afterlife の選択
「あなたは死にました。」
そう告げられた途端、色々と生きている間に出来なかったことの数々が脳内で現れ、消えていった。自分の本を書きたかったこととか、もっと世界を見て回りたかったこととか...もちろん家族と一緒にいる時間ももっと欲しかった。それらがもうできないのはすごく残念である。
今、悲しいのは悲しいが、私は感情を抑えて今から起こることを聞いた。すると、白いキートン(古代ギリシャの服)を着たおっさんが、
「それが問題なんじゃよ。おぬしは色んな宗教に興味を持ちすぎたんじゃよ。じゃから...どの 『あの世』に送ればいいのかわからないのじゃ...。希望があれば聞きたいのじゃが...。」と言ってきた。
私は色んな宗教に興味を持ちすぎたと言われたことをいいほうに受け取ることにした。まず、除外すべき宗教は古代エジプトのもの。ちょっとリスクが高い。魂が天秤に乗っている真実の羽と同じ重さなら次の人生に歩めるが、羽より重ければアメミット(*1)に食べられてしまう。それはいやだ。古代ギリシャはケルベロスはちょっと怖いし、三人の裁判官(*2)は...少し偏った判断をよく下す。神道は...人生が善でも悪でもイザナミ様(*3)のところにいく。北欧神話は...私の死に方からすると多分ヘルへイムのヘル(*4)のところに行くだろう。それはちょっと避けたい。ラグナロクには巻き込まれたくない。
このように一つずつ消していくと、段々と『もう一度生きたい』という思いが強くなっていく。
「あの世に行く以外の選択肢はありますか?仏教の転生でもいいんですけど...ちょっと選択肢を見てもいいですか?」
「ああ、もちろん良いとも。次が転生についての選択肢じゃ。
1.ギリシャ神話の三回転生
2.仏教の輪廻転生
3.RPG異世界(人気ナンバー1じゃぞ)
4.乙女ゲーム異世界
5.地球のパラレルワールドみたいな所(神話とか全部混ざっておるぞ)
じゃ」
RPGとかは定番すぎて行きたくない...。一番魅力的なのは神話.雑学大好き人間が一番楽しめそうな5番だと思う。
「5番にしたいです。」迷わず言った。
「良い判断じゃ。おぬしに合うな。じゃあこれから何個か願いをかなえてあげよう。何を望む?」
このパラレルワールドで性別や種族が違うことで殺さね兼ねないと思うから姿を変えることができたら嬉しい。後は色んな種類の服や定番のアイテムボックスみたいなもの、言語理解能力...そして一番重要になってくるのはペンと何も書かれていない本である。暇があればいつかは本を書きたいと思っていたのに生きていた間書けなかったこともあるのだが、一番の理由は、
「家族が心配です。私が大丈夫であることを伝えたいんです。」
「すまぬ。それは出来ん。規則でな。ただ、おぬしが書いた本なら出版できる。現実世界でな。その本を家族のもとに行くようにすることはできる。済まないがこれでよいか?」
「ええ、それでいいです。あの...最後に質問があるんですが。」
「なんじゃ?」
「あのふざけたナンバープレートのトラックなんなんですか?ちょっとむかつきました」
眼帯をしたおっちゃんがため息をついた。
「あれは適当に人をはね飛ばして異世界に飛ばしてる変なトラックで、未だに正体をつかめていないのだ。あのふざけたトラックでどれだけの人が異世界に飛ばされてしまったやら......。すまない、思いに老け込んでしまった。質問がそれだけなら今からお前を送るぞ?」
ちょっとラジオ体操の一番をした。
「ふぅ......はい、準備ができました。出来たらイギリスとかに送ってもらえますか?」
「ああ、できるぞ。」
そう言われたとたん私の意識が途切れた。
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*1 アメミットは頭がワニ、前足がヒョウで後足がカバの生き物。魂が好物。
*2 3人の裁判官は全員ゼウスの子でなければならない。その人の性格も関係なく選ばれる。
*3 神道のイザナギの奥さん。死んでしまいあの世に住んでいる神様。
*4 ヘルはヘラとも呼ばれ、ロキの娘でフェンリルとヨルムンガンドとの三兄弟。ヘルヘイムを司る神様
一応説明を書きましたがもし間違っていれば是非言ってください