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No.1

お久しぶりの方。こんにちはご無沙汰しております。はじめて私の作品を読んでくれる方。ありがとうございます。楽しんでいただけるよう書いていきたいと思います。

遅い更新となるでしょうが完結まで目指していきます。

それでははじまりはじまり。



 No.1




 〇月Χ日 夕方 某地方都市 某高校校舎内玄関内

 ???まで、残り一時間。


 「今日、雨降るって予報だったっけ?」


 授業が終わり。クラスメート達が帰るなか、俺は一人一身上の腹痛(都合)の為にトイレ(学校)籠っていた(残っていた)

 腹痛(用事)も終わり。いざ家に帰ろうとした矢先に突然の大雨。

 濡れて帰るのは何だか嫌だなぁと。一時の雨だろうと思い。しばらくしたら止むだろうくらいの気持ちで、かれこれ三十分程玄関先で雨が止むのを眺めていた。

 しかし待てど暮らせど雨はやむ気配はなかった。まるで家に帰るなと言うくらいの降り方をしてるんじゃないかと思うくらいに降っていた。


 「そんなわけはないんだけどな」


 置き傘は無し。鞄の中にも折りたたみ傘のひとつもない。友人達はすでに帰宅。まあ居たとしても傘など持っているような友人達ではないが。

 ため息を吐き。仕方ないと鞄を傘代わりにして、諦めて帰ろうかと決めた時に、後ろから声が掛かった。


 「あれ? 辰己くん。まだ学校に残っていたの?」


 自分の名前を呼ばれ振り返ると、そこには学校一のイケメンと証される。クラスメートの白南風虎徹(シラハエ・コテツ)と。この学校の生徒会長の鳳紅緒(オオトリ・ベニオ)先輩。それと確か、書記の蛇神万亀子(カガチ・マキコ)後輩だったか。がいた。

 この面子だと生徒会の仕事か。


 「ご覧の通り(雨)でさあ。帰るに帰れなかったんだけど。もうこれは覚悟を決めて帰るしかないかなと、思っていたところ」


 クラスメートと言っても白南風とはそれほど親しいわけではない。まあ話し掛けられれば会話ぐらいはすると言う間柄だ。何しろイケメンだからな。女子がしょっちゅう回りをうろついているから近寄りがたい。お陰で白南風は男子からやっかみ半分でハブられてる。


 「すごい雨だね。全然気がつかなかったよ」

 「傘は持っていないなかね、葵君?」

 「持っていたらさっさと帰ってますって鳳先輩」

 「私の事は紅緒、と呼んでくれて構わないのだよ葵君」

 「……遠慮します……」


 黒縁眼鏡に左右で縛られた三つ編みおさげ。見た目は文学少女と言った雰囲気を出す鳳先輩だが、かなり変人だと思う。何しろあの姿はギャップ萌を演出するためにやってるとか本人が言っていた。眼鏡も伊達だそうだ。

 鳳先輩と初対面の時に「まだこの日本にも大和撫子が残ってた!」と感動もしたが。だがその後すぐその正体を知って、初めてあった時の俺の気持ちを返せと言ったら。鳳先輩は「くっくっくっ……」と腹抱えて笑っていたよ。ホント女じゃなきゃグーで殴ってるところだ。


 「虎徹君、君は傘は? 万亀子君も」

 「折り畳み傘を持っています」

 「私も持っています」

 「良し。では葵君は私と相合い傘をして帰ろうではないか」

 「まて! どうしてそう言う結論になった!?」


 二人に傘の有無の確認をしたら唐突にそんな話をしてくる鳳先輩。

 ホント突然訳の分からんことを言い出すから困る。

 学年が違う上に帰宅部のこの俺が、この鳳先輩と知り合いなのは俺達の名前が関係している。

 今までのここに居る四人の名前から凡そわかると思うが、その名前が四神の動物の名前に連なっていると言うことだ。分からない人が要れば青龍。白虎。朱雀。玄武と言う名前を聞いたことがあるだろうか。分からなければまあググッてくれ。『四神』と入れればすぐ出てくる。


 「葵君を私のハーレムに加えるための努力と思ってくれ」

 「なに言ってんですか!? 生徒会に入れって言ってましたよね!?」


 鳳先輩は四神の名前を持つ生徒を生徒会に入れると言う、馬鹿な野望を持っていた。

 もちろん俺は丁重にお断りした。大体俺の辰巳の名字は十二支の辰の字だ。違うだろうと断りを入れ。竜の字を持っていた生徒を紹介もしたんだが。


 「なんかあれは気にくわない。やはり君が良い」


 と、言い。それからもちょくちょく鳳先輩は俺を勧誘しに来る。

 そして俺の突っ込みに鳳先輩がやれやれと大袈裟に肩を竦め首を振ると。


 「私はこの学校()を好き勝手に出来る生徒会長(地主)だよ。なら私のために働いてくれる生徒会員(者達)は、私のハーレムじゃないのかね?」

 「前々から思ってたけどアンタアホじゃねえの!? 違うだろう! 他の生徒の為に面倒臭い仕事を請け負う奴らの事だろう!」

 「それも違うと思います」


 座敷童子みたいな姿の蛇神後輩が無表情に突っ込んできた。

 相変わらず無表情で俺に突っ込みを入れてくる子だ。行動が読めん。無表情だから更に余計だな。

 とにかくこの生徒会と出会うと疲れる……。いや正確に言えば鳳先輩一人が大変なだけなんだが。よく白南風はこんな生徒会に入る気になったな。俺は逃げたのに。


 「鳳先輩は辰巳くんに出会うと生き生きしてるよ。生徒会室ではもっと大人しいから。あと蛇神さんもよく喋るよ」


 白南風がそんな事を言ってくるがとても信じられねえ。この人は誰彼構わず好き勝手にやってそうな気がする。

 後輩の方は後輩の方で、これでよく喋る方なのか? 殆ど一言で終わる台詞だぞ。普段どれだけ無口なんだよ!?


 「私だって人は見る。葵君の突っ込みはいつも私の子《ピー》に直撃させるほどの勢いだよ。あ、なんなら葵君のギンギンの肉《ピー》で、私の《ピー》宮を実際に貫いてみるかね? 因みに私は処女だよ?」

 「セクハラすんな! 下ネタに走るな! 取り合えずあんたは自重をしろ!!」

 「あっはっはっはっ。だが断る!」


 人の股間に平気で触れようとしてくる。

 ……もうホントどうにかしてくれこの人を……。


 「じゃあ。私と一緒に相合い傘をして、そのままホテル街に向かおうか」

 「じゃあの意味がわかんねえよ! 白南風が傘持ってるんなら、途中まで入れてもらえればそれで良いですよ!」

 「男同士で入れ合うんですか?」

 「変な突っ込み入れるな! 白南風も顔をなぜ赤くする!?」


 突っ込みが追い付かねえ! 朱に交われば赤くなると聞くが、お前まで可笑しな奴にならないでくれ……。頼む。俺をこれ以上疲れさせるな。


 「……ごめん。僕は今まで男の子と遊んだりしたことがなかったから。僕と一緒に傘を差してくれる人なんて言うのもいなかった。だからいまの辰巳くんの言葉が嬉しくて」


 ……あーそうか。お前子供の頃からイケメンそうだもんな。そっか……男友達いないか。


 「まーなんだ。友達として入れてくれると助かる」

 「友達ッ……!? 良いのかい!? 僕と友達で!」

 「いや別に友達になるくらい、良いんじゃないの?」

 「ありがとう! 僕生まれてはじめて男の友達が出来たよ!」


 ぱあっと晴れやかな表情をする白南風。

 まあ、友達くらい別にいいけどさあ。こんな変人押し付けるような形にしちまったからな。

 しかし、これが女を一発で惚れさせる顔ってやつかな。男の俺には関係がないが。


 「友情……芽生え始める愛……苦悩する心……その果てのーーーいたれふ(痛いです)らりするれふか(何するんですか)

 「黙れ。腐の香りを漂わせる発言をするんじゃねえ」


 無表情にこっちを見つめてると思ったら、ろくな想像してねえよコイツ。喋らないから無害かと思ったが、コイツも鳳先輩と同じようにダメな分類の奴だ。


 「人の想像を侵害するとは何事ですか」

 「人権侵害をするようなことを想像するようなことをするんじゃねえ!」

 「どんなことを想像したと言うんですか? 具体的に! どの様な行為をしたのかを! はっきりと、その口で!」


 ……ダメだコイツ。こっち方面になると途端に喋り出しやがった。無口系腐女子ってなんだよ!? 要らねえよそんな需要!


 「いいなぁ~。葵君に構ってもらって万亀子君はいいなぁ~」


 指咥えて物欲しそうな顔して言ってくんじゃねえよ! やらねえぞ! そっちに(エサ)振らねえからな(与えねえからな)

 もう雨に濡れようが知ったことか。元からその覚悟で帰るつもりだったんだ。コイツらほっといてもう帰ろ。

 そう思って振り返り玄関の外を見る。雨音がしていなかったので雨は上がったのか? と思ったが。そうではなかった。

 玄関より先には本来あり得ない現象が起きていた。


 「なん…だよ、これ…!?」


 天から降り落ちる筈の雨粒が、地面に落ちず空中に制止していた。まるで時間が止まったかのように。


 「いったいどうなってーーー白南風!? 鳳先輩!? 後輩!?」


 三人にもどうなっているのかと聞こうとしたら、その三人が影も形もなく姿が消えていた。

 慌てる辰巳。

 まるで辰巳だけがこの世界に取り残されたような錯覚さえ起こす。


 ーーー人の子よーーー


 その時、辰巳の頭に荘厳な声を持つ女性の声が響く。


 「だれだ!?」


 辺りを見回す。すると校庭の真ん中辺りに人影があった。

 濃い海のようなマリンブルー色をした長い髪。

 漢服の様な着物を着て豪華な装飾を着飾り。東洋系の顔立ちなれど、何処か違うようにも思える美しい顔。

 二十代後半とおぼしき美女。

 しかしこの美女、人と違う部分があった。

 頭の左右から鹿のような角が生え。肌には鱗のような所々にあり。そしてその瞳。金色の(まなこ)には爬虫類を思わせる縦長の瞳孔があった。


 「……あ……ああ……」


 我知らずに辰巳は、その美女から発せられるモノに気圧される。足を後退させ。平伏しなければと体が心が訴える。

 ガタガタと震え上がる辰巳を見て。美女は己の過ちに気がついたかのように辰巳に詫びる。


 ーーー赦せ、人の子よ。下界には久方ぶりに降りてきた故、神気を抑えなかった。これでどうだーーー


 強制的に思わせられていたモノはなくなると、辰巳は疲労を感じその場にて膝を着く。


 「あなた、さまは、誰ですか……?」


 頭で心で己の魂で目の前にいる存在が何なのかを感じ取っている。しかし現実にあり得るのかと、そんな存在が要るのかと思い。だからこそ聞いた。何者かと。

 美女は辰巳の言葉に気を悪くすることなく微笑む。まるで幼子の問いかけに優しく答える母のように。


 ーーー我が名は蒼竜。東方を護り春を司るもの。人の子よ。汝、異界の神の言葉を聞き、これを受諾せし事、大義である。旅立ちにはささやかではあるが、二度とこの地を踏めぬ汝の為に贈り物を渡そうと、出発前に我等四方の柱が下界に降り立ったーーー


 「神様……!? えっ!? ちょっと待って! 異界!? 二度と地を踏めぬ!? 異世界に行くってことか!? 誰が!? 俺がか!?」


 目の前の美女、蒼竜の言葉が頭に入ってくると、相手が神だと言うことも忘れ、敬意もへったくれもなく聞く辰巳。

 辰巳の様子に訝しむ蒼竜。


 ーーーどう言うことだ人の子よ? 汝の夢に降り立った異界の神との話により、異界の神の願いを受諾したと聞き及んでいるがーーー


 「知りません! そもそも神様何て今日はじめて会いました! 誰かと間違えてませんか!?」


 ーーーそんな筈は、汝からは間違いなく異界の神の神気を感じたが……。彼の神より承けた名は確か、木崎竜也とーーー


 その名前は俺の代わりに鳳先輩に紹介した奴の名前じゃなかろうか。それはともかく。


 「……俺の名前は辰巳葵です」


 ーーー…………真か?ーーー


 「……はい」


 蒼竜の言葉に大きく頷く辰巳。

 目を見開き沈黙する蒼竜。

 そしてその美しい顔からダラダラと冷や汗が流れる蒼竜。


 「どうするだがや!? 人違いで済まされる分けないだがや!」

 「はあ!?」


 突然頭に響いていた蒼竜の声が肉声で聞こえてきたが、何故かその言葉が先ほどの威厳在る口調ではなく。方言で聞こえてくる。

 蒼竜は頭を抱え。「えらいことしたがや!」と何だか泣きが入っていた。


 「ええっと、蒼竜、さま? 人違いと言うことなので俺は、私はこのまま帰ってよろしいんですか?」


 頭抱え泣きべそかいている蒼竜に恐る恐ると言った感じに聞く辰巳。

 蒼竜は泣きながらもぽつりと呟く。


 「ーーーだがや」

 「はい? 何ですか?」

 「だから無理だがや! もうすでに転移の神術は始まってるだがや! もうお前をこの地に縛り付けていた縁も一切合切無くなってるだがや!」

 「それはどう言う……」

 「お前の親兄弟友人知人、そう言った人間との関係を切ったんだがや! 例え転移の神術を止めても、お前この世界では最早肉体を持った幽霊と変わらないだがや。目の前にいても誰からも無視されるだかや」

 「直すことは」

 「縁切る前だったら出来たがや。ウチとこうして喋ってられるのも一時的なものだがや。もう暫くしたらウチもお前を認識出来なくなるだかや。だからその前に物渡そうとしたんだかや」

 「えええええ!!?? ど、どうするですか!? 人違いですよ!?」


 やっと事の大きさに気がつき騒ぎ出す辰巳。

 慌て出す辰巳に蒼竜は覚悟を決めた表情をして。


 「お前、異世界にこのまま行くだかや」

 「嫌ですよ! 俺はこの世界に平穏無事で暮らしたいですよ!」

 「それはもう無理と言ったがや。本当ならこの世界から出て行こうとする奴に形だけでもと思って、宝物殿の中から無くなってもいい物を持ってきて。それを渡して、「野垂れ死ねクソヤロー(はいさよなら)」しようと思ったがや。だけどこれはウチの不始末だがや。だからーーー」


 なんか聞き捨てならない言葉が混ざっていたような気がする。

 しかしそんな辰巳の思いとは関係なく蒼竜は苦渋の顔をして。


 「だから、本当に嫌だがや。それでもお前にウチの加護を渡すだがや。その加護の力で他の世界で生き抜くだがや!」


 猛然とダッシュしてきた蒼竜。唇を噛み締め、そこから赤い血がタラリと流れる。

 辰巳に近寄りその頭をガシッと掴み。


 「ちょ!? えっ!? なに!?」

 「はじめて人に渡す、(ウチ)の加護だがや! 大人しく貰っとくだがや!!」


 辰巳の唇に自らの唇を押し当てる。

 そして無理矢理唇を押し開け、舌を絡ませ。唾液と血の味がした接吻(キス)を交わす。


 (な、なんなんだああああ!?)


 口の中を蹂躙され、脳を刺激する強烈な快楽と混乱。

 そして自分の喉を通って流れ込んでくるなにか。

 体の中を熱い何かが駆け巡っていく。


 「ーーーぷはっ……」


 唇を離し。糸を引く唾液がプツンと切れると、顔を真っ赤にした蒼竜が捲し立てるように言ってくる。


 「これでお前にウチの加護を渡したがや! あとはこれを持ってとっとと別の世界に行くと良いだがや! それで二度とこの世界に帰ってくるなだがや! そして向こうの世界に行ってウチと接吻したなんて広めたら、例えウチがお前の事を忘れていたとしても必ず殺しに行くだがや! いいかだがやゃ!!」


 投げつけるように小袋を辰巳に渡して、目を怒らせ神気を辰巳に当て付け脅す蒼竜。

 神気を至近距離から受けた辰巳は、気絶しながらも頷くことができた。


 「時間だがや」


 蒼竜がそう呟くと辰巳の足元に輝く魔方陣が現れる。

 徐々にその魔方陣の光が増していき辺りを白い光で満たしていく。

 満ちていく光と共に辰巳の意識は失っていく。

 失っていく最後に蒼竜が。


 「お前達は神々()不孝者だがや。ここより別の世界を選ぶなんて……。最もお前は間違えで行ってしまうだがや。それは本当に悪いと思ってるーーー


 最後まで聞き取ることは出来なかった。

 だが意識を失う瞬間、辰巳は自分だけでなく。別の人間も異世界に行くと言うことに、驚きを隠せないでいた。


 (…エセ方言に突っ込み忘れた)


 だがそれ以上に蒼竜の口調の方が重要だったらしい。















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