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No.4




 No.4




 時間は再び戻り。

 俺が他の三人とは違い。勘違いでこの世界に来たと告げてから差ほども経っていない後の事だ。


 「……なんて事だ……葵君が勘違いでこの世界に来てしまったなんて……」


 鳳先輩の体力が回復したので、俺達は西へ向かえば人の住む町があると言う情報を、この世界の神から事前に教えられていたそうなので、それの言葉に従い。西へと歩き出していた。

 そして歩きながら、先ほど話した勘違いでこの世界に来てしまったことに対して震えた声で。そして困惑した表情で俺を見る鳳先輩。白南風や蛇神後輩も沈痛な面持ちを出していた。


 「まあ、勘違いで送られたとは言え、来てしまったものはしょうがないですし。俺のところに来た蒼竜が、この世界でも生きていけるよう力をくれたから」


 俺はできる限り悲観するなと言うように三人に言う。

 二度と帰れないとは言われたのはショックだが、異世界。冒険。ファンタジー。この言葉を聞いて心踊らない男はいないだろう。まあ、貰った力が何なのか分からんのが若干不安の種と言っちゃあ不安なんだが。

 まあそこはそれ。知っている奴らと居るお陰で、悲観に暮れるほどの不安はない。


 「でもどうして辰巳くんが勘違いされたんだろう?」

 「なんか俺に、この世界の神の力を感じたとか言っていたような」


 あの時は神と言う存在に心が震え、気が動転していたからな。最もその後のなんかダメ臭さのお陰で、落ち着きを取り戻せたけど。


 「マーベラス! この私がこの世界に来るに当たって、ただひとつ懸念していたのは、この私のボケに突っ込める人間が要るかと言う事だけだったのだ!」


 ……おい!


 震えながら後ろで歩いていた鳳先輩が、奇声に近い声で叫び出した。

 その内容は無視したいレベルのものだったが。次の言葉で看過できないほどに、度し難い程に無視できないレベルのモノを言いやがった。


 「地球で過ごす最後の思いでと思い。葵君の私物を少し失敬したり。葵君の匂いが染み込んだ衣服をくんかくんかと堪能したり。その衣服に私の体液をちょろっと混ぜてみたり「よーし! 原因がわかった! アンタのせいだな! 例え違ってもそう言うことにしておく!」

 「……うむ。因みに体液は下ではなく。上の方にしといた。さすがの私も幾ら人が居ないとは言え、いつ来るか分からないところでの放にょu「そろそろ黙ろうか」いだだだだだ!? 葵君!?」


 ガシッと鳳先輩の頭を鷲掴みに(アイアンクロー)して黙らせる。

 ったくこの人はホント、ろくなことをしやがらねぇ……服は、どれだかわからん以上は全部脱ぐわけにもいかないからな。はぁ、しょうがない。我慢して着続けよう。


 「ああ、これが私に対しての葵君の愛か……。ならば如何様にも私は受け入れよう! あたたたたっ! もうちょっと、もうちょっと緩めてくれると助かる! さすがに私も、はじめからこんなにハードプレイはきつううううあああああ!!」


 ちょっと五月蝿いんで、()()絞り上げた。この人が絡むと話が進まないから。


 「で、なんの話だったけか?」

 「しれっと何事もないように話を続けますね、先輩は。話の続きとしては先輩が勘違いした蒼帝様から何か頂いたと言うところでした」

 「……辰巳くんも蛇神さんも鳳先輩の扱いが何気に酷いよ」


 大事な話をして要る時に鳳先輩が出てくると、大事な話も馬鹿な話にしかならないからな。黙らせておくのが吉だ。


 「そこか。手違いだってわかっても、どうにもなら無い状況だったらしくてな。慌てて自分の加護をくれても、その加護の力の説明も無しだったな。だからどんな力をくれたのかまったくわからん」

 「蒼帝様ですよね……竜となると、身体的な力が強くなるとかでしょうか?」

 「身体的な力か……」

 「あいたたたたた!!?? 絞まってる!? さっきよりも、私の頭が絞まってきてるうううう!!」


 潰すつもりで力を込めてみたが、駄目だった。


 「……違うみたいだな」

 「そのようですね」

 「……本当に酷いと思うよ」


 握力は変わってないようだから、身体的な力が増したと言うことではないようだ。

 他にも視覚や聴覚と言った感覚的な部分が増したのかとも思ったがそれも無し。

 それから白南風も酷い酷いと言ってる割には止めようとはしてないからな。鳳先輩を黙らせておこうと思うのは同意見なのだろう。


 「一体何の力をくれたのかな?」

 「あと思い付くのは身体的な変化や、私のような魔法的な力を授かった場合ですね」

 「体に変化在ると思うか?」


 ぱっと見、自分では何か変わっているようには思えなかった。


 「特に見受けられませんよ。皮膚の一部が鱗と化していたり。目が爬虫類のように成ってもいません。衣服の中はどうだかわかりませんが」

 「それはあとで確認してみるわ。そうすると魔法的なことか……。どうやるんだ?」

 「一般的には自分の体の内に在る魔力と言うものを認識して、共に使用する魔法の言葉を紡げばいいそうです。私の場合はこの『癒しの杖』が補助具としても成り立っているので、苦もなく扱えます」


 俺は先程蛇神後輩が治療のために唱えてくれた、呪文とらしき物事を思い出した。


 「……あれを唱えやるくらいなら、俺は一生魔法とか使えなくてもいいや……」

 「……いえ、あれは呪文ではなく。この『癒しの杖』の起動ワードなんですが。それはともかく忘れてください……」


 心底嫌そうな表情を……してるなよな? あまり変わらないから分からんが、とにかく嫌そうには言っている。


 「白南風は使えるのか?」


 俺はあえて返答せずに場の雰囲気を変えるつもりで白南風にも聞く。


 「一応僕も使えるよ。まだ試してないから分からないけど」

 「へぇ~どんなんだ?」

 「どんな武器を持っても達人の如く扱えるって、白帝様が言ってたよ」

 「それ魔法なのか?」


 明らかにそれは魔法じゃなく。パッシブスキルとか、そう言った類いの物だろうが。

 白南風にその違いを言ったが、本人は分からないらしく首を傾げていた。


 「しかしみんなあれなんだな。神様から二つの力を貰ってるんだな」


 俺はひとつなのに。いや実際ひとつかどうかも分からんけど。


 「辰巳くんも町に着けばわかるようになるよ。なんでもこの世界にはギルドって言うのがあって。そこで個人の才能、スキルって言ってゆうの? それを知ることができるんだって」

 「ギルド!? やっぱそう言うのがあるのか。それにスキルか…。レベル制の在る世界なのか?」

 「みたいですね。他の生物を殺すことにより。その生物が得た経験を殺したものが糧とする。と言うような(ことわり)があるそうです」

 「……お前もうちょっとオブラートに包めよ。殺すとか平気で言わないでくれる」


 無表情の蛇神後輩が言うと怖さが増すわ。


 「人は生きていく以上は何かを殺し。それを食べ。糧として要るのですよ。間違ったことではないと思いますが?」


 真理といやぁ真理だがなぁ。もっとこう、在るだろうって言いたい。


 「そうすると。さっきの犬だか狼だかを倒した鳳先輩はレベルが上がってるってことか?」


 その割には何かが変わってるって感じはしないけどな。


 「レベルは早々上がっていかないそうですが、レベルは1~10辺りまでが一般人のレベルだそうです。そこから先が戦いを生業とする人達との明確な差が出てくるそうです。レベル20辺りを過ぎると熊と格闘しても、無傷で勝てるそうですよ」

 「ああ、なるほど。何となく凄さが分かるわ」


 確かヒグマでライフル弾やマグナム弾を数発当たっても、平気で雄叫び上げて襲ってくるとか聞いたこと在るからな。

 そんな熊と戦っても勝てる人達か……。


 「そんな人達が居る世界なのに、この世界の神様は別世界から人を呼ぶんだ。言っちゃなんだが、俺達みたいな争いと無縁の人間連れ込んでも意味がないだろう。幾ら神様からチート的な力をもらっても」

 「その辺の理由もちゃんと在るらしいよーーー」

 「見えてきましたよ。あれが神様が言っていた町だと思われます」


 白南風がその理由を言うとした時に蛇神後輩が前方を指差す。

 そこには巨大な壁に覆われた町の姿が視認できた。


 「おお! あれか! 城壁か? 町って言ったよな?」

 「町だそうですよ。人口は八千人ほど。主な資源はダンジョンから得られる様々なアイテムだそうです」


 そこから先は町に向かいながら、俺達を呼んだ理由やダンジョンの事などを聞いた。

 その下りは大して面白味の有る話もなく終わった。鳳先輩が関わらないと本当にスムーズに話が進む。

 そして町に近付くと、その壁の大きさに俺は目を見張った。


 「でけぇなぁ……。2~30mは在るか?」


 分厚そうで重厚感在る高い壁を見てそう呟くと。


 「それぐらいの高さはあるぞ。もしもダンジョンから『氾濫』が起きた時の為に、高く厚く作ってある。この町を守る防壁としてな」


 そう声を掛けてきた方向を見ると、ガタイの良い色黒な軽装鎧を着たオッサンが、壁の上の方から下を覗き込むようにしていた。

 一瞬誰だ? と言う考えが浮かんだが、この町の兵士かなにかだろうと思った。


 「私はこの町の兵士カルロッソだ。君たちは旅行者か? 連れの者達とはぐれたのか? もしそうなら正門なら右手の方だ。そちらに行けば出会えるだろう」


 俺は手を上げてありがとうと答えそちらに向かおうとすると、再びオッサンから声が掛かってきて。


 「時に君はそちらの少女の頭を何故掴んでいるだ? もし何かしらの悪事を働くようなら……」


 そこから先は言葉にせず威圧的な目を向けてくる。


 「あ、いけね、忘れてた」


 俺は素で鳳先輩の頭を掴んでいたことを忘れていた。

 俺が手を離すと中腰姿勢だった鳳先輩はバタリと倒れ。ピクピクと腰を震わせながら。


 「……ハア、ハア、ハア、新たな快楽(ステージ)に私は来た! 感じた! そして頂きにたった(イッた)! これぞエクスタシー!」

 「だまれ! 忘れてたのは謝るけど、変態発言はそこまでにしろ!」


 罵倒するかのように説教しても、鳳先輩は恍惚の笑みを浮かべるだけであった。

 そしてそんな俺達を上から見ていた人は。


 「まあ……なんだ。若い内から特殊な行為はどうかと思うぞ」

 「ちがう! ちょっと待ってくれ! 誤解しないでくれ! これには訳があって!」

 「程ほどにな……」


 そう言って覗き込んでいたオッサンはその姿を消した。


 「ちがうんだあああああ!! 弁解を! 弁解をさせてくれえええええ!!」


 俺の魂の叫びが辺りに木霊すが、オッサンが再び上から覗き込んでくることはなかった。


 「向こうが入り口のようですから行けましょうか、白南風先輩」

 「……放っておいて良いのかな?」

 「いつもの様に二人仲良く戯れているだけですから大丈夫ですよ。しばらくしたら追い付いてきますよ」


 白南風と蛇神後輩がそんな言葉を言い。俺達を置いて正門に向かったことに気がついたのは、約十分後のことだった。



 ☆★☆★☆



 「お二人ともこっちです」


 正門に向かうと蛇神後輩がこちらを見つけ、手招きして呼び寄せる。


 「お前らひどくないか。置いてかなくても良いだろう」

 「いえ、鳳先輩との蜜月を過ごしている邪魔するのもなんだと思いまして」

 「過ごしてねえよ!? なに見てたんだお前は!?」


 突っ込みを入れる俺に蛇神後輩は後ろを指差す。振り返ってみると。自分の体を抱き締めクネクネと踊り狂う頬を蒸気させた鳳先輩(変態)がいた。


 「私はあんなに葵君から愛を感じたのは初めてだった。意識を失い。それでも攻め立てる葵君に覚醒させられ。意識を失うと言うことを何度繰り返したことか」


 そんなことを大声て言う。まばらとは言え正門から出入りする人達の耳にも聞こえ。


 「ちょっと聞きました。何度もですって」

 「いいわね、若いって。ウチなんか数回でダメよ」

 「数回なら良いじゃない。ウチなんか一瞬で終わりよ」

 「あらいやだそうなの!?」


 あっはははは! とバカ笑いしながら下ネタを話しているおばちゃん達。


 「くそっ! うらやましいな! 仕事で町移動だったらそんな暇ねえよ!」

 「終わったら色町いくぞ! こんちくしょう!」

 「俺たちには関係ないな。そうだろ、サクソン」

 「ああ、俺たちには関係ないな。なにしろ……だろう? アードン」


 冒険者風の男達が羨ましそうに見るなか、ちょっと熱ぽい視線で互いを見つめ合っている男達がいた。


 「すみません。あなた達二人はお尻愛(お知り合い)なご関係なのですか?」


 蛇神後輩が見つめ合っている男達に近寄って、そんなことを聞きに行く。

 ええーい! 目を爛々と輝かせながら何を聞いてるか!? お前は!

 蛇神後輩の首根っこを掴み引っ張り戻す。


 「ああ!? 待ってください先輩。まだ! まだあの人達に聞いてないんです!」

 「だまれ! これ以上変態発言を増やすな! 鳳先輩も誤解を招くような発言は控えてください!」

 「控えているつもりだが?」


 首を傾げて本気でそう聞いてきている……あ、頭いたい……。例え異世界でも、知り合いと要るから不安はないと思ったが、別の意味で不安になってくる。














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