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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
20 リトルプラスと
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リトルプラスと2

 ヴァンとの交渉が終わった後、フィールは既に掲示板で次の依頼を決めようとしていた。彼女は明日にでも、サクラと一緒に依頼を受けようとしているのだ。ヴァンは彼女のスピードに付いて行けず、少し遅れてフィールの隣に立って依頼を見定めていた。


「サクラさんがいるからと言って、あまり無茶な依頼は駄目よね」


「それは当然だね。迷惑が掛かるとかそれ以前の問題だよ。と言っても、僕らのレベルじゃ、今は森の入り口から少し奥に行ったところでの採取系の依頼だけかもしれないけど。魔獣討伐は僕らの手には余るよ」


 森の奥にいた魔獣が森の浅いところに出てきてしまったことで、弱い魔獣は淘汰された。その結果、試験官が出来るようなレベルの冒険者以外では魔獣討伐の依頼を受けるにしても、かなりの大人数で受けることになる。報酬は参加した人で等分されるため、あまり割りのいい仕事にはならない。苦労の割りにはあまり報酬がないとなれば、わざわざ命の危険を冒してまで依頼を受けようとは思わないのだ。それなら、町中の安全な依頼を受けるという冒険者が増えていた。リトルプラスもぎりぎりでやって来れていたが、それも限界になっていた。そんなときに、サクラが一緒に来てくれると言ってくれたのは、リトルプラスにとっては僥倖という他ないのだが、そんな利益はあまり考えていない二人が仕切っていた。


 結局、簡単そうな魔獣討伐の依頼を受けた。サクラと森で出会う前に受けていた依頼も今、受けた依頼と似たような依頼を受けていた。この森の以上が出る前は森の中、深いところまで行かずとも森の中で探索しないといけないような魔獣の討伐依頼だ。今では、少し森の入り口から中に行くだけで見つかるだろう。簡単そうに聞こえるが、そこそこ強い魔獣のはずだ。その魔獣が既に森の入り口付近にいるというのは中々怖いことだろう。だから、ギルドでも対処に困っているのだ。これでも、フローや他の試験官が出来るような実力を持った冒険者が魔獣を倒しているから、町や街道には被害が出ていない。


「では、明日はよろしくお願いします。待ち合わせはこのギルド内で」


 依頼の説明や、待ち合わせる時間などの説明を聞いて、最後に確認を終えて、その日はリトルプラスとは別れた。サクラは明日が楽しみだったが、その日はぐっすり眠っていた。


 翌朝。サクラはギルドに向かっていた。ギルドに着くころには待ち合わせの時間より少しだけ早いが、サクラは待つのは苦手ではない。それより待たせるのが嫌なので、ギルドには待ち合わせ時間より少し前に着く予定だった。


 そして、ギルドに着いて中に入ると、掲示板の横のスペースに既にヴァンがいた。まだ他のメンバーは見当たらないが、もしかすると近くにいるのかもしれない。サクラはヴァンに駆け寄ろうとして、肩を叩かれた。いきなり声を叩かれて、肩がびくりと持ち上がった。


「サクラさん。おはようございます」


 サクラが振り返ると同時に、後ろにいた人はにこやかに挨拶していた。彼女に声を掛けたのはフィールだった。サクラは彼女だとわかると、安堵して挨拶を返した。フィールは朝食を外で食べてきたところだったらしい。サクラがギルドに入るのが見えたため、中に入ってきたと彼女は言った。そして、フィールと共に、ヴァンのところに移動した。彼は手帖を見ているようだったが、フィールが声を掛けると、ヴァンは顔を上げて朗らかな笑みを浮かべた。


「おはようございます。お早いですね。まだ、待ち合わせ時間ではないのですが。フィールも遅刻しないなんて、偉いですね」


「そ、それは言わないでくださいっ。良いじゃないですか。サクラさんと一緒だと思うと遅刻なんてできませんよっ」


 ヴァンは、はははと笑っていた。フィールも強い言い方をしていたが、本当に怒っているわけではないのだ。


「残りの二人、コーチとコンヴィーは来ていないんですか」


「ああ、二人は時間ぴったりに来ますよ。早くも来ませんし、遅刻もしませんから」


 そして、少し待って、ギルド内の時計の針が、待ち合わせ時間を示すと同時に、ギルドに二人が入ってきた。


「本当に時間通りに来ましたね」


 サクラは感心したように頷いて、ヴァンを見た。彼は微笑んでいるだけで、特に返事はしなかったが、サクラは気にしていない。


「それじゃ、皆さん。そろいましたし、行きましょうか」


 ヴァンが皆を先導して、ギルドを出た。こうして、リトルプラスとサクラは依頼に出掛けたのだった。




 町の出入り口のところで、ヴァンが改めて依頼の説明をする。四人は真剣な顔で、依頼の内容を聞いていた。戦闘になった場合は、ヴァンの指示を優先するが、危なくなったら無視しても構わないという打ち合わせをした。サクラはそれが少し怖いことだと思ったが、冒険者である以上、パーティでも自身の命が優先と言うことなのだろう。全ての打ち合わせを終え、持ち物に不備がないかを確認してようやく町を出て森の中に入っていった。


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