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プロローグ

 世界は別に優しくない。

 ニュースは毎日悲しい現実を語り、耳には暗い言葉ばかりが届く。

 希望になんて溢れてないし、夢を語ったって虚しいだけだ。

 一人で声を上げたって、声はどこにも届かない。

 未来なんて、変わらない。

 だから、全てのことに無関心でいる方が、ずっと楽なんだ。




       ◆




 目の前の車道で、耳をつんざくような衝突音を上げて、人がはねられた。

 僕はそれを、なす術もなく眺めていた。自分の願いと良心のために、他の全てを犠牲にしたという事実を、この目に焼き付けながら。


 だから、僕は諦められない。


 何度も、何度でも、力の限り走って、彼女に追いついて、彼女を守るために。彼女を守るために犠牲になる命がなくなるまで。

 でもそれは、その回数の分だけ、彼女か、彼女の代わりに犠牲になる子供の死を目撃するということで。


(……諦めない)


 何度自分にそう言い聞かせようとも、心と意志が直結していないことは、僕自身が十二分に理解している。


(つらい……)


 僕が時間を巻き戻したいと思ってもこの現象が起こせるわけではないし、まだやれると思っていても、時間が進んでしまうこともあった。


(諦めない)


 この現象は、僕自身にもどうにもならない心の奥の奥にある感情に反応するようだから。


(つらい)


 その感情が決意の中に萌す度に、僕は戦慄するのだ。


(諦めたく、ないのに……)


 自分の心の弱さに。

 浅ましくて、すぐ楽な方に逃げようとする、意志の弱さに。

 辛くて、心が折れてしまいそうだ。


(諦めて、しまったら……)


 もう二度と、彼女には会えなくなってしまうのに――。




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