突然に
雷鳴が轟き、雨が降り注ぐ今日の夜。
今にも崩れそうな断崖絶壁にぽつんといかにも危なげな研究所がある。
そんな研究所の中にたった一人、作業をしている人物がいる。
辺りには大小問わず様々な機械が散らばっている。
どの機械も何をするか、何のために使うのかがまるで見当がつかない。
その人物は男性であるが、にしては身長がせいぜい155cmほどでモジャモジャの白髪に合わせるかのように白いボサボサの髭。
栄養を摂っていないのか、痩せ細っている
そそれぞれの要素もあってか、より彼の不気味さに拍車をかけている
「…ようやく完成したか」
久々に出した声はこもっていたが、研究に少しの時間の無駄を許さない彼が手を止めて発した言葉がこれだった。どれ程この装置の完成を待ちわびていたかがわかる。
その時、扉が激しい音を立てて崩れていく
扉をこじ開けたのは若い男二人だった。
「なんだお前ら!?」
「警察だ!」
その内の一人のサイトウがそう答えた。
男は慌てて拳銃を取り出す。もう一人の若い男のタチカワは男が発砲するのを警戒している。
しかしサイトウは焦ってタックルを仕掛けようとする。
「サイトウ!やめろ!」
タチカワが声で制したが、それよりも男の発砲が早かった。
サイトウの右肩に見事命中していた。
しかし歯を食い縛りサイトウはそのまま男にタックルをかました
男の手から拳銃は離れたが、サイトウに臆することなく男は小さい体を使って激しく抵抗した。
その揉み合いの最中だった。
先ほど産声を上げたばかりの謎の機械が揉み合いに巻き込まれ、そのスイッチが押されてしまう。
小さな砲台のようなものからビームが放たれ、その光に巻き込まれたのはサイトウだった。
「なんだこれ!?」
サイトウの体からは粒子が消えていき、なんと消滅してしまった。
「サイトウ!?」
目の前の仲間が消滅したという非現実的な事に理解が追い付かないタチカワ。
「畜生!!」
と怒号を上げる男。まるで意味が分からなかった。
「…どういうことだ」
男の髭に混じった襟首を掴むタチカワ。
しかし男は無言を貫く
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開いた瞳が見た光景は真緑だった。
枯れた木々に荒れた土地。次に視覚に続き、痛覚が流れ込んできた。右肩のあの痛みだ。思わず顔をしかめ、安静に倒れていた体がうねりを上げた。しかしその痛覚がサイトウの目を覚ませた。
そして気づいてしまった。
「…なんだこれ」
自分の足の先に図体が大きな異形の怪物がいることを
読んで頂きありがとうございます。
これからのサイトウの冒険にお付き合い下さいませ…