表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

きもだめし

作者: ナナシ

これは私が小学生の頃の話です。


六年生の夏休み、学校の体育館にみんなで泊まって校庭でカレーを作り、キャンプファイヤーをするという行事がありました。


そこでは六年生の親達が屋台を開いたり、肝試し会場を作って子供達が回って楽しんでいました。


私のクラスの親達はきもだめしの担当になり衣装を用意する人達やお化け役の人達と役割を分けて頑張ったそうです。


学校の周りをぐるっと一周まわるコースで所々にお化け役の親達が待機していて、子供達を脅かしていきます。


私も友達と体験しました。


そのクオリティは様々で、明らかに誰かのお母さんとわかる様な衣装から、本格的な変装をしている親もいて子供ながらに怖くて楽しいものでした。


面白かったのが、猫娘に扮している人、砂かけババア、の某有名キャラクター。本格的のは着物の衣装に長い髪の女の人、メイクバッチリのゾンビ、13日の金曜日に現れそうなキャラクター。


友達同士で回ることで楽しさも怖さも倍増でした。


私たち子供は楽しむだけで、大変なのは大人達後片付けに追われ夜遅くまでかかったそうです。


夏休み明けに子供達でその話題が飛び交いました。


あの役は誰々のお母さんだった!


あのお化けは怖かった!


みんなで楽しく話をしていると一人の子が言った言葉に更に盛り上がります。


「最後にいた、着物の女の人って凄い怖くなかった?」


ああ!!


みんなが同意します。


私も印象的に残っていたのでよく覚えていました。

その人はきもだめしの最後の方にいて、外灯があまり届かない場所に立っていました。

他のお母さんやお父さん達と違い、脅かすことも大きな声を出すこともなくただ、黙ってたっていたのが印象的でした。


「あれって誰のお母さん?」


クラスメイトがみんなに問いかけました。


「お前んちじゃねえの?」


そう言われた子が否定します。

そこで親がきもだめしのお化け役の担当になった子達が手を上げることになりました。

もちろん私も手を上げます。


人数は全員で10人でした。


端からなんの役をしていたか言っていきます。


「うちは砂かけババア。」


ああ、あの子のうちの親だったのか!クラスから笑いがおきます。


「うちの父親はジェイソン。」


あそこの親には追いかけられた!


「俺んちはゾンビだった!」


━━━━、9人がそれぞれ言う中に長い髪の女性役はいませんでした。

なら最後の子の親かとその子を見ると、なぜが青い顔をしています。


「お前ん家のお母さん、すっげー怖かったな!」


クラスでも中心的な男の子が笑いかけましたが、何も答えません。


みんなが怪訝に思いその子に集中していると…


「うちは…お父さんが参加したんだ。」


ボソッとそう言います。


「お父さんが女の役をしたのか?」


周りが不思議がって質問しました。

だってあの人はどう見ても女の人に見えました、何がと言われると答えられませんが、この人を見た友達全員が女の人だと思ったのは事実です。


「違う…うちのお父さんは…子泣きじじいだった。」


本来なら笑える所ですが、誰も笑いません。


「じ、冗談だろ!お前脅かすの上手いな!」


その言葉にみんながホッとして笑いだします。

そしてその子にも笑って嘘だと言って欲しくて見つめると


「本当だよ。」


その子と仲のいい友達がかわりに答えました。


「俺はこいつの親が子泣きじじいで迫ってくるのを見た。確かにお父さんがやってた。」


聞きたくなかった言葉にみんなが沈黙してしまいました。


そんななか先生が教室に入ってきてみんなが慌てて席に着きます。


ふわふわと落ち着かないなか出席が始まりました。

みんな心無しか返事か小さく感じたのは気の所為ではなかったと思います。


私は家に帰ってお母さんにきもだめしの事を聞きました。

何か変わった事は無かったのかと…


しかし、お母さんは特段変な事は起きずに終わったと言います。


その言葉にホッとしていると


ただ一つ不思議な事があったのを思い出したと言います。


きもだめしが終わって、衣装をクリーニングに出したそうです。

クリーニング代を経費で落とすからみんなから衣装を回収してまとめて出すことになりお母さんが預かる事になりました。

クリーニング屋さんから衣装が返ってきたからみんなのうちに返却しに行ったら…一つだけ誰の衣装かわからないのが紛れていたそうです。


大人達の打ち上げて、その衣装を持っていったが結局誰の物かわからなかったと言います。


「それって…どんな衣装だったの?」


私は恐る恐る聞きます。


「確か…真っ白な着物の衣装で所々に血糊が付いてたわ、クリーニング屋さんもどうしても落ちなかったって謝ってたのよ!」


お母さんはそれがどうしたのと聞き返して来ますが私は何も言えませんでした。


それからその話はクラスの子達が話題に出すことはありませんでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ