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六話
「にゃー。」
いつもご飯をくれていたおばあちゃんの家に来てみた。
この間来て以来、なんとなく足が遠退いていたけど、ふと思い立って。
「にゃー。」
この間と同じく、おばあちゃんは出てきてくれない。
もう、ここではご飯はもらえないかも・・・。
そんな風にふと思った瞬間、
「確か、こっちの方から聞こえたような・・・いた。」
家の中から、男の人が出てきた。
この前、見かけた人。
「前に母さんが、よく来る野良猫がいて餌をあげてるって言ってたっけ。ご飯ほしいのか?」
人の言葉はよくわからない。
でも、この人に悪意はなさそうかも。
そう感じたので、「にゃー。」とまた鳴いてみた。
「よし、ちょっと待っててな。」
そう言うと、家の中に入り、銀色のボールを手にして戻ってきた。
風に乗って、魚と鰹節の香りがしてくる。
「たんとお食べ。」
目の前にそれを置かれ、少し用心しつつも齧り付いた。
結構お腹も空いていたためか、よりおいしく感じる。
「またあげるから、良かったらまたおいで。」
そんな声が聞こえたような気がした。