英雄 3
「そんなふざけた格好で戦ってるんだ。強いわけがないんだ。俺の方が強いって照明してやるよッ!」
サクラが変身し、衣装が変わる。その衣装を見た彼は更に苛立ちが増しているようだった。剣を改めて構えて、彼女に剣先を向けている。先に動いたのは相手。走り出して右手の剣を横に振るう。サクラはその読みやすい太刀筋を次の攻撃の予測もしないで、後ろに下がって回避する。彼女の移動に吸い寄せられるかのように、相手は更に前に出る。先ほどより一歩が大きく、二振り目の剣身が彼女に近づいていく。先ほどとは反対方向から剣が迫る。彼女は自分に剣がぶつかる前に、胸にキャンサーの鍵を胸に差し、ハサミを出現させた。ハサミをばらす時間もなく、相手の剣をそのハサミで受け止めた。刃のある方ではなく、ハサミが閉じた状態のまま受け、そのまま相手の剣を跳ね上げようとしたが、その前に剣が引き下がった。相手は次の一撃を出さずに引き下がった。その間にサクラはハサミを分離したのだが、その瞬間に彼女は腹に衝撃を受けた。ミラクルガールの力のお陰で、痛みはないものの、彼女は後ろに何歩か後ろに下がらされた。彼女は何をされたのか理解できないが、次の攻撃を警戒した。ハサミは分離できたが、今の相手の攻撃がもう一度来ても対処できないだろう。
相手がまた素早く近づいてくる。剣を下から上に振り上げて、彼女のハサミを弾こうとしていたが、彼女の手からハサミは離れなかった。相手は剣を打ち上げられないとわかると、剣先でハサミを撫でるように躱して、剣を振り上げる。打ち下ろされるかと思いきや、次は横から剣が打ち付けられた。ミラクルガールの服のお陰で、体が斬れることはないが、勢いはそのまま彼女の体がうけることになる。そのため、横から打ち付けれた剣の威力を体はそのまま受けて、彼女は横に少し吹っ飛ばされた。ゴロゴロと転がるほどではないが、両足が地面を滑る程度には衝撃があった。彼女は体勢を崩して、身を低くして地面を滑らされた。隙だらけの状態で、彼女は相手の次の攻撃が目の前まで来ていると考えて、ハサミをクロスさせて、防御態勢を取る。しかし、相手は追撃する気がないのが、攻撃した位置から動いていない。彼女のその行動を疑問に思っていると、すぐにそのハサミに何かがぶつかった感触があった。金属と金属がぶつかったような音がした。それが相手の攻撃なのかもしれないが、攻撃の正体まではわからない。何らかの魔法か、超能力か。どちらにしろ、攻撃が見えない以上、対処するのは難しい。見えなくともその正体がわからない限りは確実に対処するというのは難しいだろう。
不可視の攻撃に対して考えていると、既に相手がサクラの上にいた。今度は剣を空中から剣を振り下ろして、彼女を叩き斬ろうとしているような様子だ。しかし、どれだけやっても、人の武器で人の力である以上、ミラクルガールである彼女に傷をつけることは出来ないだろう。体力切れを狙って、攻撃し続けるしかないのだろうが、男が人であるなら、先に体力切れになるのは男だろう。それでも、男は連撃で彼女に攻撃し続けた。サクラは相手の素早い連撃に付いていけていない。二、三撃を回避したり、いなしたりすることは出来るが、それ以上に連撃が鮮やかで全ての攻撃を防ぎきることは出来なかった。
「火よ。我が敵を焼け! ファイアボールッ!」
剣での攻撃が緩んだと思った矢先に、相手の口からその呪文が呟かれた。彼女の眼前に火の球が出現する。そこまで威力があるようには見えない。その火の球は顔女の顔面にぶつかる。火が彼女の顔に広がるが、熱も痛みも感じない。ダメージは零だったが、彼女は胴に一瞬で、二つの衝撃を受けた。左右からほぼ同時に衝撃が加わり、息と共に声が出た。腹に何かが突き刺さるような感触がして、彼女は後ろに吹っ飛ばされた。体がくの字に曲がったが、着地の瞬間には足を地面に着けて、後ろに滑るようにして勢いを殺した。彼女が相手をみようとしたが、既に目の前に男はいた。痛みもダメージもないが、殺意を向けられ続け、自分が何もできない状況と言うのはかなり恐怖心を煽る。いつか、自分を守るこの力が無くなった瞬間に負けるということだ。それが来る前にどうにかして決着を付けなければいけない。しかし、相手の攻撃が素早く、自分の攻撃を挟む余地があまりない。魔法を使おうと思っても、魔法を想像する前に次の攻撃が来て、想像を乱されてしまう。起動、過程、結果。その全てを一連の流れで想像できなければ魔法を使うことは出来ない。まさしく、彼女はピンチだった。何もできないという相手は今までいなかったのだ。彼女の顔には焦りが浮かんでいる。こめかみのあたりを冷たい汗が通った。




