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ミラクルガールは星の力を借りて  作者: ビターグラス
20 リトルプラスと
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リトルプラスと1

 サクラは誰かと一緒に組んで、依頼をこなすという経験はあまりない。フローと一緒に受けた盗賊討伐が記憶に残っている。その依頼も一緒にと言うよりはフローの監督と言うような立場だったため、あまり一緒にと言う風ではなかった。それ以降も、いくつも依頼を受けてはいるが、大体手分けしているため、戦闘するときは基本一人だ。町の入り口で待ち合わせて、ギルドに一緒に報告しに行っているため、一緒に依頼をこなしているという気はしない。共闘と言う意味ではアクアリウスとの戦闘の時が一緒に戦ったと言える戦闘だったかもしれない。フロー以外では、オブ姉と一緒に依頼を解決しようとしたことはある。アクアリウス戦の時も一緒に戦ってくれた。


 思い出してみれば、フローやオブ姉と依頼をこなした回数は少なくないと改めてわかった。サクラはフローやラピス、オブ姉以外とチームを組んで依頼をこなしてみたいと思った。サクラは一人でも強く、フローやオブ姉と組めば、間違いなく簡単に依頼をこなせるのだ。アクアリウスのような強さが無ければ苦戦を強いられることもない。だからこそ、普通の冒険者と一緒に組んでみたいと思ったのだ。


「ヴァンさん。次に受ける依頼は私も一緒に行ってもいいですか」


 ヴァンもフィールも驚いた様子で、二人は少しの間、固まっていた。ヴァンより先にフィールが先に意識を取り戻して、彼女の言葉に返事をした。


「えっと、それはとてもありがたいのですが、大丈夫ですか。私たちは完全に足手まといになると思うのですが……」


 彼女は純粋にその心配をしていた。実際、サクラやフローと組める冒険者はいないのだ。彼女たちがいれば、受けた依頼を失敗しないだろうと信じられているのだ。彼女たちはそれだけの能力が証明されていた。その憧れがあるからこそ、足手まといになり、サクラの迷惑になることはしたくないのだ。


「確かに、僕たちはあまり強くありません。最近は森に入って出てくるのも一苦労するようになってしましました」


「そうなんですか。……そうですね。やはり、私も一緒に行きたいです。お邪魔でなければ一緒に行きたいのですが」


 サクラが上目遣いでヴァンを見る。ヴァンは強いと言われている彼女の可愛い上目遣いに心臓が強く鼓動を打った。サクラは特にかわい子ぶっているわけではないが、慎重さのせいで上目遣いになっていた。フィールにはその視線は言っていないが、彼女の視界にもサクラの可愛い顔が映っている。それが決め手なのかはわからないが、ヴァンより先にフィールが彼女の片手を両手で持ち上げて、握りこんだ。


「お邪魔なわけありませんよっ。一緒に行きましょう。明日にでも」


 ヴァンはリーダーの仕事を取られたのにも関わらず、ニコニコして喜んでいるようだった。残り二人は大してサクラのことを気にしている様子はなく、勝手にしてくれと言ったような様子だった。元々、パーティメンバーを決めるのもヴァンとフィールの仕事なのだろう。コーチもコンヴィーも戦闘専門の役割なのだろう。きっとヴァンが連携してくれと言えば、連携するように戦うはずだ。サクラも戦闘になれば、リトルプラスに合わせるべきだと考えている。サクラは単純に考えているが、知らない相手との連携と言うのは難しい。フローもラピスもサクラと付き合いがあるから連携出来ていたのだ。サクラはそんなことは頭にもなく、その日は少し浮かれながら、リトルプラスをギルドまで送っていった。


 ギルドではヴァンが受付に言って、報告を済ませていた。その間、それ以外のメンバーは掲示板の横で誰の邪魔にもならない位置で大人しくしていた。サクラもそこに一緒になって待っていた。その間、フィールがサクラをじっとみてニコニコしていた。彼女は確かにサクラの戦闘力が強いというところも好きではあるが、一番はその可愛らしい見た目に惹かれているのだ。人目が無ければ、彼女はきっとサクラを抱きしめているだろう。もし、そうしようものなら他の二人に止められるだろうが。抱き着きはしないが、彼女への好意は漏れ出ているのだが、サクラは気づいていないというか、大してフィールの様子を気にも留めていないと言った様子だ。彼女の中には既に、リトルプラスと一緒に依頼をこなすことを楽しみにしている。


 ヴァンが受付から戻ってくると、彼の手には報酬が握られていた。その袋から、サクラにお金を渡そうとしていたのだが、サクラはそれを拒否した。と言うか、彼女は護衛したというような認識でもなければ、彼らを助けたのは自分ではない。だから、彼らが自分に支払うお金はないということを、印象が悪くならないように柔らかい言葉を使って、説明した。それでも、彼は何とか受け取ってもらえないかと交渉していた。


「それなら、そのお金は一緒に依頼を受けるとすると、きっと私は迷惑を掛けますから、その迷惑料として収めてください」


「迷惑だなんて、そんなことあるわけないですよ。ほんと、僕らの方が迷惑をかけてしまうでしょうし」


 それでも食い下がろうとしたヴァンをフィールが片腕を彼の前に出して止めた。ヴァンはどうして止めるのと言うような表情をしているが、フィールは一言こういった。


「この分、サクラさんの荷物にならないように頑張りましょうよ」


 フィールはサクラがそう言う、お金のやり取りが嫌いなのかもしれないと勝手に解釈し、方便を使って彼を止めた。サクラがフィールにありがとうございますと、耳打ちすると、彼女はサクラの方を向いて、へにゃりと笑った。

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