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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
22 貴方がいなくなるくらいなら
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貴方がいなくなるくらいなら 4

「いい加減、死んでくれないかな!」


 スライムの触手が彼女の腹の真ん中を打ち付けられた。しかし、彼女は吹っ飛ぶこともなかった。彼女は体の表面に薄く土の魔気を装甲のように広げていた。それに触れた触手は少しずつ土の侵蝕されていく。先ほどと同じように土の包まれた触手は地面に落ちた。スライムはもういい加減その侵蝕する土の魔法にイライラしていた。攻撃してもダメージがある様子はなく、攻撃し続ければ自分の体の一部が土に取り込まれる。その割には止めを刺されるほどの攻撃はしてこない。まるで馬鹿にされているようにも感じていた。


 ラピスにとって、スライムがどう感じるかと言うことはどうでもいいことだった。彼女自身は止めを刺すことを考えていないのだから、彼女はスライムを倒せるほどの攻撃はするはずがない。そもそも、彼女は自分一人で、目の前の敵を倒せるとは考えていないのだ。彼女は自身の役割をサポートだと考えている。今は、敵の足止めとサクラが倒しやすいように攻撃して、相手にダメージを負わせることを目的としているのだ。


 ラピスは器用に相手の攻撃から自身を守るように体を動かしたり、魔法を駆使してスライムの攻撃から身を守っていた。スライムも警戒して、触手での直接攻撃は出来ない。そのせいか、スライムの体から水の球が分離して、いくつも出現した。それらは、ラピスを取り囲むような配置に移動している。そして、彼女を取り囲むと、その水の球からレーザーのような勢いの水が射出された。これまで魔法から身を守っていた彼女だが、全方位から攻撃が来るとその全てに対処するのは難しかった。風の膜を使っても、レーザーの勢いがありすぎて、防ぎきることは出来ないだろう。土の壁を出現させても守り切れるかどうかわからない。侵蝕する砂の魔法は意味がない。それでも、サクラは全てに対処できなくともいくらか、ダメージを軽減しようと、正面と左右に土の壁を出現させた。背面から来る攻撃に対処しようとしたが、壁を出す前に、彼女にレーザーが到達するのは彼女自身もわかっていた。ラピスはそれを理解した上で、目を瞑ったり、腰が引けたりはしていなかった。


「ラピスッ! 大丈夫ですか!」


 彼女の前に何かが降り立つ。それは彼女に迫るレーザーを斬り裂いていた。バラバラのハサミに桃色の服。リボンがゆらゆらと揺れている。目の前にいるのはサクラだった。彼女はラピスの方に振り返り、ニコリと笑った。疲れているのがわかる笑みだが、サクラの中の闘志はなくなっていないのがわかった。力強い瞳がそれを物語っていた。ようやく登場したサクラに、ラピスは笑いを返した。


「ラピス。ありがとうございました。まさか、一緒に戦ってくれるとは思っていませんでしたよ。でも、嬉しいでです」


 二人が目を合わせているとスライムが続けて攻撃を仕掛けてきた。ラピスとサクラはそれをその場から跳んで回避する。スライムは先にサクラを狙って、レーザーをぶつける。空中で回避する手段は彼女にはない。翼も、器用に魔法を使うこともできない彼女にはそれを回避する手段はなかった。ラピスはサクラにレーザーがぶつかるのが見えていた。しかし、ラピスは焦ってはいない。彼女なら何とかするだろうと信じているからだ。それより、次の攻撃を打たせないことが重要だと考え、彼女は風の魔気で作り出した見えない刃で水の球をいくつも斬り裂いた。斬られた水の球は宙に溶けるように消えたのだが、いくつかは分裂して生き残る。その水の球からラピスに向かってレーザーが発射される。魔法で姿勢を変えながら、レーザーから身を守っているが、それも長くは続かない。彼女もサクラがやられたように、レーザーのいくつかが、彼女の体に照射されていた。その勢いを受けて、彼女は地面へと落下していく。地面にぶつかる前に、上昇気流を起こして自身の体にかかっている落下の勢いを殺して地面に立った。レーザーは彼女を狙って照射されづけている。彼女は土の魔法を駆使して身を守ることしかできなかった。


 レーザーにふっとばされたサクラは木の幹にぶつかって倒れていた。彼女はすぐに立ち上がる。痛みはすぐに消え、レーザーにぶつかったはずの場所も何もなかったように痛みも消えていた。彼女はそれを不思議に思ったが、それよりもラピスの元に戻らないとと言う意識が強かったため、そのことは忘れてラピスのところへと急ぐ。


 サクラの体は無意識の内の超能力で自身の治癒能力の上限を上昇させていた。今の彼女はレーザーで体を貫かれても簡単に自らの治癒能力で治せるほどの能力があった。それは彼女が無意識に超能力を使った結果だ。傷をすぐに治して、ラピスの元に行かないといけないという意志が彼女の体を変えたのだ。

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