上がった。人々がその炎を囲んで、談笑している。明日はどうしようかとか、明日は売り上げを伸ばすぞとか、元から活気のある町ではあったが、祭りと言うこともあってさらに、騒がしくなることだろう。しかし、それはうるさいというわけではなく、楽しさを伴ったものになるだろう。




「こんな時に祭り? 馬鹿じゃないのか、この人たち」


「羨ましいなら、スコルピオも楽しめばいい。深いフードを被れば、ばれやしないだろう」


 夜で月明かりも届かない路地の中、緑色のツタのような髪を持つ女性と、全身を隠し、弓を持った男性が話していた。女性の方は、祭りの騒がしさを煩わしいと感じているようだ。反対に男性は落ち着いているが、内心は祭りで町が活気づいていることは良いことだと感じているようだ。


「まぁ、祭り自体は嫌いじゃないけどね。どうせ、こんなの思いつくのは、桜色のミラクルガールでしょ。それが気に食わないってだけ。それに、人は弱ってる方が、私の薬に逃げてくれるし」


 彼女は頬を上げて、悪い笑みを浮かべていた。男性はそれを見ても特に何も思っていないようだった。彼女から視線を外し、町の人の騒ぎ声に耳を傾けていた。


「おや、こんなところで出会うなんて神の御導きでしょうか」


 そこにでてきたのはシスター服を着た女性と、紫色の肌を持つ男性。リブラとカプリコーンだ。リブラは指を組んで、天に祈る。


「主よ、この出会いに感謝致します」


 そんな彼女のことを見て、カプリコーンは軽く溜息を吐いた。


「よくリブラといられるね。いつも主よ、主よって言ってるけど」


「まぁ、確かにこんな感じだがな。気を遣わなくていいしな」


「気を遣うって言葉をまさか、君の口から聞くことになるとは思わなかったよ」


 冗談めかして、彼女はそういった。カプリコーンはそれに怒るほど狭量ではなく、その言葉を笑って受け流した。


「それで、どうしてここにいるのですか。私たちは悪い人がいないか、見ていただけなのですが」


 リブラの言うことをそこにいる誰も理解していない。カプリコーンもその目的は今知った。特に目的はなく歩いているのかと思っていたのだ。カプリコーンは軽く息を吐きだした。スコルピオはそれを見逃さず、にやりと笑っていた。カプリコーンは溜息を吐いたが、何も言わなかった。カプリコーンは特にリブラが好きと言うわけではない。単純に一緒にいて、行動しやすいというだけだ。カプリコーンの持っている囁くという特性上、リブラが彼に説教しに来ることも多い。そのため、いつの間にか一緒にいるというだけだ。明確な友情という物ではなく、腐れ縁と言う言葉の方が似合うだろう。


「俺たちは、いつもこういうところにいるだけだ。明るいところは苦手でな」


 人々が騒ぐ声を聞いていたサジタリウスがリブラの言葉に返事をした。サジタリウスとスコルピオはあくまで仕事をする上での付き合いだ。サジタリウスがサポートを万全にするために多くの時間を一緒にいるが、友達という感覚が強いだろう。だから、任務外でも軽口で喋っているのだ。


「おや、四人も集まっているのは珍しいね」


 四人が集まっている路地にもう一人、男性が歩いてきていた。見た目は村人と言ったような平凡な格好をしている。白い無地で薄汚れたシャツの上にこげ茶色のベストを着ている。緑色のパンツは足に張り付くようにパツパツだ。足にはブーツを履いていた。彼の姿を見た瞬間、全員が膝を付いて、頭を下げていた。リブラだけは両膝を地面に着いて、指を組んで祈りを捧げるような恰好をしている。


「いつも言っているけど、そんなことしなくていいよ。私と君たちは対等ではなくとも、そこまでされるほどでもないはずだ」


 そう言われて、リブラ以外は膝を付くのを止め、立ち上がる。リブラは彼が去るまでその格好を止めないだろう。それを周りの皆は知っているため、何も言いはしない。祈りを捧げられている男性も彼女のことは放置である。


「僕の力を与えた者は二人やられた。だからどうしたというわけではないのだが、君たちには忠告をしに来たんだ。ミラクルガールとの戦闘時には油断しないように、とね。それだけさ」


 要件は本当にそれだけのようで彼は来た道を去っていく。リブラ以外は顔を見合わせて、彼の言った意味を考える。本当に忠告だけだったのだろうか、と。

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